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じゅうく

 


「ひゃっほぉおおおい! 全ては爆発から生まれ爆発へと昇華されるものぉ!」



「テンション、高いですね」


「全て燃え上がれぇ!」


「聞いてませんね、これ」



 爆音鳴り響く夜の街。

 屋根上を二人で陣取って、街を見下ろしている。

 異能力使いでもいるのか、凍っていたり、雷がバチバチ弾けていたり、おかしなエフェクトも見えた。


 この中で怪我の一つもない理由は、ホノさんが守ってくれているからだ。

 約束通り、怪我はさせないようにしているらしい。

 こちらにとんでくる攻撃のような流れ弾のようなモノを、お腰につけた刀で振り払っている。

 カッコいい。

 僕にも運動神経があったら、そんなカッコいい行動が出来たのだろうか。


「いやぁ、でも、たしかに……この光景は綺麗ですね」



 爆発物を仕掛けてきたらしい彼女は次に爆破する場所を教えてくれる。光舞い散る街中は、多量の煙と悲鳴と絶叫にデコレーションされている。

 阿鼻叫喚であることを横に置いておけば、これもまた美しさと言い切れるような街だ。



 いや、この光景に見惚れる前に、爆発の観察をしなくては。


 ここまで大きな爆発現場を間近で見たことは前世含めてないに等しい。

 思っていたよりも煙が多く、夜中だからか炎も目立つ。

 昼間なら煙に巻かれて炎が隠れてしまって見え辛かったかもしれない。


「あー、水彩画で、勢いよく色の濃淡を……いや油絵……、アクリルでもいいけど……んー……あえてペン画?」


 色がないのはやっぱりどうにも爆発の美しさを表現しきれない気がするから、ペン画はなし。

 個人的には、水彩画がいいと思う。

 まずは構図をゆっくり考えよう、もっと本物をしっかり見て、生命力を絵に宿すような構図を……。



 しばらく二人で爆発する街を眺めた。

 ホノさんは激しく笑いながら、僕は無言で。


 銃声も聞こえたので、和風魔法バトル以外のことも行われていたのだなぁと感想を持った。


「夜の街は、昼とは違う物騒な騒がしさがあるんですね」


「それもまた、魅力なんですよぉ!」



 たまには普段と違うものを見るのも良いのかもしれない。


 ……すでにここ最近特異なものばかり見ているというツッコミは無しでお願いしたい。


「また一緒に来ましょうねぇ! 次は大爆発を見せてあげます」


「これで大爆発ではなかったんですか、驚きました」



 それ以来、時々、夜の街探索を彼女と行う。

 基本高いところから爆発を眺めるだけなので、危なそうなモノには会っていないし、一人ではないから問題ないだろう。

 なにより彼女も強い傭兵だ。安全、安全。


 トタロウさんに内緒としていることに若干の後ろめたさはあるけれど、まぁ、これも仕事の一環と思って楽しく観賞しにいっている。

「へぇー、つゆはねさんは、酢橘組のお知り合いが多いんですね」


「言われてみれば、そうですねぇ……しかしながら、所属組織自体に対しては全く繋がりがないんですよ」



 それこそどこの組の人だか、見分けがつかないくらいです、と僕が告げる。

 色合いでなんとなくわかるじゃないかとホノさんに返され、微妙な返事をした。

 そりゃ色合いだけ見ればわからなくもないが、もしかしたらどこにも所属していなくて、気分でそういう色の服を着ている可能性がある。


「ちなみに私は塩芋組の方とちまちま交流があるくらいですねぇ……そのおかげで砂塵組の方に嫌われちゃってますぅ」


「砂塵……あぁ、息子さんが、成人するとかいう…」


 砂塵だけ食べ物じゃない理由が、未だによくわからない。

 他の組がネーミングセンスがなかったのか、この組だけ張り切って名付けたのか。


「……どこ情報です? それ」


「え? あぁ……知人に贈り物の依頼がきていて、盃の絵付けをやらせてもらったんです」


 あ、これ個人情報流出問題に引っ掛かるのだろうか?

 口止めはされてないから、まぁ、気にしなくてもいっか。


「すごいじゃぁないですか! えぇー、有名になりますよ、絶対! 組の者への贈り物に携われたって名誉なことなんですよぉ」


「へぇ」


「あっ、すごく興味なさそう。つゆはねさんってそういうとこあるよねぇ」


 きゃいきゃい話しながら歩く。

 今日は暖かいお散歩日和な夜だ。

 夜の散歩が日課になってきている気がする。


 爆破されて些か明るい夜街を眺めながら、屋根の上をひょいひょい移り歩くホノさん。僕は彼女に抱えられながら、街の情景を記憶する。明るい夜は、星空にしろ、電灯にしろ、どことなく風情がある。

 絵の題材集めはかなり進んできた。

 そろそろ下書きを描き始めてもいいかもしれない。


 まって、彼女、僕のこと平然と持ち上げてお姫様抱っこしている! 自然な流れで抱えられたから違和感が家出していた! 僕はアニメ美少女体重なんかじゃないんだよ?


 彼女は傭兵をしていると先程聞いた。仕事の関係で力持ちなのかもしれない、と自分を納得させておいた。


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