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南方殲滅



 南方を担当するのはリリム率いる遠距離部隊。


 主に弓術や魔術の攻撃を得意とした上級職につく殲滅型の精鋭部隊である。


 彼女らの任務は5000の兵士を本軍に合流させる前に叩く事である。


 実は黒の方舟のメンバーにおいて、多くの敵を相手にした時の殲滅力はリリムが3番手に入る。


 具体的な順位としては1番にペトラ、2番にクハク、3番目にリリム、4番目に翔太、5番目にネギま、といった形だ。


 そう、殲滅力に関しては光の勇者であるリシアをも上回るのだ。対アンデッド戦のみ、聖女の理沙が上位にくい込んではくるが、それでもリリムが上位であるということに変わりはない。



「砲撃準備!」


 リリムの掛け声に応じ、他の者達は魔法の詠唱や矢への付与などを始める。


「放てっ!……ってください」


 少し締まらないのはご愛嬌。しかし、彼女の合図で失われた命の数を考えれば、ドワーフ達からするとシャレにならない。防ぎようもない圧倒的な暴力が空から降り注ぐのだ。阿鼻叫喚。硬く組まれた隊列はすぐさま崩壊する。


「隠蔽コード8251番。パスワード○Aj*MeTE<=+=I」


 リリムは他者の聞き取れない速さで口を動かす。

 魔法の詠唱のようにも聴こえるそれは、宇宙人達の知る、ある物を生み出す為のもの。それは──


「対軍隊用殲滅兵器002番。【ガトリング砲】起動」


 ガトリング砲。連射速度と持続に優れた武器で、多くの人数を相手にするにはかなり適していると言えるだろう。


 武具錬成には2つの武具創造方法がある。ひとつは純粋な鍛治によって武具を作る方法。もうひとつは想像した物を魔力で擬似的に制作するというもの。


 今回創造したガトリング砲は後者だ。

 本来、これは武器を制作する前に手本としての模型創造スキルである。

 しかしこのスキルさえあれば、理論や原理がわからなかったとしても、想像さえできればMPが尽きるまでは文明の利器を使いこなすことが可能になるのだ。


 本来は非冒険者用のスキルであったが、宇宙人達の知識が噛み合わざることで、チート級の戦闘職へと変わった。

 更には、リリムは魔女。生まれつき高い魔力を持っている。

 武器の完成度はほぼ完璧と言っていい。

 どころか、改良されている分、既存の物よりも優れていると言えるだろう。


 リリムは身の丈ほどのガトリング砲。厳密に言えばミニガンと呼ばれるソレを両の腕にひとつずつ持つと、引き金を引く。


「私、料理は得意ですから」

 

 決して命中率の高い武器ではない。それでも雨のように降り注ぐ弾丸はドワーフの硬い筋肉をも貫き絶命させていく。


 苦痛に喘ぐ叫びが戦場に広がっていく。


「くそっ。防御魔法と物理反射の結界を準備しろ!」


 混乱の最中でも指揮官の声に耳を貸した何人かの兵士は指示に従い魔法の詠唱を開始する。



「魔法の詠唱をしている人から狙ってください!ムムさんは指揮官の狙撃をお願いします!」


「「「了解」」」


 リリムの指示により、魔法を詠唱していたドワーフが次々と倒れていく。


「知性の青き泉よ我に力を【ムム・サファイア・アロー】」


 トドメと言わんばかりにムムが放ったのは水の魔力を纏った弓矢。翔太直伝、弓術と魔術の合成技である。


 飛来する魔矢は敵指揮官の喉元に吸い込まれるようにして着弾し、爆ぜる。



「A班はそのまま攻撃を継続。B班は先程指定したポイントへ!……お願いします!」


 7人で組まれた小隊は更に2つに別れる。

 

「翔太くんはここに戦争をしに来たって言ってたけど……」


 これは戦争などではない。

 ただの一方的な虐殺。リシアの言った通りの世界樹に群がる虫の駆除作業だ。


『称号:駆除人を獲得しました』


「余計な事考えなきゃよかったかも」


  減りゆく魔力に気を掛けながら引き金に添えられた人差し指に力を込めるだけ。

 たったそれだけのことで、目の前では次から次へと命が奪われていく。


 そんな光景をリリムは涼しげな顔で見ていた。

 無駄な命を奪いたくない。そんな甘えた事を言うのはせいぜい宇宙人ぐらいのものだ。

 この世界で生まれ育った彼女等に躊躇う理由など存在しないのだ。


 殺られる前に殺れ。そんな事子供の頃から知ってる常識である。


 ──いけない。油断しちゃダメだ。


 あれだけ強いリシアもペトラも戦場に出ることは嫌がっていた。露骨に顔や態度に出す事はなかったが、それでも2人の様子から心の内はなんとなく感じていた。


「家に帰るまでが戦争だ」


 全員揃って家に帰るまで私たちの戦いは終わらない。



 ──突如、上空に青空が広がる。

 かと思いきや、次の瞬間には雨雲が広がりリリムの頬を濡らした。


「全員、再度気を引き締めて!」


「「「了解」」」


 半ば自分に言い聞かせるようにリリムは声を上げた。

 今は敵を殺す事だけを考えればいい。

 夜が明けたって、雨が降り出したって関係ない。


 ただ、この胸騒ぎはなんだろう──。



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