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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
97/133

第18話:いざ表舞台へ05

続く二戦目。


開幕は前回と同じ、シハラの牽制攻撃は空を切り、キリツメは後ろに下がっていく。

さらにそこからキリツメは遠距離攻撃を仕掛けてくる。

ここまで定石。十戦やったら八戦はこの流れになると思う。


ただ一つ違和感がある。

北森さんにしては、キリツメの攻撃に脅威が無くなっている。

一本目を制したことで僕のメンタルが向上したのか、または、読み切れずに負けた北森さんのメンタルが低下したのか。

それはわからないが、なぜかキリツメの位置に辿り着ける気がする。


前進するシハラの頭上を攻撃が飛び。

ジャンプするシハラの下を攻撃が通る。

ガードすることなく、シハラとキリツメの距離がどんどん縮まっていく。


あと一歩の所までやってきた。

ここまで来られると、キリツメは近距離攻撃で攻めを継続するか、ジャンプして裏に逃げるかの選択を迫られる。

が、ここで北森さんが取ったのは第三の選択。

シハラの着地に合わせて、発生が遅いガード不能技を出してきた。


ガムシャラにキリツメを捕まえに行っていたら、その攻撃を食らっていたかもしれない。

しかし、キリツメが逃げることも考えていた僕は、キリツメの動きがよく見えていた。

キリツメの初動を見て、僕は反射的に空中技を出して着地タイミングをずらす。


お互い技が届かなかったが、ガード不能技なだけあって向こうの硬直の方が長い。

シハラは牽制攻撃から突き飛ばす技を出して、キリツメを画面端へ追い込む。


キリツメの起き上がりに合わせて、低空ダッシュからの空中攻撃を重ね、キリツメを画面端に張り付ける。


こうなってしまっては、キリツメは反撃するのが難しい。

ジャンプで逃げられなくないが、下に回り込まれると一本目と同じ展開が待っているかもしれない。

ゲージがあれば仕切り直せるが、まだそこまで溜まっていない。

だから、シハラの攻撃を見切って無敵技を差し込むのが手っ取り早い。


故に、僕は罠を張った。

先ほどの空中攻撃をわざと高めに当てて、地上攻撃と連続ガードにならないようにした。

北森さんレベルなら、そこに反応して無敵技を差し込める。

それと、まだ序盤だから無理しない方がいいと、それまでは考えていたに違いない。


だけど、ここまでの悪い流れが頭のどこかに残っている。

すると、こう考え直すかもしれない。

"まだ序盤だから、リスクを取ってもいいかもしれない"と。


安定したプレイが売りの北森さんだが、こうも立て続けに攻められては安定もくそもない。

ペースを取り戻すなら、早い方がいい。


シハラが着地と同時に一番発生が遅い強攻撃のモーションに入ると、まるで何かに操られたのようにキリツメは無敵技をはずした。


一瞬遅れてシハラの攻撃が発生して、キリツメを切り裂く。

そこからまたダウンを奪い、今度は確実な起き攻めへと持ち込む。


そこから固めと見せかけて投げ。そして、空中コンボ。


ゲージは50%を超え、相手は画面端でダウン。

まさに理想的状況。


ここで何をするか?

僕はなんともう一度投げを選択した。


部活だったら、もしかしたら連続投げはマイナスポイントかもしれない。

でもここは違う。一番勝ちに繋がる行動を選択する場所。

連続投げはほとんどの人がやられたら嫌な気持ちになると思う。理由はうまく言えないけれど、なんかつまらなく感じる。

それはガチ勢も例外じゃないと思う。

しかも、プロを目指す者なら魅せるプレイも意識しなければならない。時には使用する事もあるだろうが乱発はできないので、選択肢の下の方にあるだろう。


僕は、自分がやられたら一番嫌な事で相手のガードを崩していく。

もちろん北森さんも警戒していただろう。

だが、キリツメの近距離攻撃は暴れるには発生が遅すぎる。投げと呼んであらかじめ出しておかないと間に合わない。

徹底的に、相手キャラの弱点をつく。


さすがにそのまま押し切れはしなかったが、ワンチャンスあれば倒しきれるだけのゲージを残せたので、思い切った攻めを続け、キリツメにダメージを負わせるのは難しいことではなかった。


「よしっ!」


ゲーム画面に大きく決着がついた事が表示されると、僕は小声で小さくガッツポーズを取った。


この総当たり戦で一回も勝てていなかった北森さんに、ようやく一勝できた。

わずかだが、ライジング出場への道が開けた気がする。


筐体の横から北森さんがやってきて、「今のはまいった」とだけ笑って言って去って行った。


まだ一勝。されど一勝。

今日は一日総当たり戦が続く。

ここで白星を増やして、チームのレギュラーを手に入れたい。


僕は、望みと可能性を胸に、対戦で溜まった熱を感じていた。

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