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愛しいあなたへ  作者: ユノ
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愛しいユキ

短編を連載風に書いてみました。





僕がユキを拾った時、ユキはまだ生まれて二カ月も経っていなかった。真っ白いふわふわの毛を身に纏った小さい小さい子猫。

動物は好きだったけど、実際に飼ったことがなかったものだから、どうしようって悩みに悩んで、沢山沢山家族と相談してユキを飼うことにした。



ユキは水が嫌いだった。雨だってそうだし、お風呂だってそう。ユキを拾ったのは雨の日だったから、ユキの中でトラウマとして残ってしまったのかもしれない。

もちろん、水に限らず外だってユキにとっては恐ろしい世界だ。家から出ただけでブルブル震えてしまうくらい怖いみたい。分からなくもなかった。人間だって怖い世の中なのだから。



ユキはカツオが大好きだった。最初はササミが好きだったんだけど、いつの間にかカツオに変わっていた。でも生魚は絶対に食べない。食べるのは猫用に火を通されたカツオだけ。僕は生魚の方が美味しいと思うんだけど。

最後の方なんて、ササミに見向きもしなかったのに、カツオを出した途端鳴いて寄ってくるんだ。

でも、そんなユキが可愛くて仕方がないんだ。



ユキはおもちゃで遊ぶのも好きだった。モールとかふわふわボールとか、本当に安いものばかり気に入ってくれて。その度に、もっといい物をあげたいなって思ったもんだよ。僕が投げたボールを走って取りに行くユキがとても可愛かった。犬みたいだったな。



そして、ユキと僕はずっと一緒だったよね。僕が大学受験の時、当時平均睡眠時間が3時間の僕は寝不足でストレスがたまって、正直勉強するのがとてもしんどかった。

それでも、国立に入るために夜中の2時、3時まで勉強してたけど、僕は独りぼっちじゃなかった。

ずっと、そばにいてくれたよね、ユキ。もちろん遅い時間だし、ユキは猫だから人間よりも睡眠を取らないといけないから寝てはいたけど、ずっと僕のそばにいてくれた。あぐらをかいて座る僕の後ろ、腰ら辺で僕の勉強が終わるまで丸くなって眠っていたユキは、とても優しかったね。

一人だと心細かったと思うから、本当に支えられてたんだよ。

ありがとう。



僕が中学三年生の時に僕と出会ったユキは、今までずっと僕を支えてきてくれた。一度の人生に数回しかない受験を僕の場合、二回も支えてくれたね。

今思うと、ユキがいなかったら病んでたかもしれないな、と思う。



本当にユキにとても支えられたんだ、僕は本当にユキと出会えて幸せだった。



でも。



僕と出会った頃の君は僕よりも若くて、僕にとっては自分の子供のような存在で、とてもとても可愛かったのに。


自然の摂理とは残酷だね。ユキの方が命の時間が僕よりも5倍早いんだ。僕より若かったユキは僕よりもお姉さんになって、そして今はおばあちゃん。

昔はよくおもちゃで遊んでたのに、家中を走り回っていたユキも、もうそんな体力は残っていないようで。最近はずっと寝たきりだ。僕が抱っこして外を散歩する時以外はずっと寝ている。



嫌だな、僕。


ユキと離れるのが本当に嫌だ。



生き物を飼う為には必要な覚悟、僕は準備できていたつもりでいたけれど。いつかこの日が来てしまうことをずっと頭の片隅に置いて今まで過ごしてきた。

だから本当に、ユキとの時間は大切にしてきたつもりだよ。ユキの写真や動画はブレていても一枚も消したことがない。それくらいユキの写真は一枚一枚が僕にとっての瞬間であり、思い出であり、宝物なんだ。



大好きだよユキ。


あと少し、あと少し。


僕の為に頑張って、息をし続けて欲しい。


僕の一生のお願い。


お願いだから。






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