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未完の英雄   作者: TKN
1/7

序章「船出」 第1話 黒の騎士と赤の騎士

始めまして、TKNです。まだ物書きを始めて間もないですが、宜しくお願いします。今回投稿しましたのがも初作となります。


ストーリーの主軸は、「成長」

 作品に対しての課題は、

・王道である事。

 王道であるが故の楽しさ・懐かしさを創り出す事。

・盛り上げる所、盛り下げる所をはっきりとメリハリをつける事。

・キャラクターに人間臭さを伴わせる事。

・神話等、使い古された広く理解のある単語をあえて使用し、

  広く理解されているが故に、

 見落とされがちな文献を用い。

  その使い古された物を新しく見せる事。

・そして最も大事な事。子供を対象とする為。

  決して悪い影響を、読み手に与えてはならないと言う事。


以上を課題として、創り上げて参ります。

 でわ、お暇でしたら、どうぞお茶とお菓子のお供にでも。



追記と変更 12/13(日)

 前書きの変更及び、投稿している全話の誤字脱字の修正。

 キャラクターの発言の手直し。

ストーリーに関しては一切手を触れておりません。




詩人と、小さく愛らしい赤子を抱えた騎士が出会う。

 騎士は言う。戦で私が倒れた時、私の意志をこの子に伝えて欲しいと。 

 詩人は言う。戦で貴方が倒れた時、貴方の遺志を伝えましょうと。

騎士は、眠る我が子に教える様に、こう囁いた。

       我、心護る故に我在り…  と。

静かに笑む詩人は、静かにその時を待ち続けた。

今はまだ、何も知らず眠る赤子の詩に思いをはせて。




眩暈がする程の血の臭い。

あちこちから、耳元に付き纏う声ならぬ願い。


殺してくれ…。


戦場。 渦中に二人の騎士。

此方、真紅の鎧を纏う小柄な騎士。ベルゼア=レッドノート

彼方、漆黒の鎧を纏う大柄な騎士。ガラテア=ヴァルテス


互いの存在を認識するや否や、じりじりと盾を構え間合いを詰める。

互いの剣先が届き。出方を伺うかの様に、両者は睨み合う。


「久しいな。ベルゼア。」

漆黒の鎧を纏う騎士、ガラテア。

 懐かしむ様な目で盾を構えたままベルゼアに語りかけた。


「多くを語る必要はあるまい。剣を捧げた国の為、いざ。」

そう、ベルゼアが言うと同時に、互いの剣と剣がぶつかり合い火花を散らす。


幾度か、剣を弾き合うと同時に身を引いた。


「その小柄な体の、一体どこにそれ程の力があるのか。」

ガラテアがそう言うと、不敵な笑みを浮かべ、ベルゼアがこう答える。


「力ではない、技だ。 貴公こそ、見掛けに寄らず機敏な奴め。」


再び両者は間合いを縮め、互いの剣を激しく打ち合わせ力比べをするかの如く、

 重なった剣を押し合った。


「力だけでは、勝てぬからな。」

ガラテアは声を発すると同時に力を抜き、ベルゼアの構えを大きく前に崩し、

 頭上から大きく剣を振り下ろす。


崩れるベルゼア、剣を振り下ろすガラテア。

 崩れた体勢で盾を構え、ガラテアの剣を受け流しガラテアに体当たりをし、

 間合いを取り直すベルゼア。


「似合わぬ動きをする奴だ。」

ベルゼアはガラテアを睨めつける。

「貴公から学んだ事だ。」

ガラテアは不敵な笑みを浮べる。


再び間合いを縮め、互いの剣が幾度も重なり火花を散らす。






少し、肌寒さを感じる朝日の木漏れ日が差す、とある寝室。


「父上。」


激しい鍔迫り合いの音で、一人の少女は目を覚ます。


「夢…か。」


ぽつりと、寂しそうに溜息を漏らした8歳の少女。フォルゼア=レッドノート。

地に届くか、届かないか長く美しい真紅の髪に、真紅の眼の少女。


暫し、まだ眠気が取れない表情で、目を擦りつつ彼女は窓の外を見る。

窓の外に見えるは、一際大きい屋敷。

「ガラテア…」

まだ幼い少女に似つかわしくない眼差し。恨みの篭った低い声。


フォルゼアは、寝室の隅に置かれている傷ついた一令の鎧の前に立つ。

彼女の体が見えなくなるような、真紅の鎧が置かれていた。

「父上、仇は必ず。」

小さな手を小さな胸に当て、静かに目を閉じ、そう呟いた。


夢の続き、そう。彼女の父。ベルゼアはガラテアとの戦いに敗れ死んだのだ。

そして、ベルゼアが護ってきた国もガラテアの功労により、ガラテアの国の物となった。

その後ガラテアは、莫大な恩賞を受け、そして攻め落とした国。

それもベルゼアの娘のいる傍に住み始める。


ガラテアの屋敷の前に、小さい真紅の鎧を纏った少女が立つ。

待っていたと言わんばかりに、隻腕の大男。ガラテアが門を開き立っている。


そう、彼はベルゼアとの戦いで、利き腕を失い、ベルゼアに勝利し命は在ったものの、

騎士生命はその時に死んでいた。


何も言わず少女は、身に余る重い鎧と剣を持て余し、よたつきながらも、

剣を引きずりガラテアに向かい、斬りかかる。


その弱々しい挙動に反して、その目・その表情から生まれるその気迫。

並みの大人ならば気圧される程の物であった。

然し、ガラテアは眉一つ動かさず、剣の腹でフォルゼアを弾き飛ばす。

大きく飛ばされたフォルゼアは、後ろに生えていた木に背中から激しく激突する。


衝撃は彼女の体に伝わり、その場で四つん這いになり激しく咳き込む。

咳き込むフォルゼアに、大きな影が一つ落ちる。


瞬間、腹部を強く蹴り上げられたフォルゼアの体は、大きく宙に浮く。

既に気絶していても可笑しくない衝撃にも関わらず、少女の目はガラテアを捉えていた。


浮かされた体を翻し、落下の勢いに任せ握り締めていた剣をガラテアの頭上から振り下ろす。


取った。と、勝利を確信した瞬間。剣の腹で斬り払われたフォルゼアは意識を失う。

気絶したフォルゼアを片手で拾い上げ、肩に乗せ、ガラテアは彼女の屋敷の前へと連れてゆく。

屋敷の門の前に、メイド服を着た白髪を結った優しそうな老婆が心配そうに待っていた。


「ガラテア様。いつも申し訳御座いません。」

深々と頭を下げる老婆に、ガラテアは軽く左手を前に出す。

「構わぬ。この娘の父との約束を果たしているだけだ。

それよりも、食事をしっかりと取らせているのかな。

 日を増すごとに体が軽くなっているようだが。」


心配そうにガラテアは、肩に乗せているフォルゼアを見る。

その表情は、子供に対し躊躇なく攻撃をしていた者とは思えぬ程。穏やかであった。


「それが…最近食事の時間も割く程、剣の稽古をなされていまして。」

申し訳なさそうに、老婆はそう返す。

「ふむ。体を作らねば戦う以前の問題なのだが。ましてや女の身ならば尚の事。」

白髪の混じった黒いヒゲを蓄えた顎に、軽く左手を当てて考え込む。

そして思いついたかのようにこう言う。


「こうしよう。この娘に伝えてくれ。 食事を取らねば永遠に父の仇は討てない。と。」

その言葉に老婆は、少し怒りにも似た声を上げる。

「それはなりません。ガラテア様は確かに旦那様の命を奪いました。

然しそれは、国と言う大義の名の下での戦い。貴方様に罪などどこにありましょうか。」

老婆は一歩前に歩み出て更に言葉を連ねる。

「更にはガラテア様、亡き旦那様の意思を継ぎこの国と、

旦那様の残されたフォルゼア様を護ってくださっておいでではないですか。

そのような偉大な英雄に、非難を浴びせる様な真似を、お嬢様にさせたくありません。」


暫し、目を閉じたガラテアは、こう答えた。

「良い。このままでは、ベルゼアとの約束を違える事になる。

私にとって、幾千幾万の非難を浴びるよりも、

国を守り抜いて死んでいった騎士との約束。

その、ただ一つの約束を違える事が何よりも、私は怖いのだ。」


その言葉に、老婆は目を丸くし、深く・深く頭を下げた。

「申し訳御座いません。私の様な一介の使用人が出過ぎた口を・・・」

老婆の言葉をガラテアの手が遮る。


「良い。私を思っての事。感謝はすれど、それ以外の感情は持ち合わせぬ。」

そういうと、肩に乗せていたフォルゼアを地に置き、老婆に一礼をする。


「さて、少々話しが長くなったな。この娘に今、気が付かれては厄介だろう。」


そういうと、その場を背にし、去るガラテア。三度深く頭を下げる老婆。


そして・・・。 二人から見えない位置で、少女は地面の砂を強く握り締め、

 砂の混じった血の味を噛みしめていた。


8才にして少女は知る。

己の中の、負の感情に負けていた心の弱さに。

騎士足る者の在り方を。

それからというもの、彼女の中に在った負の感情一切が浄化され、


ただ一つ、亡き父の様に・ガラテアの様に、身も心も強くなりたい。

 その一心でガラテアに悟られない様に、同じ事を繰り返し5年の歳月が過ぎた。





「騎士養成学院、首席。フォルゼア=レッドノート。前へ。」


この国に在る、騎士を育成する学院。その中にある建造物の壇上に立つ、ガラテア。

そう、彼は騎士生命が絶たれてから、騎士を育てる事に従事していた。

そして、その卒業式。首席として呼ばれた名は、フォルゼア。


フォルゼアは、静かに壇上に上がり、ガラテアの前に跪く。

跪くフォルゼア。彼女の額に剣先を突き付けるガラテア。


「皇帝、ベイグラン=ビグラウス陛下の名の下に、

領主ガラテア=ヴァルテスが今この時より、

フォルゼア=レッドノートを筆頭とする卒業生諸君にに騎士の称号を与える。」


沸き起こる歓声、空に向けて放たれる祝砲。

剣を引き、ガラテアは、更に言葉を連ねる。


「各自、練磨を絶やさず。また、騎士の本質を見誤らぬ様、精進する事。

願わくば、この者達の中に次代の英雄が生まれん事を。」


再び沸き起こる歓声。静かに立ち上がるフォルゼア。

そこへ一振りの剣が運ばれてくる。

その一振りの剣をガラテアが手に取り、フォルゼアに差し出す。


「受け取りなさい。皇帝陛下からの君へのお心遣いだ。」

その剣は、大小様々な宝石が埋め込まれた煌びやかなる麗剣であった。

フォルゼアは、その剣を両手で受け取ると、ガラテアに一礼をし、壇上を降りる。


フォルゼアが席に戻るのを確認したガラテアは卒業式終了を宣言する。


卒業生達が賑やかに出て行く様を、ガラテアは最後まで見送る。

然し、一人残っているフォルゼアにすぐに気がついた。

ガラテアは、冷たい言葉で彼女に問う。


「どうした。娘。式は終了したぞ。」


その言葉が終わるや否や、彼女は頂いた剣を抜く。

綺麗に整列された椅子を弾き飛ばし、一気に壇上へと駆け上がり、ガラテアに剣を振り下ろした。


周囲に居た、騎士達が慌てて取り押さえようと駆け寄る。

左手で剣を抜き、フォルゼアの剣を軽々と受け止め下へと弾き飛ばし、騎士達を止める。

「良い。好きにさせてやれ。」


再び体勢を整え、剣を胸元に引き付け、柄を強く握り締め壇上に駆け上がるフォルゼア。


黒いフランベルジュを煌かせ、壇上より駆け下りるガラテア。


一閃。


互いが壇上の階段を駆け抜け、すれ違い、動きが止まる。

ガラテアの首元に僅かに、血の筋が走り。黒い剣を金属音と共に鞘に納めた。


「我が剣技、鋼割り。覚えておけい。」

そう、ガラテアが言うと、フォルゼアの鎧の胴の一部が砕け、階段から転げ落ちる。

転げ落ちるフォルゼアを抱きとめるガラテア。

その表情は、子の成長を喜ぶ父の様でもあった。


「騎士になったからといって、仇を取れるとでも思ったか? 馬鹿者が。」


辛うじて意識があるのに気づいた、ガラテアは冷徹を装い彼女の、憎しみの対象になろうとする。


それに対し、

目を背けガラテアの大きな腕を振り払い、腹部を押さえながらその場を力無く去るフォルゼア。


ふらふらと去る彼女の背中をガラテアは見送り、小さく・小さく呟いた。

「ベルゼアよ、もうすぐ貴様の元へ行けそうだ。」

フォルゼアの剣筋に何を見たのか、うっすらと血の滲んだ首元を、嬉しそうに左手で撫でる。



それから更に、2年の月日が流れた。



血の臭いが漂う戦場。 一個騎士団の先頭にて、剣を掲げ大声を挙げる真紅の鎧を纏った少女。


「守護騎士団。進撃開始。敵陣形をかき乱せ。」


騎士の称号を得てから、

幾度の防衛戦にて、功績を上げ続け僅か2年で騎士団長にまで上り詰めたフォルゼアがそこに居た。


進軍遅く、フォルゼアを先頭にさながら溶岩がゆっくりとあらゆる障害を飲み込むかの様に、

敵陣に侵食し、陣形をかき乱す。


鉄壁を誇る守護騎士団第二隊。通称。 赤の騎士団。

その防御力は比類無く、それを活かす鉄壁の進撃。

後の戦術家は語る。 溶岩を止める術が無い様に、平地では彼の進行もまた止める術は無い。と。


かき乱される陣形。その後方から挟む様に二つ目の騎士団が現れる。

かき乱された敵陣の後方より、太く、低く・力強い大声を挙げる黒い鎧を纏う騎士。ガラテア。


「陣形は乱れた。今こそ勝機。命すらも剣に代えよ。突貫。」

フォルゼアが戦場に出る様になり、彼もまた戦場に戻ったのだ。


圧倒的な攻撃力を誇る守護騎士団第一隊。通称。黒の騎士団。


赤の騎士団とは対照的に、その進撃は森を焼き尽くす烈火の如き速さで敵陣に侵攻する。

陣形を乱され、敵の騎士達は混乱。あるいは逃げ出す者も居た。


「逃げ出す者は手をかけるな。彼らにもまた待つべき者と場所がある。」

ガラテアは大声を挙げた。


その一言が決定打となり、侵攻してきた敵軍が撤退を始める。

そして、武器を高らかに掲げ歓喜とも、雄叫びともとれる声を持って防衛戦は幕を閉じる。

互いの肩を抱き合い、腕を打ち合わせ勝ち鬨を挙げる騎士達の中。

ガラテアは、フォルゼアの所に歩み寄る。


「見事だ。防御を高め。それを戦場にていかんなく発揮させるとはな。

知っているか?娘。 貴様を恐れる敵国が付けた貴様の呼び名を。」


それに我知らずと首を傾げるフォルゼア。

「ふ。だろうな。貴様は剣以外には目もくれない。戦馬鹿だからな。」

その言葉に、眉間にシワを寄せ、不機嫌な視線をガラテアに送る。


「そう怒るな。これは褒め言葉だ。動きだけでなく感まで鈍そうだな。

まぁ、その呼び名だが・・・・」


ガラテアが黒いフランベルジュを高く掲げると、周囲に居た騎士達が一斉に視線を向ける。


「敵国が恐れ付けた名、この国を護りし鉄壁なる一枚の盾、知らぬ者はおるまい。

然しながら、この戦馬鹿は知らぬ様だ。

皆の者、最後の勝ち鬨として、この戦馬鹿に教えてやるが良い。」


低く太い声を張り上げると同時に、耳を劈く様な声が空に届く。



イージス<イージスの盾> と。





フォルゼアは数え切れない程の功績を挙げ、

大陸に知らぬ者無しと謳われる死神ガラテアと比肩される程になる。


国の子供達の騎士ごっこ。死神ガラテアかイージスか。どちらが強いか口喧嘩。

そんな子供達を見て、一人の吟遊詩人がこう謳う。


昔・昔。遥か昔。 破滅を招く黒き魔剣、再生を授ける白き聖剣。

彼の剣、意思持つ剣。 

再生のクラウ・ソラス。持つ者に、再生と希望を。振るえば枯れ果てた大地が花開く。

破滅のソウル・イーター。持つ者に、破滅と絶望を。振るえば豊穣たる大地が朽ち果てる。


どちらが強い・どちらが強い。二つの剣が二人の騎士に機会を与えた終わり無き戦い。


破滅の剣が地を枯らせ、再生の剣が、地を花開かせる。

繰り返し・繰り返し枯れ果てては咲き乱れ。終にその決着は付かず、二人の騎士は息絶えた。




その詩に、子供達は目を輝かせ続きを期待する声を上げる。

吟遊詩人は、笑いながら子供達に答える。


彼等の戦いに終わりは無いのだよ。と。


その言葉に、子供達は不満の声を上げる。

吟遊詩人は遠い空を見上げ、こう言ってその場を去っていった。


「あ、でも。近い内に、その結末を唄えるかも知れませんね。」



第1話 黒の騎士と赤の騎士。最後まで読んで頂きありがとうございます。

 詩と物語を一つに絡ませる。

先ずは、この序章でそれを覚えようと、作成したものです。

 批評などを頂ければ大変嬉しく思います。

こちらは、反骨精神の塊みたいな性格をしていますので、

 突っ伏し、感謝こそすれ、

 間違っても逆ギレを起こしたりは致しません。


  では、ありがとうございました。

 

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