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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
48/133

第8話:ダブルアクティビティ05

「えっ?屋良さん今日は休みなんですか?」


月曜日の放課後、もうすぐ部活が始まるというのにまだ屋良さんがいないので箕内さんに聞いてみたところ、体調を崩して学校を休んでいた。


「そうなんだよ。季節の変わり目とはいえ、にぶいところがあるからなあいつは…」


箕内さんはやれやれと首を振った。


「そうでしたか」


「どうしたの?屋良に用事?」


「んまぁ、そんなところだったんですけど…」


相談したいことがあったなんて、ちょっと恥ずかしくて言えなかった。


「おー、あやしい。それってー、男同士でないとダメなやつー?」


箕内さんはにんまり笑いながら目を細め、僕の内情を探ろうと顔をゆっくり近づけてくる。

それがキスされそうな距離まで来るもんだから内心ハラハラする。

距離感が近いのは良い事ばかりではない。


「ち、違いますよ」


「本当にー?屋良は人気者だけど、そこらへんは疎いよ?」


「それってどこらへんですか?」


ここでようやく恋愛相談を期待されていることに感づいた。


「おそらく箕内さんが期待している内容じゃないですよ」


「そうなの?ふーん」


それでもまだ面白がっている様子。どうしたら満足してくれるだろうか?


なんて言おうか悩んでいると、ふと思うところがあった。

まず箕内さんに話してみるのもありなのでは?

こうやってよく茶化されるが、これで結構面倒見のいい人だ。

交流戦のお昼休みの時に、一人になってしまった僕にさり気なく話しかけてくれた事をよく覚えている。

真面目な話だと最初に知ってもらえれば、いいアドバイスが聞けるかもしれない。


「ちょ、ちょっと…」


「あ、なんですか?」


「それはこっちのセリフだよ。急に黙って人の顔じっと見るから」


少しおどおどしながら箕内さんは文句を言ってきた。


「すみません、ちょっと考え事をしてしまって」


人と話している最中に考え事をするようになるとは。

一ヶ月は長いのか短いのか。

劇的に変わった環境は、確実に僕を変えてきている。


「失礼な事じゃないでしょうね?」


「もちろんです。それで、さっきの話に戻るんですけど」


「お、なんだい」


「用っていうのは、えと、屋良さんに相談したいことがあったんです。部活についてなんですけど、よかったら箕内さんも聞いてくれませんか?」


「部活の相談ねぇ…なるほど」


なーんだ。と一瞬興味をなくしたようだったが、それでもまだ何かがひっかかる様子だった。


「別にいいけど、どうする?」


それはいつ?という意味だろう。

もうすぐ部活が始まるから、話をしている時間は無い。

となれば部活後になるが、部室とかに残れるのだろうか?


っていうか、それって部室で箕内さんと二人きりになるってことじゃ…。

なんか、ときめくものを感じる。

しかし、それはそれでちょっと気まずい。箕内さんは気にしなさそうだけど、なんか僕が気を使ってしまう。


などと考えていると、箕内さんの方から部活後を提案してきた。


「現内くんって、ちょっと帰りが遅くなっても大丈夫な人?」


「えっ、親に連絡すれば大丈夫だと思いますが…」


一瞬ドキリとしてしまった。


「相談したいことって、歩きながらでもできる内容?」


「歩きながらですか?あまり人には聞かれたくないですが、平気だと思います」


「よし。じゃあ部活が終わったら、一緒に屋良のお見舞いに行こう。そうすれば屋良に相談できるし、その道中に私も聞いてあげられる。屋良の家ってここから歩いて行けるんだよね」


ナイスアイデアと小さく言って、指を鳴らす真似を箕内さんはした。


「お見舞いついでに相談って、屋良さんは大丈夫なんですか?」


「きっと大丈夫だよ。昨日から寝てたみたいだから、もうほとんど治っているでしょ」


ちゃんと把握しているのか、それとも適当なのか、箕内さんは「それで決まりね」と言った。

そして、みんなの所へ行くと、屋良さんの代わりに部活を始めだした。


まぁ、たしかに早く相談できた方が僕にとってもいいんだけど。

病み上がりの人に相談するのはちょっと気が引けるなと、僕は思った。




屋良さんがいなくても部活は普通に始まり、何事もなく終わった。

僕は後片付けをしながら、これからどうすればいいのかそわそわしていた。

さっきまで部室にいたのに、肝心の箕内さんがいつの間にかいなくなっている。


「現内くん、お疲れさま」


「ネット対戦の方はランクアップできた?」


すると、花尾間さんと関泉さんが話かけてきた。

部活の後、この二人とちょっと雑談してから帰るのがいつの間にか恒例になっていた。


「お疲れさま。先週は用事があったからほとんどネット対戦できなかったよ」


「そうだったんだ。私達も別のゲームをやっていたら時間がなくなちゃった」


「ちょっとやるだけだったんだけどね」


そう言って二人は笑った。

どうやら、関泉さんが気になっていたカードゲームをダウンロードして二人で対戦してみたら、思いのほか面白くて長時間に及んでしまったらしい。


「へー、漫画雑誌の裏によく広告出しているから人気はあるんだなと思っていたけど」


「それでね。よかったら現内くんもやってみない?」


「いいかも、カードゲームなんて小学校以来だな」


僕も試しにダウンロードする気になったところで、箕内さんが部室に戻ってきた。


「現内くん、片付け終わった?」


部室のドアを開けたまま、中には入らずにそう聞いてきた。


「あ、もうすぐ終わります」


「おっし、それじゃいくよ」


もうすぐと言ったのに、箕内さんは手招きをしてくる。

別にやましいことはないのだが、これから一緒にどこかへ行こうとしている感じが恥ずかしい。


「ひょっとして、これから箕内さんとどこかへ行くの?」


さっそく関泉さんが鋭く質問してきた。


「ま、まぁそうなんだけど…」


なぜか、屋良さんのお見舞いとスッと言えなかった。

そのもやっとした感じをめざとく察知した箕内さんは、ささっとこちらにやってきて、僕の隣についた。


「ふふふ、ごめんね二人とも。今日はちょっと現内くんを借りていくわね」


箕内さんは見事に邪魔者役を演じきる。

この人は、僕とこの二人の間に波が立つと思っているのだろうか?

いや、単純にやりたかっただけだろう。


「は、はぁ」


と呆気にとられている二人を置いて、僕は引っ張られるように部室を出た。


「これでようやく二人きりね」


なんて言いながら、箕内さんはまだ続けている。


「勘弁してくださいよ」と僕はちょっと困り顔で言いながら、あの二人がどう思ったか気になっていた。

おそらくなんとも思っていないだろうけど、思ってくれたらいいな、なんてほんのちょっぴり期待した。

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