表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天界異世界課の天使?  作者: 切島直人
16/25

異常と戦いの始まり


アルフレッドは「よっ」と短く声を出し、Eマグナムを背負う。ズシリと重さは来たが、大した重さでは無く、アルフレッドは軽く跳んでみせる。


「大丈夫ですね。余裕で運べると思います」


アルフレッドは楽そうな顔をして言う。それを見ていたカルナは、嬉しそうに頷いた。その後にアルフレッドはカルナに向けて、両腕を広げる。カルナは、スッと力を抜き、アルフレッドの両腕に抱え込まれた。

カルナを抱えたアルフレッドは、余裕の表情で都市アイールを見つめる。



「本来、安静だと言う所だが、もう諦めた!だが、激しい動きだけはやめてくれよ」


ロウが諭すように言う。カルナは笑いながら頷くと、ロウに対してお礼を言った。


「アル君!頑張ってね!」


アリスが手を振る。アルフレッドは、両手がふさがっている為、精一杯の笑顔で答える。アリスもそれを見てにっこりと笑った。ウルも隣で笑っている。「頑張ってくれ」そう短く言うと、とても朗らかな笑顔を見せた。


アルフレッド達は頷くとアイールに向かって歩き出した。アルフレッドの後ろから女隊員が付いてくる。


「お前は、今日の北部隊にこのまま合流してくれ。私達は一度アイールに戻り、報告した上で加勢しに行く」


本来であれば、カルナも直接、北部隊に加勢する予定だったのだが、隊長の口から一度、総隊長に報告した方が良いと判断した為、アイールに戻る事になった。


今の時刻は丁度14時を回った所だ。この時期の黄昏時は、だいたい17時頃になる。報告に1時間掛かったとしても、移動出来る時間は2時間__。いけるだろうとアルフレッドは思った。彼は、女隊員の方を見て小さく「じゃあ、行ってきます」と呟いた。彼女は「行ってらっしゃい」と返し、片手で小さく手を振った。


次の瞬間、砂煙が辺り一面に舞った。女隊員はケホケホと咳き込み、目を瞑りながら頭についた砂を払っている。そして目を開けた時には、アルフレッド達はバリオンの南に広がる、ラーノ樹林の中に消えていた。

「速すぎ……」彼女は呟くが、それを聞いてくれる人は周りに居なかった。




「本当に1時間掛からずに着けそうだな」


カルナが感心したように言う。2人はいつの間にかラーノ樹林を抜け、アイール平原を縦断していた。


「言ったじゃないですか。1時間あれば、行けるって」

「流石に完全には信用できんよ」


得意げに答えるアルフレッドにカルナはため息を吐いて言った。ちなみにオーファンは、何食わぬ顔でアルフレッドの横を飛んでいる。平原の遥か彼方には、都市アイールが見えた。が、しかし、実際は、まだ3分の1も走ってはいない。アイール平原は、広大な上に、遮蔽分が何も無い為、遠くの建物まではっきりと見える。アルフレッドは、見えているのに、一向に大きくならない都市アイールの景色を見て少し焦燥を覚えた。


「しかし、こんなに速いと少し怖くなってくるな」


カルナは、アルフレッドから焦りを感じたのか、それを紛らわすように話し始めた。アルフレッドは悪い笑顔を見せ、「もっと速度を上げますか?」とカルナを煽る。カルナは、アルフレッドをひと睨みする。

一応こっちは隊長だぞ__。そう言いたげだったが、少しでも会話をする事で彼の焦りの感情を抑える事が出来た為、まぁしょうがないかと小さく笑みを浮かべた。


「いいだろう、私は構わん。やってみせろ」


カルナはアルフレッドに向かって言った。アルフレッドはそれを聞いて、更に速度を上げる。周りが開けている為、速度は感じづらかったが、顔に当たる風と、近くを駆ける小動物や岩などが一瞬のうちに近づき、遠ざかるのを見て、かなりの速度が出ているのだろうと2人は想像できた。



走り始めて約30分。親指程の大きさだった都市アイールも今では、周りの外壁がはっきりと見える。あと、10分もしないうちに到着するだろう。最初は、たわいない会話をしていた2人だったが、今は互いに喋る事はない。今日の異常気象について考えているのだ。おそらく、昨日の奴が出てくるのだろう。そう予想できた2人は、どう立ち回るかを考えていた。




「着きました」


短くアルフレッドは言う。


「あぁ、ありがとう。アルフレッド」


それに対してカルナが答える。着いた先は都市アイールの外壁__門の前だ。眼前に立つ巨大な門には衛兵が2人、驚いた表情でこちらを見ている。目の前から特攻隊長が、若い隊員に抱えられて猛スピードで走ってきたら誰だって驚くだろう。カルナはアルフレッドから降りると、アルフレッドに言った。


「お前はここで待機だ。私は急いで隊長に報告してくる。終わったらすぐに戻るぞ」


カルナは驚く衛兵を横目に都市内に駆けて行った。アルフレッドはフゥと一息吐くと、門の手前にあった身長程の岩に腰を掛け、北の空を見上げた。





対アンチ部隊、総合館の一室__。ヴェルゴ・ベルは部屋内の窓から空を見つめていた。黒く輝く鎧に身を包み、静かに窓際に立っている。ベルは誰かが走ってくる音を聞き取り、入口の扉の方に目を向ける。ノックの音が響いた。

「開いている。入れ」ベルが言う。

引き戸がガラガラと音を立てて開いた。そこには白い鎧に身を包んだカルナが立っていた。走ってきた為か、息が少し切れているが、全く気にしない様子でベルを見据えた。


ベルの眉がピクリと動く。


「カルナ隊長か、先程、北部隊の隊員が報告しに来たが、戦闘不能の状態で、バリオンで治療中だと聞いたのだが」

「……はい。確かにそうでしたが、街の医者の腕が良く、完治とまではいかなかったのですが、ご覧のように動ける状態にはなりました」


ベルは、顎に手を添え、髭を撫でる。


「……戦える状態なのか」

「もちろんです」


カルナは、即答する。ベルは短く「そうか」と呟き、目を閉じ、考え込んだ。


「それで、報告なのですが」


カルナは話を切り出す。ベルは静かに目を開け、カルナの報告を待った。


「既に、報告に向かった隊員からお聞きになったかもしれませんが、昨日の異常気象の際に現れた怪物の事です」

「あぁ、確かに聞いた。その時は、Eマグナムで消し去ったと聞いたが?」

「それは、怪物の腕だけです。本体は、まだ倒せてはいません。それにEマグナムで怪物の本体が倒せるという確信は、正直持てません。人員を増やし、時間を掛けて、確実に倒すしかないと思われます。それでも倒せるかどうかは微妙でしょう」


ベルはニヤリと笑う。


「そんな筈は無い。私も昨日、あの光線の柱を見たが、まだ出力はあげられる筈だ。最大火力のEマグナムを放てば、あの怪物は確実に消滅するだろう」

「は、はぁ」


カルナは困惑の表情を浮かべた。ベルは、かなり自信があるのか、その表情からは一切の迷いが見えない。


「報告は以上か?では、下がりたまえ。君も今日の戦いに出るのであれば、早く向かった方が良いだろう。間に合わなくなるやもしれん」

「……分かりました。失礼致します」


カルナは、納得してはいなかったが、実際に時間もなかった為、大人しく下がった。


カルナは扉を静かに締める。今の時刻は15時30分、移動までの時間を考えると、時間に余裕があるとは言えなかった。


「やるしかないのか」


カルナは、説明のつかない恐怖を覚えていた。理由も対処法も分からない。それを誤魔化すように、アルフレッドの下に走り出した。





都市の外__、晴天の空の下で、アルフレッドは考えていた。昨日の戦い。怪物。異世界への扉について。


「おそらくは、今日の異常気象であの怪物が出てくるでしょう」


オーファンが言う。その目はまっすぐにアルフレッドを見据えていた。


「えぇ、そう思います。あの怪物の手だけでさえ、あそこまで苦しめられた。あの怪物自体が出てくるとなれば、状況はかなり悪いです」


アルフレッドは小さな声で答える。オーファンは唸ると、頭を片手で抱え、考え込んだ。


「せめて、神力が使えれば勝ち目はあるのですが」


オーファンが言う。アルフレッドはそれに同意した。あの怪物と戦ったアルフレッドには分かる。あれには、物理の攻撃は全く効かないのだ。実際に殴る、蹴る、叩きつける__。様々な攻撃をしたアルフレッドだったが、ダメージは与えられてない。倒したのは、カルナのEマグナムなのだ。あの怪物が出てきた場合、カルナのEマグナムで少しずつダメージを与えていくしか、倒す方法は無いだろう__アルフレッドは、そう結論付けた。



「無いものは仕方ありません。少しでもあれば良いのですが、俺の場合……0ですから」


自傷気味にアルフレッドは言う。オーファンは、気まずそうに「そうですね」と答えた。



沈黙が流れる。アルフレッドは、どうしようもない不安に駆られていた。いくら、この世界を救おうと心に決めた所で、その力が無ければ意味がない。力があっても、それをどう使うか、どうすれば良いか分からなければ宝の持ち腐れだ。アルフレッドはそんな気持ちを紛らわす為に、岩の上に立ち、大きく背伸びをした。



そろそろ、隊長が戻ってくるだろう。そう思ったのと、同時だった__。




「東から、異様な力を感じます!異常気象です!こんな早い時間に何故!?」


オーファンが叫ぶ。2人には、詳しい時刻は分からないがおそらく15時30分になるかならないか、それぐらいだろう。まだ、空は青く、夕方にはまだ時間があるというのに、東の空は、異様に黒い雲に覆われていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ