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Episode 10 命がけの触れ合い

~語り手と語り手の竜~







そう、彼じゃ。彼がワシら平和軍の希望の光となったのじゃ!グォッホッゴッホ!!!








まぁ落ち着きなよ

血圧上がるよ?







年寄り扱いするでない












さて、おじいちゃんは置いといて。

ウィル少年はこれからグロスト、そしてゴードスと、繋がりを重ねていくことになる。


まずはウィルが15歳になるまでの5年間を見ていこうか。




この5年間、この中でウィルはたった一人で様々な軍の中に蔓延る問題に立ち向かおうとするんだ。



さぁ…











次のページへGOじゃ!










あの、少し抑えてもらって良いかな








Episode 10 命がけの触れ合い





----------------------------------------






ウィル視点






----------------------------------------




僕はあの日からグロストのことを考えることになった。





「グロストを助けたい?馬鹿かお前。あいつが苦しんでるとでも?」


「あいつは俺たちも殺す気なんだぞ。お前自分から死ににいくようなこと言ってるんだぞ。俺たちも巻き込むな。」




誰に相談を持ち掛けても、帰ってくる言葉は決まっていた。


誰も彼の弱さを分かっていない。







確かに彼は強い。

でも、彼の心はとても弱いんだ。



そんな弱さに囚われて、今や憎しみの復讐鬼になってしまっている。





「そんなの…駄目だよ。」


僕にはグロストの気持ちは分からない。


でも知ろうとすることは出来るはずだ。





僕は、これから毎日グロストに会うことを決めた。





いつものように毎日行われる破壊軍との壮絶な戦いの後、僕は休むことをせず、すぐに森に走った。




「…まだ居ない…まだ戻ってないんだ。」


グロストが居たのはこの辺りだった。

だから今日もここに来るはず。




ドシン



「足音…?」




チリッ


聞いたことの無い音にウィルはとっさに反応した。

予感は当たったようだ。


僕の隣を通る黒い雷。



「…!!」

もし少しでも顔をそらしていなければ死んでいた。



僕は驚いてぺたんと尻を付いた。


「…また来たのか…貴様…!」


「…」


グロストだ。


目つきは鋭く、焦点も会っていないほどに上目を向いている。

顔も酷くやつれていて、目の下に濃い隈。

身体には切傷の無数の跡。



「…今日も来るって…昨日言ったから…来たんだよ。」

僕は怖がらないようにした。

そういうところを見せたら駄目なんだ。



まず僕だけでも…


僕だけでもいいから受け入れて欲しい。

僕はそう願った。



「…フン。」

グロストは僕の横を通る。


しかし何もしてこない。

グロストは岩に座った。


「…来るなと言ったはずだ。」


「ご、ごめん…」


僕はその威厳にすっかりやられてしまったようだ。

立ち上がることが出来ない。


来るとは言え、住んでいる(?)場所に勝手に入って待っていたというのも悪いとは思う。

だから僕は謝った。



「ならば早く去れ。殺すぞ。」

「…」

一応同じ平和軍の仲間だというのに、この人は平気で仲間までもを殺しかねない。

それは今までのグロストの暴君ぶりでよく理解している。

でも、このまま引き下がれはしない。


…こうなったら。


「…どうした、早く去れ。」


「…あはは、腰が抜けちゃった。」

ほんの少しの笑みを見せて場を和ませ…


「わっ!」

目の前に小さな雷を落とすグロスト。

驚いた僕は無理矢理に身体を動かし、フラっとしながらも立ち上がった。


「去れ。」

グロストの目つきの鋭さにプレッシャーを感じる。


「…ごめん、でも…去れない。」

ウィルは言う。

グロストの目が大きく開く。


「うっ…!」

微弱な静電気が僕に纏う。

ビリッと痺れて蹲ってしまった。

全身がビリビリと小さく揺れる。


「聞こえないのか…!去れと言ったのだ!」

グロストは立ち上がり雷を纏いだした。


「駄目だ!僕は…!僕は君を救いたんだよ!」

こうなったらやけだ。僕の気持ちを正面からぶつけるんだ!


「救うだと?この俺をか…!冗談が言える余裕があるようだが貴様に何が出来る。」


「っ…分かんないけど…!君は…このままじゃいけない…!それだけは僕にも分かるよ!」

「黙れッ!」

激しい雷が地面に激しく落ちる。

大きな地響きが襲い、僕は身体を地を這うしかなかった。


そして…


「うっ…あっ!」

手を踏まれた。


「そのような細い腕で俺に盾突くとはいい度胸だな…もう二度と俺に近づけないようにしてやる!」


「…っ…」



―――この後の事は正直よく覚えていない。




でも殴る蹴るなどの沢山、彼の攻撃を受けた気がする。


死なない程度の雷を浴びて全身が動かなくなるまで痛めつけられた。




きっとそうなんだろう。


森の外に放り投げられた僕は誰かに気づかれるまで、ボロ雑巾のように捨てられた。







「……ん…ここは…」


「よ、気が付いたか。」

「…サイノ先輩…ここ…医務室ですか…?」

「あぁ。そうだ。森の前でボロボロになって倒れていたんだぞお前。」



僕をここまで運んでくれたのは先輩の前衛兵士、サイノ先輩だった。

面倒見の良い人間の男性で、レイリーさんとも親しい。

よく後方支援隊支部に心配してきてくれる優しい人だ。


だけどグロストの話を聞くと腹が立つのか、少し気が立ってしまうみたいだ。


「お前、その怪我、破壊軍によるものじゃないな……もしかして…あいつか…?」

サイノ先輩の目はどこか憎しみに満ちていた。


「……違います。」

「しかし…この火傷、この傷…どう見てもあいつに「違います。この火傷は…そう、焚き木をした時に火傷したんです。この傷は転んだだけです。大丈夫ですから。」

僕はゆっくりと立ち上がり、医務室を出た。




「……あいつ…何考えてんだ…?」



フラリと立ち寄った場所。

もう時間は夜だ。

黒い雲の間に星々が見える。


少し高い場所の高台。ここから見る景色はどこまで広大に広がっていた。

壁が出来てからは、壁の上からわずかな景色が見えるだけになってしまってはいる。

それでも僕は平和軍に入隊して、心が苦しくなった時はここに来るようにしている。



「…きっとサイノ先輩もグロストに憎しみを持ってるんだ…あの目はそういう目だった…」



「…」

そっと肩を触る。

「いたっ…」

激痛が走る。

今更だが、全身が悲鳴を上げていることを身をもって体感した。

よっぽど完膚なきまでにやられたらしい。



「…悔しいな。」

僕は悔しかった。


グロストにかかった黒い心の靄を、1ミリも消してやることも出来なかった。


悔しくて、悔しくてしょうがなかった。


「…っ…くっ…ううっ…」

悔し涙が出た。


どうして心を開けないんだろう

どうして力になってやれないんだろう



自分の無力さを痛感した。

ただ彼を怒らせただけじゃないか

たくさんの後悔が頭によぎる。



「…諦めない…諦めたくない…」

それでも諦めたくは無かった。





「僕しか…彼に近づこうとしないから…だから僕が…!僕がやらないといけないんだ!」



怒らせてもいい。

それで殺されてもいい。

意識が変わる要因になれるならそれでいい。


誰かが動かないと変わらないんだ。







「明日も行くんだ…!彼の元へ!」




----------------------------------------




それから僕は毎日彼の元に向かった。




「何度言えば分かる!」





「しつこいぞ貴様…!」






「今度こそ殺してやろうか…?」












顔が腫れ、体がズキズキと悲鳴を上げ、全身があざだらけになっても僕は立ち向かい続けた。



「どうしてそこまでする?」

「いい加減にしろ。命を粗末にするな」

「あいつも頭がおかしい」



僕がグロストにところに毎日行っては痛い目に合わされ、追い出されていることは、1、2か月もすればもっぱら軍の兵士全員に広まっていた。


何度も何度もグロストを助けたいんだっていう気持ちをぶつけ、そしてその度に…

そんなことばかりしているうちに、僕は平和軍を首になるかもしれないという話も持ち上がっていた。






もう駄目かもしれない。


でも

最後まであがいてやる。


僕はそう決めたんだ。



----------------------------------------

「ウィル。」



「…レイリーさん。」


「ウィル、お前まだ…グロストの所に行っているのか?」

「はい。」

僕は誤魔化すことは無くハッキリと口にした。



「…ウィル、ボロボロじゃないか。アレだけグロストに接触して生きていることが奇跡だが…もうこれ以上はお前の身体が持たない。後方支援隊の仕事の時も力が入っていないではないか。」

確かにそうだ。毎日のように気絶するほど痛い目に遭っているからか、普段の仕事も疎かになりつつある。

だけど、諦めたくなかった。


「…でも、それでも。グロストの心を開かせることが出来たら…この軍は変わる!僕は…やっぱり味方に平気で殺される軍なんて…嫌なんです。」


「…ウィル…」

僕は真剣にレイリーさんに訴えた。

グロストを救いたい。グロストを救えたらこの軍はきっと大きく変わる。犠牲者も大きく減る。

「…そんな目をされたら…これ以上言えぬではないか。」

レイリーさんは説得を諦めたのか、ため息をつき、僕の頭を撫でた。


「…お前を信じるよ。この軍を…変えてくれ。」

「…はいっ!!」


僕は改めて決意した。

諦めない。絶対に。



諦めない。



----------------------------------------


「…こんにちは、グロスト。」


「…いい加減にしろ。」


あの最初の日から1年。


僕は11歳になった。



365日、僕はグロストに声をかけ続けた。


でも現状は変わっては居なかった。


「ごめんね、それでも僕は…っ!」

まずは頬に拳が飛ぶ。


いつものことだ。


僕は笑顔を絶やさない。

「ごめんね。でも僕は君に…変わっ…変わって欲しくて…」


同じことを伝え続けた。


「……何故だ!貴様っ!貴様はどこまで俺を困らせる!?」

首元を掴まれる。


「ぼくは…きみを…た…す……けたい…だけ…だ…よ……」

上手く喋れなくても伝える。


伝える。


伝えるんだ。

何度でも


何度でも






「来るなと言っているだろう…いい加減にしろ。」

地面に叩き付けられる。

この土の匂いにももう慣れた。

この痛みもいつもの痛みだ


この苦しさもいつもの苦しさだ






「君の苦しんだ顔もいつもの苦しさだ」


僕は何度も立ち上がりグロストの前に立ち続けた。


「…去れ。」


「出来ないよ。」


傷だらけの腫れた顔でニコッと僕は笑って見せた。


本当は泣きたくなる程痛いし苦しい。

それでもそれを見せてはいけない。



命がけで僕は彼に接した。



「グッ…オオオオオオオオ!!!」

グロストの咆哮が僕の身体をぶるぶるっと震わせた。



そしてついに…



グロストの拳は僕の身体ではなく…



地面を叩いた。







「…答えろ…」

「…グロスト…」


「答えろ…!貴様は何故俺にここまで付きまとう…?理由を聞かせろ…聞いてやる。」


グロストが初めて僕の話を聞こうとしてくれている。




僕は今なら、グロストに言える。そう思った。

…僕が君に付きまとう理由だって?



そんなものは






「誰かが苦しんでるのを助けるのに理由なんていらないよ」







あるわけがない




「僕は君を助けるきっかけになれるなら死んだって構わない。でも僕は死なない限り、何度でも君に立ち向かう。何度でも君に会う。何度でも君に殴られる。」



「…もういい…分かった。もう何も言わん…」


「…グロスト…!」


ついに動きが見えた。

1年耐えた結果が遂に実った。


「だが俺は貴様に心など開くつもりもない。ここに来るなら好きにしろ。だが俺の邪魔だけはするな。絶対だ。」


「…あ、ありがとう…!グロスト…!」

僕はつい涙がこぼれた。


「……だが…今日は去れ…」


「…分かった…グロスト、また明日ね。」



そう、ここでグロストはついに折れたんだ。




心に溜めこんでいた僕の責任感とか、いろんなものが全部抜けそうな気分だった。


まだ全てが終わったわけでもないし、グロスト自身はまだ心を閉ざしたままだ。

これからが本番だというのに、僕の心は無に帰りそうなほど清々しい気持ちに浸っていた。






そして僕は森を出たその瞬間に







ああ。





倒れた。



ああ…疲れたなぁ



今は少し、休んでも…良いよね…?






Episode 10 END



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