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WooTober異世界に立つ  作者: 石の森は近所です
サラエルド編
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第18話、エルフ

「あぁ。この世界では既に滅んだ魔族が、女神様の信仰を削ぐために使ったのが――坊やが呼んでいた呼称だ。三百年前に、この世界の女神様に反逆した魔族。そして、女神信仰を祖とする私たちエルフ。さらに――勇者を有する人族の争いによって、魔族は断罪されました。この世界にはもう魔族は生息していないはずなの。でもあなたは、滅んだ魔族が使った呼称で魔法を行使したわ。それの意味する事は分かるでしょ」


 店主は話しながら三角帽子を外す。それがキーとなったのか、しわがれ声は若々しく透き通った女性の声色に変わった。いや、変わったのは声だけではない。容姿も変貌している。髪は黒から白銀色のロングに変わり、シワだらけの顔は童顔の幼女へと変化した。何より特徴的なのは、小さな美白顔の両脇にある耳だろう。ツンっと尖った耳が控えめに突き出ていた。


 キグナスたち、そして俺も、目の前の店主から目を離せない。

 俺は彼女の言葉にただ首肯する事しかできなかった。


「ふふっ。この姿で人前に出るのは何年ぶりかしらね。初めまして、迷い人とその仲間たち。私の名はサラフィナ・エリファート。見ての通り――エルフよ。それじゃ話を戻すわね。もし、あなたをこの世界へ送ったのが魔族だとするなら、私が知りたいのはその目的ね。この世界では既に滅んだ魔族が、あなたの世界で何をたくらみ、あなたを送った事で何を成そうとしているのか」


 目の前にいるのは紛れもない幼女だ。外見はエルフの幼女だ。

 だが、その小さな口が紡ぐ声は、氷のような冷たさしか感じない。

 言葉自体に威圧は感じられない。しかし、透き通った声が全身を凍らせる。


 俺は望んでこの地へ来た訳じゃない。送り込んだ者が何を考えているのかなんて知るはずもない。俺はサラフィナの緑の双眸を凝視しながら弁解する。


「俺は突然この世界へ飛ばされました。だから送ったヤツらの思惑は知りません」


 サラフィナは、俺の返答に一瞬、怪訝そうな面持ちを浮かべる。そして、尋問でもするかのように俺が話した言葉尻を捕らえる。


「あなたは先程おっしゃいました。自分は娯楽の伝道師だ。それを提供する代わりに対価としてポイントを得られると。では、どの様な方法でそれを提供し、対価を受け取っておられるのでしょう。先程見た限りでは、あなたにその様な力があるとは思えないのですが……」


 そりゃ、俺の力じゃねぇからな。パソコンのおかげだ。文明様々だぜ。

 俺はバッグからノートパソコンを取り出し、机に置いた。サラフィナは怪訝そうな目で見ている。これを見せれば納得させられる、といった予感が俺にはあった。モニターを開き、WooTobeで自分が撮影した動画をサラフィナに見せる。


「なんだ、こりゃ。道具箱じゃなかったのかよ。まさか――魔導具か?」


 キグナスがノートパソコンを見て驚嘆する。

 アリシアは画面に映る映像に目が釘付けになっている。


「私も同じ事を考えました。これは魔導具なのでしょうか?」


 ふふっ。サラフィナも勘違いしてるな。さもありなん。これこそハイパーテクノロジーの結晶だからな。知らなくても無理もない。


「これは魔導具じゃないよ。俺の世界のノートパソコンという機械だ」


 サラフィナは疑問符を浮かべながら、「機械ですか……」と呟いてる。


「はい。俺の世界ではこれを使って仕事をします。仕事以外でも、このように自分が記憶した映像を保管して、後から確認する事もできます。この世界の魔導具とは似て非なるものです。魔導具は動力源にマナを使うと思いますが、これは電気を使います。電気に関しては、今は省きますね」


 俺の説明にキグナスもアリシアも目を白黒させている。


 当然だな。パソコンは、この世界には存在しないものだ。キグナスたちと会った時にも、コレを見せる事はできた。でも、知り合ったばかりの人に見せるには危険が伴う。高価な物だという事は一目で分かる。という事は、強奪されるリスクが上がる。撮影するのに人に見せて、奪われて殺されたんじゃ本末転倒だからな。


 だから、俺はキグナスたちには隠していた。


 本当はここでも見せる予定はなかった。でも、サラフィナはエルフだ。あの扉の結界を見ても、魔法使いなのは間違いない。俺が全てをさらけ出さないまま、不興を買って殺されるよりは見せた方がいい。この中で一番強いのは、恐らくこのエルフだからな。

 俺は、パソコンがなければ魔法を覚えられないが、最悪これを失ってもエルフに弟子入りすれば魔法を教えてもらえる可能性だってある。


 そんな思惑を隠しながら、俺は全てを見せる。


「それで、これをどの様にすれば娯楽を提供できるのでしょう。これは記憶を映し出す機械なのですよね?」


「はい。今見てもらってる映像は、俺の世界の住人であれば誰でも見る事が可能です。未知の世界を多くの人に見てもらう事が俺の仕事です」


 あれ、サラフィナの顔が難しい表情になってきたぞ。ついに理解度を超えたか。

 何かいい例えはないかな。お伽噺で魔女が使ってた鏡とかあったな。

 そんな物がこの世界にあるかは知らんけど。試しに聞いてみるか。


「この世界では遠くの物事を見通せる魔導具とかはないんですか?」


「うーん、そうですねぇ。昔の文献には未来を見通せる水晶の魔導具の存在が伝えられていますが、今はロストしていますね。もしかして、それと同じだとおっしゃるのでしょうか?」


 すげぇな。未来を見通せる魔導具なんてあったのかよ。現代の地球にだってそんなオーパーツねぇぞ。さすが異世界だな。


「これは未来を見通す力はありません。というか、過去と現在の映像しか見る事はできませんよ」


 俺はノートパソコンのインカメラをサラフィナに向け画面に表示させる。当然、録画するのを忘れてはいない。後でリスナーに見せるためだ。フフッ。生エルフなんて皆、喜ぶだろうな。エルフは俺の嫁とか定番だし。幼女萌ええぇぇぇ。って要素もあるからな。


 これでチャンネル登録者も千人超えてくれるといいけど。


「どうです。画面に現在のサラフィナさんが映っているでしょ?」


 あらあら。サラフィナ。頬を両手で包み込んでうっとりとしちゃったよ。


「これが私――」


 まさかこのエルフ、あれか……ナルシスト!

お読み下さり、ありがとうございます。

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