表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/14

3

 手首より少し上の場所から、赤い血をしたたらせ、女性は俺に「驚かせてごめんね」とか「びっくりさせちゃったね」とか笑っていう。


 俺らなら、そんな事をやられたら怒るし、痛いだろうに眉を下げて謝る人間に、おもわず毒気が抜かれた。


『人間なんてみんな、俺や仲間を苦しめるヤな奴のはずだろ? なのに…、なんで俺が悪いみたいに感じるんだよ…』


『みんなが同じ訳ないだろう? 君は本当に、仕方がないなぁ』


 そんな呆れた視線と考えが、紫雫(しずく)から伝わってきた。


 しばらくいなくなってた女性は、怪我の手当てをしてきたらしい。



 紫雫(しずく)は、お腹がいっぱいになるまで食べたのか、怪我の手当から帰ってきたばかりの、俺らに餌をくれた人の肩で寛いでいる。


 あいつの爪尖ってるけど、痛くないのか? ついどうでもいい事に気を取られてしまう。


「君…、人懐っこいカラスくんだね。元気になるまで、家にいていいからね。うーん、名前ないと不便よね…。家にいる間は影山くんって呼ぼう。そんな感じするし…。キツネくんはー…」


 女性は考える素振りをする。


「そうだな…。赤毛っぽいし、(くれない)と書いて(こう)って名前はどうかな? 私の紅葉(もみじ)って名前の一文字からとって! 短い間でしょうけど宜しくね!」


 ウキウキした表情で、紅葉(もみじ)という女性は言う。


『俺とそいつには、(きょう)紫雫(しずく)って、立派な名前が!』


 そう反論したかったけど、正体を明かす訳にもいかないので、「コーン」と小さく反論した。


 影山くんと名付けられた紫雫(しずく)は、『あだ名なんて初めてつけられた!』と満更でもない様子だった。



「私ね、あの扉の向こうでカフェを開いてるの。でも動物飼うとうるさい人いるから、お店開けてる時は、ここか裏庭でおとなしく遊んでてね。だからみんなには君たちの事は内緒ね? だけど今日はお休みだから、自由にしていて良いからね?」


 いたずらっぽく微笑う紅葉(もみじ)さんに、俺は少し笑ってしまいそうになった。


『しばらくここにいてもいいみたいだね。もう少し人間の事知ってから、ここを出ていこう?』


 そう俺に伝えてくる、紫雫(しずく)に、俺は人間の事を知らなさ過ぎるのは、否めないと思いコクリと頷いた。


 そうして、気軽に過ごしていた僕らの正体は唐突にバレてしまった。


 裏庭の畑に足りなくなった野菜を採りにきた紅葉(もみじ)さんに、俺らが変身する瞬間を見られたのだ。


 ご飯をくれ、時間がある夜にはブラッシングしてくれたり撫でてくれる。


 こんな日々も悪くないな。そんな風に思い出した頃、唐突に(あやかし)だという真実がバレたのだ。


 先に延せたらと思い始めた、別れの時期(とき)が、来てしまったのだと覚悟を決める俺達だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ