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死霊王(アンデッドロード)は眠らない  作者: 谺響
お早いお帰りで、陛下
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ひょっとして、あれが噂の……

!暗黒大陸.中央


周囲の偵察に出向いていたホーテンが、戻って来るなり口にした言葉は意外なものだった。しかし更に意外なことにそのホーテンの発言に対する、他の3人の意見が珍しく一致した。


「撤退を提案する」


「寝言は寝て言え」x3


と言うか、ハモった。

ここまで来ていながら魔王はおろか、その居城すら拝まずに撤退するなど、到底考えられない。

グレイヴが深い溜め息と共にしみじみと問い尋ねる。


「何怖じ気付いてんだ、ホーテン?命が惜しくなったか?」


「そうじゃない。でも、無駄死には御免だし、あいつらのお仲間になるのはもっと御免だ」


「それのどこがどう違うって言うんだよ?」


「何とでも言えよ。お前らが何と言おうと、俺は降りる」


「おう。帰れ、帰れ。この意気地無し」


「まぁ待て、オウル。ホーテンももう少し具体的に説明しろよ。さっぱり訳が分からないぞ」


我の強い男が4人も頭を揃えているのだ。これまでもこのチーム「H.L.E.B.」は幾度となくパーティ解散の危機に直面してきた。というか、実際に極短期間だが解散してた時期もある。それでも結局は寄りを戻し、ここまで共に戦って来れたのは、メンバーたちの根っこのところで、各々の我よりも強い絆があったからだと思っている。

ただ、今回ばかりは訳が違う。魔王城へと攻め込むのなら、一人たりともメンバーを欠く訳にはいかない。逆に撤退するのだって容易くはない。大陸上陸以降、4人だったからこそ切り抜けられてきた、そんな危うい局面ばっかりだった。この暗黒大陸のど真ん中でパーティの意思を統一出来なければ、俺達4人になせることなど、何一つないんだ。

もちろん、このまま手ぶらで帰る気などさらさらない。魔王城を目指し、暗黒大陸へと渡るということはそんな気安いものではない。数年前に各国のギルドが一斉に暗黒大陸への渡航に規制をかけてからというもの、その重みは更に増している。俺達だって渋る船頭に大金を積んで海を渡り、ようやくここまでやって来たのだ。このまま何も成し遂げずにおめおめと帰る訳には行かない。

だが、ホーテンは肩を震わせ、帰ると言って聞かない。


「お前らだって、アレを見れば考えが変わるさ」


結局。ホーテンが見たものを俺達も見ないことには話は始まらないのだった。




!城の見える高台


「あれが……魔王城……」


遠目に見える旅の終着点に感慨深いものを感じるかとも思ったが、それどころの話ではなかった。


「ウワサには聞いていたが……まさか、これほどとはな……」


グレイヴもその光景に呆然としている。

魔王城を取り囲む、骨、骨、骨……

数える気すらおきない程おびただしい数の骨が蠢いていた。

今の魔王が死霊を統べる王ロード・オブ・アンデッドだというのは誰もが知っている話だ。だがそれにしたってあの数は尋常じゃない。それは魔王討伐に向かった先人たちが返り討ちにあい、余さずその配下に加えられているという、酒場ではお決まりのネタとなっている笑えないウワサ話が、実は事実だったと裏付けるのに十分足りる光景だった。

オウルが鼻先で笑った。


「あれを突破するのは流石に些か骨が折れるな」


「でも、やれなくはないだろう?」


オウル同調するようにグレイヴも冷静に敵の戦力を分析している。実際よくよく見れば非武装の骸骨(スケルトン)獣族(ビースト)骸骨(スケルトン)なんかも多数いる。最下位の蠢く骸骨(ドラッジ・スケルトン)や特段特殊能力のないボーンラビットなど、有象無象の骸骨(スケルトン)たちであれば俺たちの一振りでいくらでも薙ぎ払って行ける。


門番(ゲート・キーパー)は一際大きな骸骨騎士(スケルトン・ナイト)だった。2mくらいの大剣(クレイモア)を片手で振り回していたけど、俺達4人ならやれなくはないと思う。問題は――」


「っ!?……マジか……」


ホーテンが説明する前にその問題とやらが姿を現した。それは確かに大きな問題だった。城壁の陰からぬぅっと突き出してきたその首だけでは全容は把握できないが、それでもおおよそは察せられた。間違いなく大問題だった。


(ドラゴン)までいるのかよ……」


突き出した咢に牙を、頭には3本の角を備えた骨だけの(ドラゴン)が、眼窩の奥で金色の輝きを煌めかせて辺りを見回していたのだ。

その長い首をゆっくりと天に向けて掲げると、骸骨竜(スカル・ドラゴン)は咆哮を轟かせた。高台を揺さぶるその一声に皆が耳を塞ぐ。咆哮の一つで骸骨竜(スカル・ドラゴン)はその実力をまざまざと見せつけてくれた。


「ひょっとしてあれが噂の黒竜大戦の……」


「本当に竜族(ドラゴン)まで手下に加えていたとはな……」


普通の竜族(ドラゴン)でも人間の手には余るというのに、それが骨化しているとなると、なおのこと攻略の糸口は見えてこなくなる。理論上では骨を砕いていけば、例えその元が竜族(ドラゴン)であれ、骸骨(スケルトン)を活動停止に追い込むことは可能なはずだ。だが、あの30mはあろうかという巨体を砕き尽す?そんなことが人間の手に可能なのか?そもそも竜骨と言えば超稀少級(スーパーレア・クラス)の武具の素材となるような代物。そう易々と砕けるようなものではないはずだ。

互いの顔を見合わせて頷く。


「撤退しよう」x4


パーティー結成以来初めて4人の意見が一致した。

と言うか、ハモった。

ロード「バロル、五月蠅い。もうちょっと静かに」

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