登校
住宅街を並んで進んでいく二つの影。
服装から判断するに、学生なのだろう。
その片方はかなり高身長のようだ。顔も小さい。
モデルなのだろうか……
ここに住んではいない、通りすがる人は必ず彼を二度見はする。
多い人は五度見もする。
近所に住む人はその人物の正体を知っている。
その人物は人気子役の彼だ。
その隣にいる人物はというと……普通だな……
「ねぇ……あっちゃん……今、酷いことを考えたりしなかった?」
え!? なんでわかった……
こいつエスパーなのか? 神様なのか?
「か、考えてねぇよ」
「はぁ、やっぱり! 考えたのね……」
「なんでそんなにわかるんだよ? 怖いぞ?」
「だって、あっちゃんが変なことを考えている時はいつも気持ち悪く笑ってるもん」
「…………」
「さっきも気持ち悪かったよ……」
「おい! いつも一緒にいる! みたいな言い方すんなよ! それに辛辣だな!」
「え!? あっちゃん急にどうしちゃったの?」
「だぁかぁらぁ! いつも一緒にいる幼馴染! みたいなキャラを押し付けてくるな!」
「え!? 本当にどうしちゃったの? 押し付けなくても私たち幼馴染だよ! もうずっと一緒にいたじゃない!」
「…………」
そう、俺の隣にいる人物は女。それも普通の女の子。顔は整っていて、体型も一般的な女性。性格も普通。そんな人物。あるのはただ幼馴染というキャラだけ……あ! 名前はえーっと、鈴木美幸。
「ねぇ……あっちゃん! また変なこと考えてたでしょ?」
「っ!!! やばい……学校に遅れちゃう!」
「あっちゃん! あからさまに焦らなくてもいいのに……」
「うるさ〜い!」
俺は場が悪くなって、遅刻という理由をつけて走り出した。
俺の足はかなり早い!
陸上の大会に出たら確実に新記録を出して優勝してしまう。それぐらいには早い自信がある。
ぐんぐんとスピードを上げて、風を切り、学校へと向かっていく。
俺は風を全身に浴びながら、気持ちよく前へと進んでいく。
だが、学校への道のりには俺のそんな勢いを止めてしまうものがある。
それは……
ピッポー。 ピッポー。 ピッポー。
『SHINGOKI』である。
どれだけブレイクして前へと止まることなく突き進んでいくことができたとしても、こいつの前では皆平等に立ち止まらなければいけない……
俺も、その1人だ……
俺、佐藤篤樹は6歳の時に『マリモの決まり』の子役にオーディションで合格し、そのドラマが大ヒットとなった。
そのおかげで俺も大ブレイクを果たした。
その後も子役として演じることも多かった。
バラエティ番組にも出ることがあった。
そして、子供用のファション誌にも載るようになった。
子役としての年月を長い間過ごしてきた。
だが、男の子の子役はここで一つの転換点を迎える……
それは成長だ。
どんなけ可愛い子役であっても、成長には抗えない。
男の子の場合はそれが激しく影響してしまう。
声が低く変わり、可愛い容姿から、ゴツゴツとした男として成長してしまうのだ。
可愛い姿からの変容。
それによって、ファンが少しずつ消えてしまうことがある……
そして、人気子役でもひっそりと社会の中に影を落としていくのだ。
俺もそんな時期が…………
そんなのなーーーい! ないったらなーい!
俺にはそんな時期はない!
俺は子役として活躍した後も、なんやかんやでドラマ、映画、ファッション誌に出続けた。
俺の人気に影が刺すことなど一度もなかった。
それもそう。俺にはなんたって、師匠がいるのだから。
俺は師匠を使って、可愛さも内包しつつ、カッコよさをも追求していった。
その結果、俺は学校に行く時間もなくなるくらいに大ブレイク中。
そんな勢いある俺を止める存在『信号機』
ピッポー。ピッポー。ピッポー。
俺が信号機を待っていると、後ろから
タッ。タッ。タッ。タッ。タッ。
「ハァ…ハァ…ハァ…もぉっ! あっちゃん! 急に走ったりしないでよ! ハァ…ハァ…ハァ」
「おぉぉ! みゆき! 意外と早かったみたいだな!」
「おぉぉ! じゃないでしょ」
俺の後ろから勢いよく現れたのは幼馴染の美幸。
同じ小学校に通い、同じ中学校に通い、同じ高校に通い、さらにはご近所さん。
典型的な幼馴染のステータスを兼ね備えた人物こそがこの鈴木美幸なのである。
日本人の名字ランキング上位者がここで揃ったのである。
「いやぁぁ! 久しぶりの登校で気分が上がったんだよ!」
「だからって急に走らなくてもいいじゃないのかな〜」
「いや! そこは許してくれよ! 俺たちなんたって幼馴染だろ?」
「うわぁ……それあっちゃんが言っちゃうの?」
「だってお前もさっき言ってただろ?」
「それはそうだけど……調子に乗りすぎじゃない?」
「そうか?」
「どれだけあっちゃんが人気で大ブレイクしてても、そんな調子だといつかはきっとあっちゃんにはバチが当たるよ」
「っ!! な、なんだ急に! 説教かよ!」
「まぁ、いいけど……とりあえず信号青だから渡ろっか!」
「あ! 本当だ!」
「もうかなり早いスピードで走ったから、学校には間に合いそうだね」
「あぁそうだな!」
「それにしてもあっちゃんが学校に来るのって2週間ぶりくらいかな?」
「うん。それぐらいになるな!」
「こうやって一緒に登校できるのは、わたし結構嬉しいんだよ。たまにしか一緒に行けないんだけどね」
「…………き、急にどうしたんだ?」
「まぁ、いいよ……わかんなくたって……」
いやいや、分かるよ? 俺がわからないはずが無いじゃないか……俺は、ラノベ主人公のような鈍感系じゃない……
俺は新たな敏感系主人公なんだから……
君の気持ちを数値として見ることができちゃうんだからね……
君がどれだけ俺のことを愛しているのかが数値となって、ニヒヒヒ。
「ねぇ……あっちゃん……また変なこと考えてたでしょ? 本当に気持ち悪いからやめたほうがいいよ」
「ぬ!?」
「何が、ぬ!? なの? 本当に気持ち悪いからやめてよね」
「わかったよ。気持ち悪くてごめん。大ブレイクしている俺が気持ち悪くてごめん」
「あっちゃんって、めんどくさいよね……」
なんだよ!? こいつ……
俺のことどんなふうに思ってんだよ……
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【名前】鈴木美幸
【年齢】17
【誕生日】6月6日
【3S】B: 78 W: 58 H:80
【親愛度】90
【好きなもの】特になし
【嫌いなもの】特になし
【H】C
【テクニック】C
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【称号】【幼馴染キャラ】【アツキの嫁】
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【ひとこと】
え〜……ここに書くことなんてなにもないよ。
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もうとっくの前に攻略済み。エピソードも凡庸。
特質すべきことが何もない……本当に何も……
俺が引っ越して家族絡みで俺の庭でBBQをした時、俺が食べていたものを美幸が知らずのうちに食べていた……
その頃には何も起こらなかったのだが……
中学校に上がり、美幸が不良に絡まれていたところを助けた時に、突如として【称号:アツキの嫁】が現れた。
その当時は俺も頭を抱え、このことについて深く考えた。
導き出されたのは……
俺の【魅了】の力はウイルス的なものにもなる……ということだ。




