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14.毎日温泉に入れるって、控え目に言って最高じゃないですか?

「次はついに……()()だな!」


 妹特製の『兄LOVEオムライス』を食べ終えた俺は、思わずそう叫んだ。

 だが、それもこれも仕方がないのだ。

 なんせこの”愛の巣”の風呂は、それはもう広いからな! 温泉レベルだからな!

 日本人として、これほど嬉しいことがあるだろうか。

 毎日温泉に入ることができるなんて……最高じゃないか!

 特に今日はいろいろあって疲れたからな。ゆっくり入って疲れを落とすとしよう。


「お兄ちゃんお風呂入るの?」

「そのつもりだが……先に入るか?」

「ううん。お兄ちゃんが先に入っていいよ」

「むしろ兄さんが先に入らないとダメだよ」

「私たちは後から入るから」

「お先にどうぞ」

「そ、そうか? それじゃあ遠慮なく」


 いざっ! お風呂(ユートピア)へっ!


「お、おぉぉぉぉ~~~~っ!」


 風呂の扉を開けた俺は思わず歓声を上げてしまった。

 何度見ても広いな!

 日本にいた時の俺の部屋よりも遥かに広いぞ!

 それを独り占めとか、贅沢かよ! 最っ高!


 今すぐにでもダイブしたいところだが、まだ身体を洗ってないからな。

 先に洗ってしまおう。

 とは言え、シャンプーなんて物は置いてないからな。水洗いで我慢だ。

 いつもより念入りに磨くとしよう。

 金が手に入ったら、日用品も買い揃えないとな。


 身体を洗い終えた俺は、いよいよ湯船に浸かる。


「ふあぁ~~~~~…………」


 最高や。これぞ理想郷(ユートピア)の名にふさわしい。極楽極楽~。

 俺は目をつぶり、だらしなく大の字になり、お湯に身を任せた。

 

 ――カラカラカラ


 ……ん? 今音が聞こえたような……? 気のせいか?


 ――ちゃぷんっ……ちゃぷ、ちゃぷ


 いや、気のせいじゃないな。侵入者? 誰だ? 

 …………って、凛と蘭しかいないか。だったら気にしなくていいな…………いや、全然良くないだろ。

 どうやら、気持ちが良すぎるお湯に浸かっていたせいで、思考判断力が低下していたらしい。


 俺は若干重いまぶたを開く。


「あっ、お兄ちゃん。起きた?」

「兄さん、お邪魔します」


 ――ぴとっ、むにゅっ


 目の前にいると思っていた凛と蘭は、いつの間にかそれぞれ俺の右腕と左腕に密着する形で湯船に浸かっていた。


「………………何やってんの? お前ら……」

「お兄ちゃんと一緒に入りたくって」

「凛ちゃんに同じく」


 そう言いながら、グイグイと自分の柔らかな双丘を押し付けてくる凛と蘭。

 小さくも確かにあるその柔らかな感触に、心臓が激しく脈打つ。

 ダメだ、このままでは俺のグングニルが臨戦態勢に入ってしまう。

 なんとかしなくては。兄として妹に欲情するわけにはいかないのだ。

 かと言って、無理やり引き剥がすのは意識していると思われて、余計に凛と蘭を暴走させかねない。

 俺は妹なんぞに欲情しない!という確固たる意思を持ってことに臨まねば。


 俺は、できるだけ平静を装いつつ、口を開いた。


「…………俺、もう上がるから。ごゆっくりどうぞ」


 そう言って、俺はゆっくりと立ち上がった。


 無理! いくら妹でも! いくらちっぱいでも! いや、ちっぱいだからこそ! 押し付けられて興奮しないなんて無理です!

 と言うか、俺には《近親愛インセスト》って性癖があるんだよ! 認めたくはなかったが、これは認めざるを得ないな。


「え~! もう少し一緒に入ろうよ~!」

「兄さんがいないとつまらないよ~!」


 ――むにゅんっ


「ひゃ……っ」


 やめろ! 胸を押し付けるな! 思わず変な声出ちゃっただろ!


「「あ……っ」」

「?」


 凛と蘭に手を掴まれて動けないでいると、凛と蘭が短く声を発した。

 見ると、二人の顔は真っ赤に染まっており、まじまじと俺の体をある一点を見つめていた。


「? どうし……たッ!?」


 ()()に気が付いた俺は、勢いよく湯船に浸かった。

 どうやら、俺のグングニルはすでに臨戦態勢だったらしい。


 なんというか…………死にたい。いっそ殺せ……。


「大丈夫だよ、お兄ちゃん。むしろ嬉しいよ?」

「そうだよ、兄さん。私たちに興奮してくれたんだね。すごく嬉しい」

「うっ……うぅっ」


 自分のアレを見た妹から慰められる兄って……。


 結果的に、(いろいろな意味で)風呂から出られなくなってしまった。

 これから長い戦いになりそうだ。

 

  ◆◆◆


 どうにか無事(と言って良いのかは分からないが)風呂に入り終えた俺は、リビングで無限食料庫から持ってきたコーヒー牛乳を一口に飲み干した。


 やっぱり、風呂上りといえばコーヒー牛乳だよな。


 さて、草原を長時間歩いたり、森の中に入ったりして汚れてしまった制服は現在洗濯中だ。

 再び着るにはもうしばらく時間がかかるだろう。

 とういう訳で、現在俺はタオル(”愛の巣”内に初めから置いてあった)を腰に巻いている状態だ。

 まあ、俺は別にいい。

 日本にいた時から風呂上りはこんな感じだったしな。

 問題があるのは凛と蘭だ。


 俺は隣でちびちびとコーヒー牛乳を飲む凛と蘭に視線を向ける。

 ほんのりと赤く上気した頬。濡れて艶やかな肌に張り付く黒髪。そして、その身に纏っているのはバスタオル一枚。

 俺と同じく服を洗濯に出してしまった凛と蘭は、ただいまそんな状態だった。

 俺の知らないうちに一緒に洗濯されていたのだ。止める暇すらなかった。

 とはいえ、ずっとこのままという訳にもいくまい。主に俺の精神的に。

 だが、替えの服なんてないし……どうしたものか。


 俺の派生能力で解決するか?

 一応、できないことはない。ないのだが……。


「くしゅんっ……」


 どうしたものかと考えていると、蘭が可愛らしいくしゃみをした。

 ………………背に腹は変えられないか。

 俺の性癖に凛と蘭を巻き込むみたいで気が引けるが……風邪を引くよりはマシか。


「”拘束器具作製”」


 俺は《拘束愛好バインドフィリア》から派生した能力、”拘束器具作製”を発動した。

 目の前に光が集まり、一瞬にして服を形作った。

 だが、《拘束愛好》なんてアブノーマルな性癖の派生能力で作り上げた服が普通なわけがなく。しかしながら、それ以外着るものもないので我慢するしかない。


「という訳で、はいこれ」

「なに? これ……」

「服? でもちょっと変……」

「まあ、普通の服なんて作れないし……。〈拘束衣〉って一応、服として使えるだろ?」


 腕と脚の部分を拘束さえしなければ十分衣服として使えるはずだ。


「使えるとは思うけど……」

「いいよ。兄さんがせっかく作ってくれたんだもん。着てあげる!」

「べ、別に俺が着て欲しいとか、そんなことを思ってるわけじゃないからな? 仕方なくだよ仕方なく」


 慌てて取り繕う俺を、蘭はニヤニヤと見つめていた。

 どちらにせよ、これしか着るものがないのは本当なんだけどね。

 ……って、凛は?


「どうした? 凛」

「う~ん。私は別に裸でもいいよ?」

「え? いや、それは俺的にマズイ。そんな格好でウロウロされたら俺の精神が持たないから」

「でも、私《露出癖エクシビジョニズム》だし」


 ああ、そうでしたね。


「でも、そっか……お兄ちゃんがそう言うなら、私も着てあげる!」


 そう言って、凛は俺の作った〈拘束衣〉を抱きしめた。


 とにかくこれで、衣服問題は解決(仮)だな。

 このあと、裸の上から直接〈拘束衣〉を着た凛と蘭を見て、いろいろと大変だったのは言うまでもないだろう。


  ◆◆◆


 部屋へと戻ってきた俺は、寝る前に先ほど確認できなかった熊の魔物のドロップアイテムを確認することにした。

 ベッドに腰掛け、イベントリを開く。


―――――――――――――――――――――――――――――

〈神界の白箱〉

    ・レイン様からの手紙

〈ヘルベアの魔晶石〉

〈ヘルベアの素材〉

    ・ヘルベアの大牙

    ・ヘルベアの毛皮

    ・ヘルベアの骨

    ・ヘルベアの肉

〈モンスターコイン〉

    ・ヘルベアコイン×10

―――――――――――――――――――――――――――――


 あの熊ってヘルベアって言う名前だったのか。

 ヘルベア……地獄の熊? 大層な名前だなおい。

 俺は遠くから姿を見せることもなく絞め殺したから分からなかったが、もしかしてこのヘルベアって強かったのか?

 レベルの上がり方からしても、十分あり得るな。

 そう考えると、やっぱり≪性癖能力化フェティシズムアビリティ≫ってチートだったんだな。…………字面から受ける印象はともかく。


 で? えぇ~と、〈ヘルベアの魔晶石〉か。…………魔晶石ってなんだ?


 見た感じ赤黒い水晶?みたいな見た目だが、何か用途があるのだろうか。

 例えば魔法発動の補助具の材料だったり、装備するとステータスが上昇したりとか。

 あ~鑑定が欲しい。見るだけでアイテムの詳細がわかったらどれだけ楽か……。

 

 まあ、無いものねだりしても仕方がないか。

 それよりも次だ次。

 

 〈ヘルベアの素材〉か。これはまあ文字通りヘルベアから取れた素材だろうな。

 さりげに食べ物、肉が入っていたことは気になるが…………それ以外は特に気にすることはないか。


 次で最後か。

 最後といっても、一番の謎アイテムなわけだが。

 ヘルベアコインってなんぞや?

 一応、〈モンスターコイン〉ってやつに分類されるだろう、って事はわかるのだが、それ以外が一切分からない。

 これは保留一択だな。

 街に戻ったら聞いてみるとしよう。


「ふぅ~…………」


 イベントリ内のドロップアイテムの確認を終えた俺は、深く息を吐いた。


「………………寝るか……」


 ベッドから立ち上がり電気を消す。

 そして再びベッドの下へと舞い戻り、布団に潜り込む。


 これで、異世界生活初日が終了か。

 なんというか、疲れた……。

 一日目からこの調子で大丈夫か? まあ、明日のことは明日の自分が何とかしてくれるか。

 今の俺は、ただただこの疲れた体に睡眠を与えることだけに集中しよう。


 …………あ……夜中に魔物から襲撃されたりしない、よな?

 解禁の一覧に”絶対障壁システム”っていうのあったってことは、可能性としてはゼロじゃないってことなんだろうけど…………正直、もう一歩も動きたくない。

 と言うか、一応防犯対策はしておいたしな。気にしなくていいか。

 それも、明日の俺がどうにかしてくれる…………はず。

この話で一応第一章は終わりとなります!


正直、化物退治までやってから終わろうかと悩んだのですが、一章のタイトルが『新たなる日常の始まり』なので異世界転生初日が終わったところで切ることにしました!


第二章を始める前に、もしかしたら閑話を挟むかもしれません!


それでは、これからもよろしくお願いします!

よかったらポイント評価も! 是非に!

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