家族
「髪の色、瞳の色、その容姿……篷百合キリは霧、か。久しぶりね」
女性――クラウディアは片方の銃を霧さんの方へ向けたまま静かに呟いた。あれだけ激しく近距離で撃ち合ったというのに、目立つ傷はなく、一方霧さんの服は肩や袖、裾のあたりに被弾した痕が見て取れるが大きな出血はないようだ。
「(師匠……どうしてこんな組織の――)」
「弾の補充は済んだのかしら? なら続きを始めるわよ。もっとも」
カシャン、カシャンとクラウディアは手際よく両方の銃の弾倉を入れ替え、それを見て致し方なく、という風に霧さんも銃に弾を込めた。
「貴女が私に勝てたこと、一度もなかったでしょうけど」
そして俺の目の前で再び銃撃戦が始まる。今までは互角のように見えていた戦いだが、明らかにクラウディアの方が優勢だ。霧さんは相手の弾を避けるのに気を取られ上手く反撃できていない。一度も勝てたことがないというのも困ったことに嘘じゃないようだ。
「……風見さん、お願いあります」
「何? 内容をできるだけ短く頼む。今頭フルに使ってるから」
傍から論ちゃんの声。俺は霧さんの方から目を逸らさず返事をする。
「はい。今すぐここから――」
「あ、逃げろっていうお願いならお断りね」
ガッと論ちゃんに足を蹴られる。それでも俺はそちらの方を見ない。
「今ならまだ私たちと関係ある人と、思われてないはず。ここで死にたく、ないでしょう」
「もし本当に関係がなかったとしても逃げる気はしないな」
「想定外なのよぅ、キリ姉の師匠が出て来ること」
この声は漣ちゃんか。この双子、声質までほとんど同じだな。まあ、聞き分けられる程度には耳が慣れてきたか。
「今日ここに俺がいることも想定外なんだろ。案外重なるもんだね」
「――ふざけないで」
ぎゅっと腹あたりの服の布を掴まれた。そこで俺は霧さんの方から視線を論&漣の方へ移す。服を掴む二人の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。……これは軽くあしらいすぎたからか?
「どうして、分からない、ですか。貴方は、戦えないのに。だから」
「論ちゃん」
俺は膝を折って論ちゃんと視線を合わせる。小さい子と話すときはこうする――んだよな確か。
「言いたいことははっきり言わねーと、何も通じねえぞ」
「……これ以上」
二人の手に力がこもる。心の底から絞り出すような声で、論ちゃんは続けた。
「家族が目の前で死ぬの、見たく無い……です」
論ちゃんの目に浮かんでいた涙の粒が頬を伝い、床に落ちる。漣ちゃんの方も同じく、俺の服を掴んだまま涙をこぼした。
その言葉に、どれくらい彼女たちの思いが込められているのだろう。
これ以上という言葉が孕む孤独の影を、俺は知っている。
そして――
俺のことも家族、ね。もう全然無関係ではないじゃないか。
大人びていても、やはり中身は子どもか。俺は二人の頭をクシャクシャと撫でる。
「だったらなおさら、霧さんを助けねえとな」
「でも、漣と論姉じゃ敵わないよ……」
「そこは俺を頼ってくれよ。ようやく目も慣れてきたし、極夜の馬鹿野郎に渡されたコイツもある。時間もないし、手短に説明するが最初に二人にお願いがある」
俺は涙を拭く二人の顔を交互に見、そして言う。
「二回、俺を思いっきり殴ってくれ」
ちょっと短いかなー^^;
でも区切りがいいのはこの辺なのでここでいったん投稿。
次語り手変えないと難しいなー第三者視点あまり使いたくなかったけど仕方ないか。
次の投稿は少し遅くなるかも。




