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【連載中】社畜OLの私が乙女ゲームの悪役令嬢に転職しました。でもイケメンの第一王子にむらがる女たちを対決してざまあして溺愛されます。  作者: 久坂裕介
第一章 貴族令嬢と対決

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第一話 転職

 紅茶をこぼしたメイドは、うろたえた。

「も、申し訳ありません、エマ様! エマ様のドレスに紅茶をこぼしてしまうなんて! 今すぐにきますので、どうかお許しを!」


 でも私はドレスのポケットからハンカチを取り出して、ドレスにこぼれた紅茶を拭きながらメイドに告げた。

「あ、いいの、いいの。紅茶は私が拭くから。それよりもあなたは、紅茶をカップにそそぎなおして」

「は、はい! すみません!」


 そしてメイドは私のカップと、白いテーブルをはさんで座っているカイト第一王子のカップに紅茶を注いだ。メイドは今度は紅茶を、こぼさなかった。それで一安心ひとあんしんしたメイドは、深く頭を下げた。

「申し訳ありませんでした、エマ様! カイト第一王子を初めて間近まぢかで見て、緊張してしまって……」


 なるほど、そうだったのか。なので私は、メイドをフォローした。

「気にしないでね、失敗はだれにでもあるから。でも次からは、気を付けてね」

「はい! これから気を付けます!」


 そしてメイドは再び深く頭を下げ、この客室きゃくしつから出て行った。それを見送みおくった私は、カイト様に紅茶をすすめた。

「さあ、カイト様。冷めないうちに、紅茶をいただきましょう」


 でもイケメンのカイト様は紅茶を飲まずに、私の右手をにぎった。そして、告げた。

「ああ、エマさん。あなたは、確かに美しい。でもミスをしたメイドにまで気を使う、心配こころくばりが素晴すばらしい。あなたは外見がいけんだけでなく、心も美しい。だから私はあなたと、婚約したのです……」


 そしてカイト様は、私の右手のこうに優しくキスをした。なので私は、い上がった。ああ。どうやらここはゲームの中の世界みたいだけど、現実よりも素晴らしい。できれば、ずっとここにいたい。でも四時間前の私は、すぐにでもこのゲームの世界から現実世界にもどりたかった。私はふと、その時のことを思い出した。


   ●


「ああ、すみません課長! この書類しょるい間違まちがいは今日中に直します!」と私は、叫んでいた。でも次の瞬間、ここは会社ではないことに気づいた。ここは、ベットの上だということに気づいたからだ。


 はあ、最悪。夢にまで、仕事が出てくるなんて……。でも、そうも言ってられない。ベットには、柔らかな朝日あさひが差しんでいる。もう、朝だ。起きなくては。起きて会社に、行かなくては。って、あれ? 今日って、何曜日だっけ? 今、何時かしら? えーと、スマホ、スマホ……。って、あれ? スマホが無い。いつも枕元まくらもとに、置いてあるのに。


 そうしてスマホを探している私は、ある違和感いわかんに気づいた。あれ、ここ私の部屋じゃない。よく見ると、ベットも布団ふとんも違う。あれ、昨日きのうだれか友だちの部屋にまったんだっけ? と考えたが、そんな記憶きおくはない。昨日もいつも通りにマンションの自分の部屋に帰ってきて、寝室しんしつの自分のベットに寝たはずだ。それなのに、どうして?……。


 取りあえず私は、ベットから降りた。すると左に、縦長たてながの鏡があることに気づいた。あれ、私の寝室にはこんな鏡なんてないはずなのに……。と疑問い思いながらも私は、鏡をのぞき込んだ。そして、おどろいた。なぜなら鏡には私ではない、別人がうつっていたからだ!


 目は丸い印象いんしょうで、パッチリとしている。そして金色の髪が、背中まで伸びていた。私は思わず、鏡をわしづかみにした。だ、誰?! この人は一体いったい、誰?! 私、丸山まるやまあさ美は、こんな顔はしていない。確かに目は丸い印象だが、こんなにパッチリとはしていない。そして黒髪で、肩までの長さのはずなのに……。


 そして着ている服も、パジャマではない。手触てざわりが良い、シルクの寝間着ねまぎのようだ。こ、これって一体?……。そうして私は混乱していたが、あることに気づいた。鏡に映っている顔を、どこかで見たことがあると。うーん、どこだっけなあ……。そして私は、思い出した。ああ! この顔はエマ・メナツだ! 私がハマっている乙女ゲーム、『誰でもプリンセス』の悪役令嬢のエマだ!


 乙女ゲーム、『誰でもプリンセス』。それはスマホでプレイする、ゲームだ。プレイヤーはまず貴族きぞくの令嬢、友好国ゆうこうこくの王女、敵対国てきたいこくの王女、お城のメイドなどからなりたいキャラを選ぶ。そしてカヒリ国の第一王子である、カイトと婚約するのが目的だ。


 ゲームはカイトと悪役令嬢のエマの、婚約披露こんやくひろうパーティーの前日から始まる。そこからプレイヤーは選んだキャラでカイトと話などをして、したしくなる。そして婚約披露パーティーでカイトの婚約者にふさわしいのは、悪役令嬢のエマではなく自分だとアピールする。そしてカイトが納得なっとくすれば、カイトはエマとの婚約を破棄してプレイヤーのキャラと婚約するというゲームだ。


 それに気づいた私は、絶望した。私は丸山あさ美、三一歳の社畜OLだ。ただのOLではない。社畜OLだ! なぜなら私が働いている会社は中堅ちゅうけんのお菓子かしメーカーで、ブラックだからだ。このご時世じせいでもサービス残業は当たり前、もちろん給料も安い。


 私は食べると幸せを感じるチョコレートのお菓子が大好きで、それを作りたいと思って入社した。でも私が配属されたのは、経理課けいりかだった。なのでずっと課の異動届いどうとどけを出しているが、経理課のままだ。なのでいつかチョコレートのお菓子を作れる会社に転職しようと思っていたが、それはずるずると先延さきのばしになっていた。


 だああああ! それなのに乙女ゲームの悪役令嬢に転職しちゃった! 私はこのゲームの世界に入ることになった、きっかけを思い出した。それは、昨日の夜のことだった。

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