前へと進む
「カルナ……アイギス……!!」
ベルは、怒り狂っていた。予想外に予想外が重なり、文字通り悪魔のような形相で、彼はカルナを睨みつける。カルナは、少し、ビクッと震えるが、すぐさまベルを睨み返した。
「まだ、怯えてるではないか!何故、そんな状態で前に出れる!俺が!悪魔が恐ろしくないのか!!」
ベルは叫ぶ。対して、カルナはフゥと息を吐くと、静かに話始める。
「もちろん怖いさ。戦うのも、悪魔も怖い。怖くて仕方ない。だけど、それ以上に私は自分に怒りを感じている。何故、戦わない。何故、逃げた。何故、生意気な新米隊員に守られている。本来、私は守るべき立場では無いのか?そこの新米の立ち位置に私はいなければいけないんじゃないか、と」
「生意気って」
アルフレッドがそこの部分に反応したが、カルナはスルーした。更にカルナは続ける。
「そこで私は、気付いたんだ。怒りとは、どちらかというと、負の感情なのだろう。しかし、自分に向けた怒りは、次の行動の原動力になる事を。人間が前に進む為には、負の感情が必要なんだと!」
そこで、アルフレッドとベルは気付いた。彼女の持っているEマグナムが赤く、輝いている事に。その輝きは、どんどんと輝きを増し、周りの炎が霞む程に光り輝いている。
「ベル!!これが私からの!!決戦の!!号砲だぁ!!」
ベルに向かって赤く輝くビームが放たれる。前に見たビームと比べると勿論、色は違うが、他にも違う事があった。
「で、でかい!!」
「ちょ、なんで俺まで!!」
それは、今までとは比べ物にならない程の巨体なビームだった。
アルフレッドは間一髪でビームを避ける。ベルとの距離は10メートル程離れていたが、それでも十分に射程範囲に含まれていた事にアルフレッドは絶句する。直ぐ様、カルナの横に移動した。
「なんで、俺を巻き込んだんですか!!一歩遅かったら直撃ですよ!!」
「何、お前なら避けてくれると思ったんだよ。悪かったか?」
「大分悪いですよ!」
「そうか、それはすまなかった。……それと、お前、大分姿変わったな。それが本当の姿か?」
「えぇ!俺も不本意でしたが、その通りです!」
アルフレッドとカルナは、言い争っているが、油断しているようには見えない。彼らは、ベルがいつ動いても対応できるように、常に意識を向けていた。
「ぐぅ、ちくしょうが!」
ボロボロのベルがビームの中から出て来る。少し間をおいて、ベルは大きく息を吸い込む。それだけで、周りを漂う魂が彼に食われた。魂を食らったベルの傷が少しずつ治っていく。
「なんだ?いきなり回復した!?」
カルナは言った。彼女は魂が見えていない。彼女には、ただベルが息を吸って回復したようにしか見えなかった。
「あいつ、周りに飛んでいた魂を食らっています。ただ、町の人達の魂は無事です!おそらく、まだ完全に肉体から魂が離れきれて無いからでしょう!」
アルフレッドはカルナの前に立ち構える。カルナも「なるほどな」と短く答えるとEマグナムの標準をベル達に合わせた。
「カルナ隊長。これが、最後の戦いです。準備はいいですか?」
「当然。準備は、先程の号砲の時から出来ている!!」
ニヤリと笑ったカルナは、アルフレッドに向かって堂々とした口調で言う。もう、怯えきったカルナはそこには存在しなかった。そこにいるのは、負の感情を乗り越えた特攻部隊隊長、カルナ・アイギスだった。
「仕掛けます!地上からの援護を!」
アルフレッドは地面を思い切り蹴って飛び出す。ベルに向かって一直線で飛び、彼の顔に殴りかかった。
「ッ!させんよ!!」
ベルは頭を下げて、避ける。そして、彼はアルフレッドの腹に目掛けてアッパーを繰り出した。アルフレッドは、それを上に飛ぶ事で威力を相殺する。無防備に挙げられたベルの拳を掴み、一回転して前方に放り投げた。
呻き声を上げるベルに、黒炎を打ち込み追撃する。ベルは舌打ちをすると、同じく、黒い炎を黒炎に向かって放った。
互いに当たった炎は相殺され、何も無かったかのように消え去った。
「理性が戻って、弱くなってしまったのでは無いか?」
ベルはアルフレッドに向かって言う。対するアルフレッドは、何も言わない。ただ、殺気のこもった瞳でベルを見据えている。
グァッと後ろからアンチデーモンが襲いかかってくる。アルフレッドは、横殴りで顔を殴るが、効いていないようで、そのままアルフレッドは、腹にパンチを食らった。
「くっ」アルフレッドが呻く。その隙を突いてベルが突進してきた。と、同時に地上から赤い光線が放たれる。
「ぐぉ!」今度はベルが呻いた。顔を咄嗟に後ろに引いて避ける。しかし、少し顔に当たったのか、顔にやけどを負った。光線が放たれた方を見ると、カルナがニヤリと笑いながらベルを見据えていた。銃口は完璧にベルを捉えている。ベルは、それに苛つきを覚えた。
そこからは一進一退の攻防が繰り広げられた。互いに一歩も引かず、戦っている。しかし、若干の差ではあるが、アルフレッド達は押し負けているようだった。
「ぐっ、カルナ隊長!援護を!」
「すまん!速すぎて上手く当たらん!動きさえ止まってくれれば……!」
カルナは必死に援護をしているが、当たる気配は全くない。それでも威圧にはなるので、無いよりかはマシだったが。しかし、アンチデーモンは、Eマグナムで無いと倒せない。それを分かっている2人は、徐々に追い込まれていった。
そして、他にも原因はある。それは、カルナがベルやアンチデーモンを相手にとれない事だ。どうしても実力に差が出来てしまう。その為、アルフレッドは、ベルとアンチデーモン__2人の相手をとらなければならなかった。カルナは、アンチデーモンの隙を狙って一撃で倒さねばならない。今は、アルフレッドを標的にしているが、カルナにターゲットが移る可能性も十分にある。その為、チャンスは一回。一発で確実にアンチデーモンを仕留める必要があった。
「す、凄い戦いだ」
魂だけの存在となったウルは、彼らの戦いを見て言う。オーファンはそれにコクリと頷いた。
「この世の者では無い者達の戦いです。人間の尺度では、測れないほど大きな戦いになるでしょう。それにしても凄いのは、あの隊長さんの方です。悪魔との戦いにしっかりとついて来ている」
オーファンはそう分析する。しかし、それに対して不安もあった。アルフレッドの立ち位置は、常にカルナの前方、少なくとも、それよりも少し横にずれた所を維持している。これは、カルナが敵の標的に切り替わった場合、すぐに間に入ることが出来るようにだ。これのせいで今、アルフレッドの行動は大きく制限されている。
「厳しいですね。アルフレッドさん」
オーファンはそう言うとギリッと歯を鳴らした。
「ぐ、このままではジリ貧だ!」
アルフレッドが叫ぶ。
「ふ、ははは!かなり手こずってしまったが、最早手詰まりのようだな!」
ベルが高らかに笑う。カルナは、舌打ちをした。(無理矢理だがしょうがない!)
焦ったカルナは、アンチデーモンに照準を合わせる。
「いけぇ!」
放たれたビームは、アンチデーモンに一直線に飛んでいく。
「な、今か!?」
アルフレッドは、驚愕した。でも逆に良いのでは無いか?と思考を重ねる。今、撃たないだろうと思ったタイミングで放ち、不意をつく作戦かと考えた。
カルナの放ったビームは、アンチデーモンの左腕を撃ち抜いた。
「やったか!?」カルナが叫ぶ。
しかし、左腕が無くなったアンチデーモンは、その怒りの矛先をカルナへと向けた。
アンチデーモンがカルナへと、物凄いスピードで飛んでいく。
「しまっ__!」
アルフレッドが向かおうとするが、その前にベルが立ちはだかる。「行かせはせんよ」その言葉にアルフレッドは歯痒さを覚えた。
カルナは、盾を構え、アンチデーモンを待ち構えた。山に穴を開けられるのではないかと思わせるような速度で突進して来る。
とんでもない衝撃がカルナを襲った。体が強引に持ち上げられ、そのまま、数メートル押し込まれた。
「くおおぉ!」
カルナが呻く。今、自分の体勢を整えるだけで精一杯だった。なすすべ無くアンチデーモンに押される。
『重心が安定してないからふらつくんだよ!』
『なにしてるんですか!生き残ると言ったのはあなたでしょう!』
『あんたのこれまでの努力と思いは、こんな事でポキリと折れるものだったのか?』
『お前は、その腕と足で、俺は俺の鍛冶職人の腕前で、2人で有名になんだよ。……どうだ?カッコ良くないか?』
イマリア、アルフレッド、ロウ、ハイルの声が頭に響き渡る。そしてそれは、カルナにとてつもない程の力と勇気を与えた。
「あああああぁぁぁ!!!!」
カルナが叫ぶ。しっかりと地面についた足は、周りの土を少しずつ抉りながら進んでいく。それでもなお、アンチデーモンの突進は止まる事無く、カルナを押し続ける。
それでも、カルナが再び宙に浮く事は無かった。そして、徐々に速度は遅くなっていき、十数メートル行った所でその動きをピタリと止めた。
「馬鹿な!」
ベルが、有り得ないといった表情でその光景を見つめる。アルフレッドは、それを見て、口角を上げて笑った。
「凄い、あれを受けきるなんて」
オーファンが目を見開いた。並の人間であれば、最初の衝撃で吹き飛んでいるだろう。それを、飛ばされないだけでなく、受け切って見せたカルナに、彼女は驚愕したのだ。
「はぁ……!はぁ……!……捕まえたぞ!」
カルナは素早く盾をしまい、Eマグナムをアンチデーモンの胸にドンと突きつける。
「これでぇ!終わりだぁ!!」
カルナは引き金を引いた。特大のビームがアンチデーモンを飲み込む。アンチデーモンは、その肉体全てをビームに飲まれ、完全に消滅した。




