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十二連世界の『最強』  作者: Red_stone
3章 前哨戦
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第9話 吸血神祖との再会

私が来たのは廻の世界。

ここは滅びし全ての文明が集う場所。

ここには世界の全ての知識が記されていると言われている。

しかし私を含めて古代文字を読める人間はいない。


文字には魔術的処理が施されており、解読は不可能。

ただし、描かれた絵から書かれた内容の一部を推測することはできる。

ただ情報が限定的過ぎて、あまり役には立たない。

それも一興かもしれないが。


私が会いに来たのは『吸血姫神祖』リリス・ツァバト・ルマニア、幼女だ。

彼女が、空気組成がほぼ真空であるこの世界にいるのは、遺跡を調べるためなどではなく、遺跡にあるアイテムを集めているからだ。

ここには強力な武器が眠っている遺跡がいくつかある。

使えなくなってしまったもの、使い方がわからないものばかりではあるが。


リリスはレベル200。

空気も食事も必要ないからこそ、この世界で生きてゆける。

真空の世界では、他の世界にいけるようにするアイテムでは対処できない。

アレはあくまで毒消しで、酸素は作れない。




リリスの居場所はアイテム『八卦天秤』でわかる。

八卦天秤は簡単に言えば、魔力レーダーだ。

大きな魔力しか検知できない欠点があるが、元々は占い用だ。


しかし遠いな。

まともに歩いていこうとすれば1月はかかる距離だ。

そこでも140レベルくらいの深度だ。


それでも心配だ。

リリスは長距離殲滅魔法が使えるが、代わりに1対1ではレベル120クラスでも苦戦するスペックの持ち主だ。

リリスは虚弱体質で、異常なほどに魔力以外が弱い。

長距離殲滅魔法という掟破りができる代わりのデメリットだ。

それでも、ゲーム中で人形のように非現実的な彼女を愛用するプレイヤー数多くいた。


魔法攻撃力は高すぎるほどに高いが、代わりに魔法の発動にかかる時間は最低5秒もかかるほどの遅さだ。

その上、術者は動けないと言う制約まであるのだから、1対1の戦いでは絶望的なほどのデメリット。

その代わりに高い再生能力を持っていて、一撃で殺されない限り死ぬことはないがそれはあまり救いにはならない。

殺され続ける間に好機を待つという、マゾ的な戦法を取らざるを得ないのだ。



さて、ポーターを探す。

ポーターは転移装置のことだ。

転移符は転移先に特殊な処理をされた魔法陣を維持する必要があるので、大都市以外に飛ぶためには使えない。

しかしこの世界には、生き残っているポーターは無数に点在する。

リリスの住んでいる遺跡はわかっているので、ポーターさえ見つければすぐに会いに行ける。



それにしても退屈だ。

ここら辺には魔物は少ない。

魔物と言っても、出てくるのは魔物化した警備ロボットかまだ生きている警備ロボットくらいだ。

レーザーなどの長距離攻撃くらいしか厄介な要素はない雑魚ばかりだ。

ボスのようなモンスターもいないし。


さて、ポーターを見つけた。


近くの壁に描かれていたのは



尾を飲み込む蛇


龍に飲まれる人


笛を鳴らす天使



抽象的過ぎて訳がわからない。

もっとも、こういうものは何かがわかった後につじつまを合わせながら推測していくものだけど。

ま、なんにせよ何を表しているか定かではない壁画を眺めても何にもならない。


魔力供給源は遥か昔に失われているので、魔力を入れてやらねばポーターは動かない。

ポーターに限らず、他に自分の魔力を渡すときの魔力効率は決して高いものではない。

このポーターは2割ほどか。

つまり、リリスのいる奥地に行くためには私の魔力の半分を注ぐ必要がある。

シシュフォスへの攻撃で使った全力攻撃と同程度の魔力を使っていたとなれば、どれだけ多くの魔力が必要とされるかわかるだろう。

レベル100以下ではどれだけ近くに飛ぼうとしていても使用不可能だ。


装置に魔力を流し込むと、空中にディスプレイが現れる。

ディスプレイに浮かんだ文字は古代文字であるから、もちろん読めるわけがない。

それでも古代文字を記号と見れば、使うことだけは可能だ。

行き先を入力して決定、転移する。

もっともそれは彼にとって馴染み深いから転移と書いてあると予想したのであって、実際は転送と書かれていたのだが。




「む」


着いた先ではいきなり、魔力の波動が荒れていた。

............これはレベル200クラスの戦闘だ。


たまにこういうことがある。

そこにはいないはずの強い魔物がボスとなって、その場所を陣取ることが。

こんなイベントは知らないが、この世界に来るきっかけとなったイベントだって知らないものだった。

この世界はクリア後の世界。

何が起ころうとも不思議ではない。


おそらく一人はリリス、もう一つの反応は魔物化した遺跡の守護者か。

機械と魔物両方の性質を宿した守護者は厄介だ。

硬くて、速くて、冷徹であることは単純な強さとしては最上位に位置する。

そしてリリスの戦闘タイプは長距離型だ。


倒すには、超長距離から反撃される前に叩き潰すしか取れる方法はない。

近づかれた時点で負けは確定している。

しかし、この音はまともに相対して戦っている音だ。

ならばリリスは相手と戦えているはずがない。

何度も何度もリリスは致命傷を負っているはずだ。


一刻も早く戦闘に参加しなくてはならない。

位置は、下。


『破滅する冥王の嘆き』


遺跡をまともに攻略する時間はない。

だから、床を殴って崩落させる。

たどり着くころには魔力は空だろうが、そんなことにはかまっていられない。


この遺跡のフロアの高さはかなり高い。

おそらくは100mほどか。

自由落下の時間がわずらわしいが、その間に次の魔法を用意する。


1階

まだ遠い。


2階

もう少し。


3階

やっと会えた。

しかし魔法は使えて後一度か。

魔力が残るとは、運が良かった。


ぐしゃり、と湿った音が聞こえてリリスが殴り飛ばされる。

敵は人型の機械兵タイプ。

超高速で動き、相手を翻弄する戦法。

リリスにとって最も苦手とする敵。

再生しながら、延々と隙を待つことしかできないリリスにとっては鬼門だ。


「大丈夫か?リリス」


「うん。平気だよ、ルシフェ」


超再生能力を持つリリスは死んでなければ、どんな怪我だろうと1,2秒かからずに治せる。

だから死んでなければ、無事だ。

だが回復するから殴られても平気だということは、絶対にない。

不死者であろうと、痛みは感じる。


よくもリリスを、ガラスの様に繊細で小さな彼女を散々殴ってくれたな。

機械人形風情が、叩き潰してやる。


「やるぞ。リリス」


「うん。わかったよ、ルシフェ」


一発しか使えない魔法を早々に使うわけにはいかない。

だから魔法なしで戦う。

今回私は囮役。

攻撃を受け止めることができるように、槍を取り出す。


一瞬で機械人形に近づき、槍で薙ぎ払う。

吹っ飛ぶ。

わざと吹き飛ばされてダメージを軽減しやがった。

しかしシシュフォスとの死闘を経験した私にとって、レベル200のボスモンスターなど雑魚と変わりはしない。


着地した直後にリリスを狙って走る。

戦術として弱いやつから狙うのは当然だ。

しかしそれは歴然とした戦力差がなければ、の話だ。

お前にできるのは逃げることくらいしかないんだよ。


先回りして槍で相手の動きを遮る。


機械人形の攻撃を槍で全てさばく。

この程度なら避けるまでもないな。

とはいっても、さすがに機械は耐久力が高い。

力を込めた一撃でも倒せない。

私の攻撃なら、な。


『聖刻召還・火竜の息吹』


リリスの秘術が完成した。

リリスの秘術は発動までに時間がかかるため、敵の足止め役が必要だ。

それもリリスは動くことができない制約まである。

それだけの欠陥品だけあって、威力も効果範囲も絶大なものを誇る。


リリスは聖刻印の秘術によって虚無の魔力を引き出し、イメージにより指向性を与え、竜の姿と火の魔力を現出させる。

私の身長の3倍はある火の塊が襲ってくる。

私はこんな攻撃を喰らいはしないことがわかってるからこその躊躇のない攻撃だ。


槍の石突を使い機械人形を火竜に向かって飛ばす。


機械人形は火竜に飲み込まれて焼失。


次の瞬間、私は火竜の直線状から退避している。

いかに私と言えどアレを喰らったらまずい。

ま、私なら簡単によけられるし、そもそも発動させもしないけど。


意外とあっけなかったな。

レベル200のボスモンスターも。

リリス一人では逃げられるかさえ怪しかったが。

というより延々とリンチされ続けていたようだけど。


「さて、リリス。お目当てのものは手に入ったか?」


「うん。これ。上げる」


アクセサリーや武器の類か。

いつもこの子はこういうものをくれる。

ゲームではこの子だけ好感度が明らかに高かった。

もう主人公以外のことは目に入らない勢いで尽くしていた。

私はリリスを1度裏切ったと言うのに健気な事だ。

もしかしたら裏切られたと言う自覚がないのかもしれない。

私が囮にして見捨てたせいでどれほどの痛みを味わったのか、考えたくもないほどだろうに。


「ああ、ありがとう」


「えへ。ルシフェが喜んでくれてよかった」


満面の笑みで応えてくれる。

この子に対しての罪悪感はあるけど、やはり遠ざけることはできないな。


ここまで良い子だと恋をしそうになってしまうよ。

この子の実年齢はともかく見た目は完全に幼女どころか幼稚園児で、ついさっき失恋したばかりなのに。

実年齢は私と同じくらいらしいが、この子はそんなものに興味はないらしく数えてすらいない様子だった。

ああ、そういえば私も実年齢を調べるために、本家のキメラ作成記録を調べたっけ。

......どうやら同じ穴の狢のようだ。


この子は私のことをどう思っているんだろう?

聞いてみたい気もするけど、後戻りのできないところまで行ってしまいそうだ。

さすがに私と言えど、外見がここまで幼い子供を妻にする気は起きない.....はずだ。


少なくともこの子は私に好意を抱いている。

それがどのような種類のものかは知らないけど、私以外のものに興味はあまりなさそうに見える。

私が一緒にいないときは、こうして私の興味の引きそうなものを探し回っている。

たぶん選択肢を失敗すると、ヤンデレルートに突入すると思う。


だからと言って、私はこの子に恐怖したりはしない。

どのような結末が待っていようと私は私として生きるだけだ。

この子がヤンデレにならないように気をつけているほど、私は暇ではない。


この子が変な道に行かないよう祈っておこう。

別に数秒程度で済む。




ところで、この遺跡の先には何が待っているのかな?

ボスモンスターがいると言うことは、今この遺跡は特別な状態にあると言うことだ。

何か限定アイテムが手に入るかもしれない。


「奥は行ったか?」


「まだだよ。これから行くところ。ルシフェが壊してきた階層はクリアしたけど」


「なら、行くか」


「あの、ルシフェ。着いていってもいい?」


「もちろん。一緒にいよう」


「一緒にいてもいいの?えへへ。うれしいな」


癒される。

この子を守ってあげたくなる。

今さっき体中の骨を折られて、一瞬で再生していたから今更だけど。


適当に道を選んで進むと、そこには扉が。


「解除コードは持っているか?」


「持ってないよ。ここまで扉、壊してきたし」


遺跡には鍵のついた扉なんてほとんどない。

大抵は電子ロックだ。

ゲーム中は遺跡内のどこかにパスワードが書かれてあって、それを入力して開いていた。

もちろん電子ロックを解除するスキルなど私は持ってないから、正攻法で開くしかない。


しかし、パスワードを探すのはまだるっこしい。

そして、ここはゲームではない。

だから扉は蹴り壊して進む。


それが、この世界での遺跡の進み方。


いくつかの扉を蹴り壊して進んでいると敵の大軍に出くわした。

魔力を帯びて仲間を複製する機械人形が生まれることがあるのでこのような事態はまれに良くある。

レベルは160程度か。


リリスは腕力がないので武器は扱えない。

それはもう、まともに武器を振るうことすらできないレベルだ。

さすがはゲームキャラ中一番扱いづらいキャラだ。


このような場合は私一人で殲滅するにかぎる。

この子は私ごと広範囲を吹き飛ばすのは嫌がるから。

.......自分の体はどこまで破壊されようと気にしないくせに。


”次元の鍵”から一瞬で鎌を引き抜く。

鎌を振りかぶり一気に5体ほどの首を取る。

更に回転して3体。

そこからは鎌を投げる。

鎌は一気に敵を巻き込みながら破壊していく。


これだ。

敵を殲滅していくのは気持ちがいい。

戦闘の高揚感に身を任せる。


敵は動きが鈍く部屋も広くはない。

良い的だ。


嘲笑しながら、敵の攻撃を軽々とかわす。


さらに鎌を取り出す。


投げる。


取り出す。


投げる。


取り出す。


投げる。


最後の一体の攻撃を後ろも見ずに避ける。

その動作に連動し鎌で切り裂く。


うん、次元の鍵は便利だ。

一瞬で武器を取り出せる。

入れられるアイテムに大きさの制限はなく、重さも感じない。

強度もかなりある。

武器だって大量に入れておける。

投擲用の鎌とか槍は99本ずつ用意してある。


さすが次元の鍵はイラ家の初代から伝わる伝統の品だけある。

ゲームではいろいろと面倒くさいクエストをしてグレードを上げていったものだが、この世界では初めからこうだったという設定になっている。

こんなものがいくつもあっては困るだろうが、ゲームとこの世界の現実が食い違っている様を見せ付けられるのは少々困った。


ま、それもままならぬこと。

どうしようもならないならば、その中でやっていくしかない。

ゲームと現実の食い違いは自分で調整していくしかない。


キャラ的に失敗してもごまかせるから楽と言えば楽だ。

威嚇して相手を引かせることもできる。

対策は万全だ。




接近戦に関しては私はエキスパートだ。

しかし長距離攻撃手段を持っていないというのはいただけない。

ゆえに鎌を投げる戦術は遠距離攻撃魔法はないが腕力はある私にとっては適していると言える。

鎌を量産する金もある。


ただこの完璧な戦法にも難点が一つ。

壁に突き刺さった鎌を一つ一つ抜いていくのは私だということだ。

リリスが何も言わず手伝ってくれるのはうれしいが、虚しい。



鎌の回収作業を終えて、奥へと進む。


この胸の中にくすぶる気持ちは一体何なんだろう?


真ヒロインは幼女でした。

幼稚園児くらいの身長で、更に吸血鬼でも成長する可能性はある、はず?


リリスは、はっきりと主人公に恋愛感情を抱いているわけではありません。

しかし、依存はしています。

主人公が死んだら、絶望の余りに何をすることもできなくなるでしょう。


お人形のように小さくて、可憐で、美しい幼女との生活をしてみたいですか?

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