表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/25

16.〈鑑定の実〉

「んー、まずは何から試そうか……」


 順番に行くならスキルの【魔法陣】からか。

 使い方はなんとなくわかる。

 だが、逆に言えばなんとなくしかわからない。


 手探りでやってもいいが……失敗するとどうなるかとかが分からないのは怖いな。

 確か、Aさん、Bさんと冒険者ギルドに向かう途中に魔法屋?か何かがあったと思うんだが、どうだっただろうか。

 ……うん、Aさんたちがいろいろと説明してくれた中にあった気がする。

 ちょっと行って来るか?

 あ~でも金がないか。

 ………………ダメもとで行ってみよう。ダメだったらAさんかBさんでも探して聞けばいいし。


 と、そこでふと腰に下げている〈処刑人の剣〉が目に入った。

 

 これ、売れるんじゃないか?

 俺に剣の良し悪しなんて分からないが、なんといっても固有能力から派生した能力で創った剣だ。

 どうやら時間差で消滅するようなものでもないみたいだし、試してみる価値はあるんじゃないか?


 そうと決まれば、


「”拷問器具作成”」


 ”拷問器具作成”は俺が『拷問に使える』と思ったものを創り出す能力だ。

 だったら、限りなく普通に近い剣も創れるのではなかろうか。


 よし! 剣は拷問器具、剣は拷問器具、剣は拷問器具、剣は拷問器具――――


 俺はブツブツと呟いて、必死にそう思い込んだ。

 次第に、目の前に光が収束していき、一本の剣を創りだす。


 見たところ何の変哲もない普通の鉄剣だ。

 でも一応名前の確認ぐらいはしておくか。


 そう思い、それをイベントリに収納し、名前を確認した。


―――――――――――――――――――――――――――――

〈鉄剣〉

―――――――――――――――――――――――――――――


 よし! 成功! 後は試し切りを……


「はぁあ!」


 試しにそこら辺に生えていた木の枝を切ってみる。

 【剣術Ⅲ】のおかげか、思いのほか簡単に切ることができた。

 切れ味も問題なし。

 念のためあと二~三本創っておくか。


 俺は少しワクワクとした気持ちになりながら、凛と蘭に向かって言った。


「凛! 蘭! ちょっと街まで行ってくる!」

「えっ!? 私も行く!」

「私も! 連れて行って!」

「わかった。それじゃあ一緒に行くか」

「ありがと、お兄ちゃん!」

「ありがと、兄さん!」


 そう言いながら、俺のところに走ってくる凛と蘭。

 本当は一人で行くつもりだったが、俺の近くにいたほうが安全か。

 と言うか、俺としても二人が近くにいたほうが力を発揮できるしな。

 気持ち的な意味でも、固有能力的な意味でも。


「それじゃあしゅっぱーつ!」

「れっつごー!」

「ちょっと待て」

「「ぐえっ」」


 俺は街まで歩いていこうとしている凛と蘭の口根っこを掴んで止めた。


「お前らまさか歩いていくつもりなのか?」

「そうだけど?」

「そうじゃないの?」

「ああ。街の近くでも俺を拘束しておいたからな。一気に跳ぶぞ」

「そっか、あの転移魔法みたいなやつ!」

「確かに、あれを使ったら一瞬だね!」

「分かったならさっさと掴まれ。行くぞ?」

「「うん!」」


 俺は凛と蘭の手を握って能力を発動させた。


「”拘束範囲指定:1m”」


  ◆◆◆


 俺たちは門を潜って街の中へと入る。

 何故か道行く人の視線を感じるのだが。

 門番の人(今回は別の人だった)も何故か微妙な視線を向けてきたんだよな。どうしてだろう。


 そんなことを考えていると、凛と蘭が声をかけてきた。


「それで、どこに行くつもりなの?」

「あの冒険者さんのところ?」


 冒険者さん? …………ああ、Aさん、Bさんのことか。


「いや、今回行くのは武器屋だ」

「武器屋? 武器買うの?」

「でもお金ないよ?」

「わかってる、だから行くんだよ」

「「?」」


 揃って首を傾げる凛と蘭。

 俺は説明するために、イベントリから〈鉄剣〉を取り出した。


「これはさっき創ったんだが、もしかしたら売れるかもと思ってな」

「あっ、その手があったね」

「前は売れるものがなかったから、その発想自体なかったよ」

「だよな。俺ももっと早く気がついていれば!って思ったよ。まあ、まだ売れるって確定したわけじゃないんだけどな」

「それでも可能性はゼロじゃないし」

「やってみる価値はあると思う」

「そうだな。やるだけやってみようか。この際安くてもいいから、少しでも金が欲しいな。やりたい事もあるし」

「「やりたいこと?」」

「ああ、スキルで【魔法陣】っていうのを取ってな、使い方とかリスクとかいろいろと知りたいから、魔法屋にでも行こうと思って」

「魔法か~、私も使ってみたいな~」

「私も~。異世界といえばやっぱり魔法だよね~」

「興味があるなら獲得すれば? 一つの属性につき5SPで取れるぞ」

「そうなんだ」

「SPまだ余ってるし、いいかも」


 そんなことを話していると、ついに武器屋に到着した。

 文字は読めないが、Aさんたちがここは武器屋だって言ってたと思う。

 看板もそれっぽいし、多分間違いはないだろう。


 そう思いながら、俺たちは店の中へと足を踏み入れた。


「おう、らっしゃい!」


 奥のカウンターに強面の男性が座っていた。

 筋骨隆々で色黒、厳つい声音、熊と見紛うような巨体にはかなりの威圧感がある。

 正直怖くないかと言えば嘘になるが、店内を見る限りここが武器屋であってるんだよな。

 金のため、果ては凛と蘭のため。行くしかあるまい。


 俺は飾られている剣や斧などの武器を見渡しながら、その男性に近づいた。

 確か、商売のコツは相手になめられない事と何かに書いてあった気がする。

 AさんBさんという前例もあるし、できるだけ強気で行こう。


「坊主、何か武器を探してんのか?」

「いや、悪いが買い物じゃないんだ」

「つーことは買取か」

「ああ、そうなる。頼めるか?」

「もちろんだ! で、俺は何を買い取ればいいんだ?」

「これだ」


 そう言いながら、俺は予め取り出しておいた〈鉄剣〉を武器屋の親父に見せた。


「ほう、〈鉄剣〉か」


 親父はそう言いながら、〈鉄剣〉を手に取り、いろいろな角度で観察し始めた。

 その間に、俺は辺りを見渡す。

 剣や斧の他に、槍や弓、鞭や篭手、爪や盾なんかもあった。

 他にもいろいろあるが、盾は武器なのか?


 あと、気になったのが、カウンターの上に置いてある赤い実だ。

 大体、ミニトマトほどの大きさのものが数十個ほど積まれていた。

 これは一体何なのだろうか?


 そんなことを思っていると、今まで〈鉄剣〉を見ていた親父が口を開いた。


「見たところ悪くはねぇな。切れ味も良さそうだ」

「それと同じものがあと三本ある」

「なるほどな。そっちも見てぇんだが……今すぐ持ってこれるか? もちろんこの〈鉄剣〉は一旦返すからよ」

「? 別に返す必要はないが、わかった」


 イベントリから残りの〈鉄剣〉三本を取り出してカウンターに置く。

 すると、親父はカウンターから身を乗り出し、慌てた様子で口を開いた。


「ぼ、坊主! お前【空間】の【魔法陣】が使えるのか!?」

「え? いや、これはイベントリっていう……」

「イベントリ? なんじゃそりゃ、んなもん聞いたことがねえぞ?」

「…………」


 マジか。ミスったな。

 この世界にはイベントリっていう概念がないのか!

 もっと慎重に行動すべきだった!


「あ~、親父。一応この話はオフレコで頼む」

「それはいいけどよ……。よし! それじゃあこの話は聞かなかったことにしてやる! 坊主はこの店に入った時からこの〈鉄剣〉を持っていた。それでいいな?」

「あ、ああ。それでいい。助かる」

「いいってことよ! 坊主にもいろいろ事情があるみたいだからな!」


 そう言って、親父はニッと顔を歪ませた。

 

「このおじさん、結構いい人?」

「人は見かけによらないんだねー」

 

 小声でそう言ってくる凛と蘭。

 俺もそう思うよ。

 最初はどうなることかと思ったが、いい人そうで助かった。


「それじゃあちょっと待ってな。すぐに【鑑定】してやっから」

「よろしく頼む。…………?」


 ちょっと待てこの親父今()()って言わなかったか?


 俺はバッと顔を上げて親父を見る。

 すると親父は、カウンターの上に積まれていた赤い実をパクッと一口で食べた。


「ふむふむ……おお! この剣、特殊効果があるじゃねえか! これなら高く買い取れるぜ!」

「それはよかった。……ちょっと聞いていいか?」

「ん? どうした?」

「さっき食べた赤い実は何なんだ?」

「あ? 坊主〈鑑定の実〉を知らねえのか?」

「〈鑑定の実〉? 有名なのか?」

「有名っつーか、知らねえヤツのほうが珍しいだろ」

「マジか。ちなみに、どんな効果があるんだ?」

「食べた者にスキル【鑑定】を付与するって効果だな。一粒で大体十分ぐらいは持つぜ? つっても、これはレア度3の〈鑑定の実〉だからな。もっとレア度が高い物になると、鑑定の内容が詳細になったり、効果時間が長くなったりするぜ」

「へぇ~、それはそれは」


 〈鑑定の実〉か。

 食べ物でスキルを使えるようにとか、そういうパターンもあるんだな。

 何はともあれ念願の【鑑定】だ。

 金が手に入ったらいくつか買ってみるのもいいかもしれないな。

 ……いや、”無限食料庫”で出せるか?

 帰ったら試して見るとしよう。


「良かったら一粒食ってみるか?」

「いいのか?」

「ああ、レア度3程度なら大した額もしねぇからな」

「そうか。それじゃあお言葉に甘えて」


 そう言って、俺は〈鑑定の実〉を一粒手に取り、口の中に放り込んだ。


―――――――――――――――――――――――――――――

スキル【鑑定Ⅲ】が付与されました。残り時間10:00

―――――――――――――――――――――――――――――


「……甘いな」

「そりゃあ当たりだな。たまに酸っぱいのもあるぜ」

「そうなのか」


 まあ、今の俺は固有能力の効果で幸運の数値が跳ね上がってるからな。

 今の状態なら宝くじも当たりそうだ。


 っと、時間を無駄にするのは良くないな。


 そう思いながら、カウンターの上に置かれた〈鉄剣〉を鑑定した。


―――――――――――――――――――――――――――――

〈鉄剣〉:鉄でできた剣。

特殊効果

    ・攻撃力上昇+5%

    ・出血量増加(小)

    ・激痛

―――――――――――――――――――――――――――――


 おお! 本当に出来た!

 まさか売るために創った剣にこんな効果があったとは!

 でも激痛ってなんだ?

 これ特殊効果も鑑定できるのか?


 試しにやってみる。


―――――――――――――――――――――――――――――

”激痛”:対象を傷つけた際に感じる痛みが激痛に変わる。

―――――――――――――――――――――――――――――


 割とエグい効果だった。

 これってかすり傷程度でも激痛になるのか?

 だとしたら結構強い効果だと思うんだが。


 こうなってくると、〈処刑人の剣〉の内容も気になるな。

 ちょうど良い、やってみるか。


―――――――――――――――――――――――――――――

〈処刑人の剣〉:処刑人が罪人の首を刎ねるときに使用する剣。

特殊効果

    ・攻撃力上昇+15%

    ・首特効+250%

    ・罪人特効+100%

    ・出血量増加(大)

    ・激痛

―――――――――――――――――――――――――――――


 首特効+250%!? 罪人特効+100%!?

 怖っ! 普通に腰に差してたけど、効果怖っ!

 てかこの武器普通に強くね!? 

 〈鉄剣〉よりも遥かに性能良いし!


「どうした坊主? 顔が青いぞ?」

「い、いや大丈夫。心配しないでくれ。それよりも、どのぐらいの値段になる?」

「そうだなぁ……金貨四枚と銀貨二枚、42万レインでどうだ?」

「うむ……」


 ちなみに親父の話だと、この世界の硬貨価値は以下の通りだ。


青銅貨一枚=100レイン

銅貨一枚=1,000レイン

銀貨一枚=10,000レイン

金貨一枚=100,000レイン

白金貨一枚=1,000,000レイン


 大体1レインが日本円の1円だと思っていいと思う。

 つまり42万レインという事はそのまま42万円ということになる。

 予想以上に高額だな。

 だが、そう考えると化物退治の報酬である金貨500枚って桁がおかしいよな。

 日本円で50,000,000円か。家が建つぞおい。


「なるほど。四本でそれなら……悪くないな」


 もともと売るために創ったんだ。それに40万以上の値が付くなら上々だろう。


「いんや? 一本辺りだぞ? 四本で計168万レインだな」

「ひゃ……っ!? 流石に嘘だろ!?」

「どうして嘘なんかつかなきゃなんねーんだよ。妥当な値段だろ。それとも何か? 俺が吹っかけてるとでも言いてえのか?」

「いや、そうじゃないが……、特殊効果があるとは言えただの鉄の剣だろ? そんなに高くていいのか?」

「まあ、確かに”攻撃力上昇”と”出血量増加”はそんなに珍しくもねえが、問題は”激痛”だ。多くの武器を見てきたが、そんな特殊効果は見たことがない。効果自体もなかなかに優秀というかエグいしな」

「つまり、珍しい特殊効果が付いてるから普通よりも高いってことか」

「そう言うこった。納得したか?」

「ああ、そういう事ならその値段でいい」

「よし! じゃあ金貨十六枚と銀貨八枚だな。念のため数えてくれ」


 俺は金が入った袋を親父から受け取り、中身を確認した。


「確かに受け取った」

「その金で何か買ってくか? 自慢じゃないが、この街じゃウチが一番の武器屋だ。いろいろとあるぞ」

「いや、今回はいいや。それに、俺にはこれがあるからな」

「あの〈鉄剣〉を四本も手放せるほどの剣か。少し【鑑定】してもいいか?」

「あ~これは……」


 一瞬、名前と特殊効果の二つの意味でためらったが、どうせ売る気もないし、別にいいか。


「見るだけな」

「そう来なくっちゃな! よし、どれどれ~?」


 そう言いながら、親父は〈処刑人の剣〉をみて――――みるみると顔が真っ青になっていった。

 それはどっちの反応だ?

 名前か? 特殊効果か? それともどっちもか?

 

「お、おま! これ! いくらなんでもこれは!」

「ははは、まあ気持ちは分からんでもないけどな」

「笑い事じゃねえ! お前どこの執行官だよ!? 見たことねえぞこんなデタラメな剣!」

「ちなみに、値段をつけるとしたらいくらになる?」

「ンなもん、金貨200枚はくだらねえだろうな。オークションに出しゃその5~6倍ってとこか」

「マジで!?」


 これ一本2000万!? オークションなら1億円!? たっか!

 と言うかこんな物騒な剣を欲しがる奴がいるのか? 怖ぇ。


「なるほどな。坊主の様子が変だったのはこの剣を【鑑定】したからか。納得だぜ……」


 そうだろうそうだろう。

 いきなりあんな物を見てしまったらそうなるよな。


「で、売るか? 今すぐは払えねえが――」

「待て待て、売らないからな?」

「そうか。少し残念だ」


 残念がっても流石に剣を売る気にはなれないな。

 いろいろな意味で。


 さて、用事も済んだし金も手に入ったし、そろそろ出るか。


「じゃあな、親父。世話になった!」

「おう! また来いよ坊主! 嬢ちゃんたちもな!」

「「じゃあね、おじちゃん!」」


 そう言って、俺たちは武器屋を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ