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死霊王(アンデッドロード)は眠らない  作者: 谺響
お早いお帰りで、陛下
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新技お披露目ですよ、王サマ!

!魔王城:王の間(プライベート・ルーム)


今日も今日とてゴロゴロタイム継続中である。

傍らではサーシャ(湯上がり)が長い金髪をタオルで挟んで丁寧に拭いている。何時の話か忘れたが、本当に風呂を借りに来やがったよ、コイツ。


「いつまでサタンさんに代行をさせておくつもりなんですか?」


「あー、聞こえないx2」


サーシャの指摘に耳が痛い。いや、耳なんてないけどな。

骸骨の軍勢(スカル・レギオン)召喚以降、ニンゲンの侵攻は全くない。召喚するだけ無駄だったんじゃね?と思わなくもない。兎も角平和なのをいいことになんやかやと言ってゴロゴロタイムは一ヶ月も上乗せ延長されているのだった。決裁書の山がどうだなんて、もう、神の味噌汁だ。


「あ、いいこと考えた。サーシャ、バイトしないか?」


「私でもできるお仕事でしたら」


「判子を押すだけの簡単なお仕事です」


「それでしたら私でもお手伝いできそうですね。納品に来た時のついででいいですか?」


「全然オッケー。気の向いた時でいいよー」


よし、これで更にサボりを継続できる!


「ロード、敵襲でぉうわっ!?」


王の間(プライベート・ルーム)に飛び込んできた豹の伝令官(パンサー・ヘラルド)が驚き飛び退く。入口の所で目を背けたまま豹の伝令官(パンサー・ヘラルド)が震える声で告げる。


「サーシャ、服……」


「あっと、そうでした」


ここまで巧みなカメラワークで誤魔化してきたがサーシャは一糸纏わぬ姿だった。髪を拭いているタオルはあくまでアイテム扱いだから、身に着けている装備品は金の腕輪(バングル)だけ。演武会の試合中にさっきゅんに襲われた時の慌てふためきようから、羞恥心とかが身に着いたかと思っていたのはどうやら間違いだったらしい。頬がほんのりと赤らんでいるのは湯上りの余韻に違いない。

タオルを羽織って脱衣所へと駆けてくサーシャを見送る。


「で、敵襲?何でこっちに報告に来てんの?」


「いや、さっきゅんが言ってたじゃないですか。出番があったら新技をお披露目するから見てて下さいねーって」


「え?新技って、ガチなの?てっきりエロい方面だとばっかり思ってたのに」


「それだったらその辺の隊員捕まえて実演してますよ」


「……それもそうか……」


豹の伝令官(パンサー・ヘラルド)の指摘に頷きながらイビルアイ(亜種)を召喚、中継を引いた。


「ってか、お前、さっきゅんのパシリか・・・・・・」


悲しいかな、戦わずして格付けの済んでしまっている男がそこにはいた。




†魔王城:正門前


演武会以降、さっきゅんにも見過ごせない変化があった。それまで全裸がデフォだったさっきゅんだが、最近では何かしら服を着ていることが増えた。単にコスプレに目覚めただけかもしれないが。

なお、今日のさっきゅんの衣装はどこからどう見てもネグリジェだ。それも極薄の生地の、いわゆるスケネグ。薄紅の色合いがまた艶かしい。

城門の少し先に一人で立つさっきゅん。その足元では小さな魔法陣が紫色の光を放って輝いている。他の隊員は城門の脇から遠巻きに見守っていた。

そこに現れた敵は、8人。4人PTが二つ合流したのだろうか?珍しいこともあるものだ。


「遠慮はいらないよ。全員まとめてかかってきな!」


しかし、つい先日千人斬りをやってのけたさっきゅんにはそのくらい物の数ではないということなのか。余裕の表情で手招きして挑発する。

それに触発されてか、双剣士と武闘家が突撃を仕掛け、他の面々もそれに続く。


「流石に魔職はノらないか」


僧侶と魔法使いは杖に手を翳して機を窺っている。

先手を取ったのは武闘家。音を立てて空を裂く拳を、しかし絡み付く樹根(タングル・ルーツ)が巻き取る。腕を取られた武闘家の足下から、双剣士の二刀が螺旋を描いて斬り上がる。立て続けに放たれた6連撃が絡み付く樹根(タングル・ルーツ)の戒めを切り裂くと、間髪入れずに槍使いが鋭い一撃を繰り出してくる。その穂先を回り込んで避けると共に槍使いに当身を入れる。反撃(カウンター)を貰った槍使いもその背後に控えていた重斧使いも目を丸くしているが、それも無理は無い。急動(ラピッド・ムーヴ)で俊敏性が通常の3倍に跳ね上がっている今のさっきゅんを目で追うのは容易では無い筈だ。

魔法使いの放ったカマイタチを躱し、飛び着いた戦鎚戦士の頭を太股で挟み、そのまま勢いだけで捻る。バランスを崩して倒れ伏した戦鎚戦士の上に陣取ってさっきゅんが両腕を拡げると、足元の魔法陣も拡がる。


「根こそぎ頂くよっ!魂の饗宴(ソウル・フィースト)ッ!!」


高らかに叫ぶさっきゅんの声に呼応して輝きを強める魔法陣。天に翳したさっきゅんの手から何かが放たれたりするわけではないが、敵の身体は次々とその場に崩れ落ちてゆく。淡い緑色の輝きをそこに残して。残された光の球は尾を引いてさっきゅんの掌へと集う。それに唇を寄せ一息に啜ると喉を鳴らして呑み込む。一つ呑み込むごとに恍惚とした表情を浮かべ、最後の一つを名残惜しそうに飲み下すと、ぺこりと頭を下げた。


「ご馳走様でした」

ロード「範囲吸収(ドレイン)とか……打消し必須(マスト・カウンター)じゃねぇか!」


豹の伝令官(パンサー・ヘラルド)「サポート要員だったさっきゅんが一気に戦闘要員に、それもとんでもない戦力になってませんか?巻き込み数次第じゃ消費MP分はゆうに回収できるでしょ?」


ロード「んー、ロスはでかそうだし、一度使ったら警戒されて位置取りできなくなりそうだし、言うほど無双するのは簡単じゃないと思うぞ。そんなことより非接触の吸収(ドレイン)を範囲攻撃でやられると魔法障壁(マジック・バリアー)じゃ防げないし、やっぱ範囲外に逃げるか打消すか……」ブツブツ


豹の伝令官(パンサー・ヘラルド)「ロードが真剣に生命の危機に瀕しているっぽい……」

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