権助提灯4
そんなこんなでさとと権助の二人はしょう太の住む妾宅に到着しました。
「ご主人様、ただいま到着しましたよ」
「わかってるよ、権助や。おやおや何をしているんだい。提灯のろうそくがついたままじゃあないかい。そんなふうにもったいないことをするものじゃあないよ。早く消しておしまいなさい」
「ええまあ、そうしろと言ったらそうしますがね、ご主人様。だけれども先ほどは愛だのなんだの言っていたくせに、こういうことはしっかりけち臭くきっちりしていやがりますね。ですが、どうせ帰る時にまたつけるんですからね。そうだ、このろうそく、ご主人様がしょう太さんと一緒にお使いなさりますかい」
「一緒にって、権助や、ほら、ご覧よ、この家を。確かに地震はあったけれども、別にどこか壊れたりはしていなくてね、障子を通して明かりがついているのが見えるだろう。きっとここも本宅と同じように無事だったんだね。でも明かりがついているということは、しょう太も目が覚めて、でもあたしと違って一人寂しくしているんだろうねえ。だから早く行ってやらにゃあ。そういうわけで、ほら、権助、さっさとそのろうそくの明かり、消しちまいな」
「いや、ご主人様、そういう事じゃあなくてね、おいらが一緒にろうそくを使うと言ったのはですね、ご主人様がこのろうそくの融けた熱い熱い蝋をですね、しょう太さんに垂らして熱がらすわけですよ。おいらもよく女性にろうそくを垂らしてもらっていますがね、これが結構具合がよろしくてですね……」
「よしとくれ、権助や、どういうことだい人様にろうそくを垂らすだなんて、ろうそくはだね、暗いところを照らすためにあるものだよ。それを言うに事欠いて、男に垂らして熱がらせるだなんてふしだらだよ。破廉恥だよ」
「それじゃあこのろうそくの明かり、消しちまいますかい、ご主人様」
「何も消すことはないだろう、権助。さ、そのろうそくをちょいと渡してちょうだいな」
「やれやれ、はいどうぞ」
権助がろうそくを渡すが早いが、さとはしょう太の家の中に駆け込んでいきました。