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天界異世界課の天使?  作者: 切島直人
14/25

カルナとアルフレッド


「じゃあ、行くわ」


そう言って男隊員は、ほかの隊員達と朝食を食べた後、町を去っていった。カルナは、まだロウの家にいる為ここにはいなかったが、彼の姿が見えなくなるまで、アルフレッドは町の入口に立っていた。あの歩きの速さならば、おそらく夕方前にはアイールに着けるだろう。昨日の怪我の事で心配していたアルフレッドだったが、思いのほか元気そうでホッと胸をなでおろす。


「……さて、と」

アルフレッドは踵を返す。彼には、やらなければいけないことがあった。


彼が向かった先はロウの家、中には布団に寝ているカルナとそれを治療するロウがいるはずなのだが__。


バタバタと中で大きな音が鳴る。それに加えて、何やら言い争う声が聞こえてくる。アルフレッドは大きなため息を1つ吐いて、ロウの家の玄関の扉をノックした。全く返事は無く、音も声も止まらない。アルフレッドはガシガシと頭を掻いて中に足を踏みいれた。



「だから、お前さんその怪我でどこ行くつもりなんだ。その馬鹿げた体力と自己修復機能は認めるが、まだ何とか歩けるぐらいだろ?そんな状態で俺はお前さんを送り出す事は出来ん」

「あぁ、そうだな。確かに私は馬鹿だ。だからこそ私は行かねばならん。戦う事しか出来ないからだ。アンチは毎日出るんだぞ」

「戦うのは結構だが、その体じゃあ、まともに走ることすらままならないじゃねぇかって言ってんだ」

「走らなくても剣は振れる。Eマグナムの引き金は引ける」


アルフレッドはもう1回ため息を吐く。カルナの様子を見に来ていたのか女隊員が部屋の隅で震えている。そんなに怖かったのかとアルフレッドは心の中で彼女に同情した。


「あのー、カルナ隊長?」

「……なんだ?私は今、忙しいんだ。話なら後で__」

「休む事も大事な事だと思います。ただそれだと隊長は納得しないでしょう。だから、もし、仮にカルナ隊長の力が必要になった場合は__」


アルフレッドは、少し間を開ける。そして、カルナとロウを見つめて言った。


「俺が担いで走ります。俺が隊長を担いでの移動なら、都市アイールまで、おそらく1時間も掛からずに行けます」


「「……はあ?」」

ロウと女隊員が目を見開く。


「馬鹿を言うな坊主。ここからアイールまでは、40km程あるんだぞ。どんなに急いでも人間の足では2時間以上掛かる」

「そうよ!全力の馬並みの速さで走らないとアイールまでなんて着きっこないわ!」


2人はアルフレッドに猛反発する。しかし、その顔は真剣そのものの顔だった。その顔を見たカルナは、口角を吊り上げる。


「……信じていいんだな」

「もちろんです」


少し間が空いてカルナの口から出た疑問をアルフレッドは即答する。カルナは一言、「分かった」とだけ言うと、ロウに向き合った。


「特に違和感無く動けるようになるまでどれぐらい掛かる?」


カルナはロウに言った。それを聞いたロウは白髪をガリガリと掻き、答えた。


「あんま言いたくねぇが、お前さんの体力と自己修復機能は異常だ。朝飯と昼飯の後にシラキ草を飲んで、安静にしていればおそらく、昼の3時頃にはまともに動けるだろうよ。まぁ多少の違和感とかはあるかも知れんが」


ロウは心底嫌そうに言う。彼からしたら完治していない患者を送り出す事が我慢ならないのだろう。それに対してカルナは、ニヤリと笑みを浮かべる。


「十分だ」

彼女は短く答え、外に出かけようとした。


「ちょっ!どこに!」

アルフレッドは思わず彼女を引き止める。


「朝食を取ってくる」

そう言ってカルナはロウの家から出て行った。




時刻は午前10時頃__。アルフレッドは、バリトンの中の空き地のベンチに座っていた。すると、横に誰かが座ってくる。アルフレッドが横を見ると、そこには、カルナが座っていた。今のカルナは、体に負担をかけない為か、半袖の布の服と布のスカートのみを身につけている。薄い茶色の服の為、彼女の赤い髪はかなり映えた。それはまるで、彼女の心の中を表すように真っ赤だった。


鎧と口調と態度で損してるよなぁとアルフレッドは思った。いつもの固い鎧に身を包み、男勝りの口調と態度を思い出し、心の中で苦笑いを浮かべた。


「ん?どうした?急に、ぼ〜として」


カルナの一言で我に帰る。「なんでもないです」と言おうとして彼女の方を見るが、その言葉は彼の口から出なかった。

普段の固い鎧とは違って柔らかい布の服に包まれた彼女の体にアルフレッドは、少し見惚れてしまった。彼女は出るとこは出ていて引っ込む所は引っ込んでいる、スラリとした体をしていた。それを見て、アルフレッドは止まってしまったのだ。


「……さっきは、助かったな」


カルナが少し間を開けて言う。口調も少し柔らかく感じた。


「なんで、あんな口論をしてたんですか」


落ち着いてきたアルフレッドは、カルナに質問を投げかける。カルナはバツが悪そうに答えた。


「……正直わがままを言っている自覚はあった。私がこのまま戦場に向かった所で、善戦など出来ない。仲間の足を引っ張るだけ引っ張って死んでいくだろうと理解出来ていた」

「そこまで分かっているんなら__」

「始めはちょっと反抗しただけなんだ。『こんな状態でも戦う方法はある!』みたいな感じだ。そしたら予想以上に反感を食らってな。私も引っ込みがつかなくなってな。謝るタイミングを探したのだが、収拾がつかなくなった」


タハハと彼女が笑う。アルフレッドは正直、なんだこいつと言いかけたが、年齢は圧倒的に年下だし、と無理矢理言葉を飲み込み、自分を納得させた。仕事をしている身としては先輩なのだが。


「後で、謝りに行きましょう」

「あぁ、そうする」


カルナは短く答えた。



「ところでアルフレッド」


急に真剣な表情になったカルナが言う。

「昨日の話の続きだが」と続けた。

アルフレッドはついに来たかと思った。実は人間じゃありませんなんて、興味を持たない訳がない。彼は、この際正直に全て話そうと決めていた。何故なら昨日、アルフレッドがオーファンに相談しに行った時も『良いんじゃないですか?別にバレたらいけないという決まりも無いですし』と鼻歌まじりに言われたからである。アルフレッドは、深呼吸をした後に静かに話し始めた。


「確かに、俺はこの世界の住人ではありません。言ってしまえば、こういう世界を管理する天使と呼ばれる存在です」


アルフレッドは背中に汗をかき始めていた。冷静なフリをしつつも心の中は不安でいっぱいだった。


「言い方的に、ここじゃない世界がたくさんあるみたいな言い方だな。それにその天使様が何故、この世界のこの部隊にいるのかがわからないんだがな」

「そうですね……。この世界は、たくさんある世界のうちの1つにすぎません。そして、俺がこの世界に来たのは、ここ1ヶ月、毎日起こっている異常気象が、ここじゃない世界__異世界の影響を受けている可能性があった為です。その世界にあってはならないものを消去したり、整理したりするのが俺の本当の仕事になります」


その後もアルフレッドはカルナに一通りの説明をした。カルナは興味深そうに相槌を打ちながら聞いていた。時折、アルフレッドの頭の上から「その通りです!」だとか「その説明……100点です!」だとかオーファンが叫ぶ声が聞こえて来たが彼は完璧に無視をした。





「……という感じですかね」


説明を終えたアルフレッドは、ふぅと息を吐いた。説明を終えた頃には、太陽が真上に輝いている。もう昼か、と彼らは思った。




「あー、ちょっと待ってよー!!」


突然、アルフレッド達の前方から声が聞こえた。アルフレッド達は声のした方を見る。空き地の前には家が数軒並んでいるがその隙間を縫うように、子犬が出てきた。それを追うように女隊員が飛び出して来る。

子犬はスピードを上げてアルフレッド達の方に走って来る。そして、カルナに向かって跳んだ。


ビクリとカルナの体が硬直する。彼女は反射的に「キャア」と高い声を上げて自衛の為に顔の前に両腕を持ってきた。そして、子犬の体当たりをその腹で受け止めた。



数秒の沈黙__。その沈黙を破ったのは、カルナの腹に乗った子犬を回収した女隊員だった。


「カルナ隊長。今、キャアって言いました?」

「言ってない」


女隊員の言葉にカルナは真顔で答える。女隊員はギュウと子犬を抱きしめて言った。


「とても可愛かったです!ありがとうございました!」


女隊員は何故かお礼を言って去って行った。犬を追いかけていた理由も分からないままだった。アルフレッドは冷や汗をかきながらカルナを見る。


「……昼食だ」

カルナは赤くなった顔を伏せて隠したまま、その場を立ち去った。アルフレッドは、その場で少し考える。


「なんか妙だな」


カルナ隊長ならば、いくら怪我をしているとはいえ、あの子犬を避ける事ぐらい造作もない事だろう。しかし、彼女は避けなかった。しかも、反射的に自分を守るかのようなあの動き__。


そこまで考えた後、アルフレッドはカルナの後を追い、昼食を食べる事にした。


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