第200話 教会総本部
Side 教会総本部
ここ数年、遊び人が多く選定されるようになった。
いかん。報告の数は毎年増える一方だが、恐らく報告が上がっていない遊び人も多数いるだろう。
教会にとって遊び人という存在は、常に頭の痛い問題だった。それが近年、顕著になってきている。
「教皇様、問題が発生いたしました。」
問題だと?
「大司祭殿、いや最近枢機卿になったのだったな、枢機卿殿、いかがなされた?」
「かの国で遊び人共が反乱を起こしました!」
「それはどういう事ですかな?」
「国王と宰相が隠しているとはいえ遊び人の国でございます。」
「知っておる。何かと教会に反発しておったが、反乱とは?」
「国から教会の全てを締め出した様子でして……」
……どういう事だ?
教会は全ての選定を管理し、冒険者ギルドとの繋がりも深い。それを締め出すなどできるものなのか?有り得ぬ!
「締め出した様子とは?まさか教会を追放するような国があるというのですか?何かの間違いでは?」
「そ、それが連絡が取れないのでございます!」
「連絡が?教会の建物全てに司教以上の幹部が常駐しているはずですが、魔道具の不調でしょうか?」
「い、いえその……」
……何だ?何故はっきり言わぬ?
枢機卿の顔色が悪い。普段は弁の立つ男が、こうも口ごもるとは。
「もう起こってしまった事なのでしたら早く報告をして頂きたいものですな。対応が遅れるとそれだけ致命的になります。」
くそっ!何故だ!何故儂が教皇になった途端、こうも問題が起こるのだ!
前の爺は何をしていたのだ!あの役立たずのせいで!
内心では怒りが渦を巻いているが、表情には出さない。教皇たるもの、常に泰然としていなければならない。
「その詳しい経緯は分かりません。しかしどうやら数年前に1人の遊び人が選定され、それが起因となっている様子でございます。」
「何ですかそれは?」
「3年程前に、3つのジョブを引いた者がいたようでして……」
「3つですか?それは知りませんが、3年前はまだ私も教皇ではなかったので報告がなかったのでしょうか?」
「い、いえ、その時の担当だった司祭ですが、どうやら大司祭に空きができるタイミングだったようで、恐らく候補だったのでしょう。それでそういった報告をもみ消したのでは、と。」
くっ!つくづく前の教皇が恨めしい!
この様な大事な報告を吸い上げられぬ組織にしてしまったのか!
出世のために情報をもみ消す……そのような輩が跋扈する環境を作ったのは誰だ。
「しかし3つの選定を受けた者がいたのですか?私が教会で司祭になって以降、そのような事案は聞いた事がないですね。」
「いえ、過去に数例は存在して御座います。但しその全ては違う職業を選定して御座います。ただ、今回は全て遊び人だったのでございます。」
「まさか!セカンドジョブ、サードジョブ共にファーストジョブと同じジョブを引き当てたというのですか?」
「は、はい!そしてその者はダンジョンで行方不明になったのですが……当時その者の面倒を見ていたのが、よりにもよってトゥーニスでして……」
トゥーニス……遊び人において最も切れる存在の1人で、かの国の国王の庶子だな。
あの男が絡んでいるとすれば、これは厄介だ。頭の回る男だと報告を受けている。
「では今回の反乱はトゥーニス殿が中心ですか?」
「そう聞いております。」
これはまずい!何とかせねば!
「交渉はできないのですか?」
「ギルドマスターは我が子飼でございます、何とかさせましょう。」
ここ数百年の教会の発展が、こんな事で……
ゆるさん!
……
さて、どうして教会が遊び人を特別視しているのか。
それは遊び人のジョブの特性に起因している。
遊び人は自分の力で、しかも任意でジョブをチェンジできる。
それも今現在ジョブチェンジできるジョブ全てに。
そしてジョブチェンジできないジョブも成長すればジョブチェンジできるようになる。
これはジョブチェンジ、つまり転職は教会が一括管理して行っているのだが、それが遊び人に関してはできない。
しかしまだこれだけであればそこまで問題視はしない。
全ての人間は10歳前後になると選定を受け、必ず何かの職業を得る。そしてどうしても転職したければ教会で転職をする事になる。
これは司祭以上の役職を持つ者のみができる。
教会が全ての国で勢力を伸ばしたのもこれが起因となっている。
だが、遊び人はジョブチェンジで司祭にもなれる。
もしそれに気が付き、遊び人が司祭にジョブチェンジをすればどうなるか。
教会でしか受けられなかった選定を、遊び人が行うことが出来るのだ。
これは教会にとって最も脅威。
そして今まで教会が行っていたこの一連の特権が、今まさに脅かされている……。
教皇は静かに目を閉じ、それでも胸の内の怒りを抑えることができなかった。




