【少年】
トンネルの手前に架かる橋がある。
朝そこを通りかかると小学校の高学年くらいだろうか、対向車線側に少年が居た。
少年は欄干から川を覗き込むように下を見ている。
(嫌な場所に居るなぁ)
狭い橋。
大型同士ですれ違う時には少し緊張する道幅だ。
あまり人間には居て欲しくない場所だった。
それにしてもこの辺の子供だろうか?
数軒の集落があるから人を見掛けても不思議ではない。
ただ、今迄数え切れない程にこの辺りを通ったが、住民を見るのは初めてだった。
橋の手前、1km程に3軒程の民家と無人駅。
廃校となった小学校。
社だけの神社と地域の墓地。
トンネルを抜けた先の奥手に2軒の農家。
走りながら見える範囲では住民を見たことが無かった。
そんな集落で初めて見るのが子供とは意外だった。
(老人ばかりが住んでいると思っていた)
透はそんな失礼なことを考えながら子供の横を通り過ぎていった。
その日の夕方。
荷下ろしを終えてもと来た道を辿る。
この先はトンネルの向こうに橋がある。
狭いトンネルを抜け、狭い橋に差し掛かると今朝の少年が居た。
「えっ?」
透は声を出した。
少年は朝と同じ場所で川を覗き込むように下を見ていた。
(なんで?何してるの?)
もう疑問しか浮かばない。
透は少年を躱すように対向車線にはみ出して橋を通り抜けた。
(なんだろな)
そう思いながら助手席のミラーで少年を見た。
丁度後続車が少年の脇を走り抜けるところだった。
……避けもせずにすぐ脇を。
(俺にしか見えてないとか)
「まさか……ね」
透はそう呟いて小さく笑った。




