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【旅行者】
たまに不思議な旅行者を見掛ける。
透は大型トラックの運転手という職業柄、北海道旅行をするライダーやチャリダー、バックパッカーをよく見る。
中でも忘れられないのはある日のチャリダーだ。
雨の中、前方からレインコートを着て対向の歩道を走って来た。
(ああ、助かるな)
その様子に透はそう思った。
交通ルールは分かるが、やはり自転車が車道を走ると言うのは車側から見てかなり怖い。
まして豪雨の中となれば尚更だ。
僻地の国道。
人が歩く姿なんてほとんど見掛けないその歩道。
安全の為のルール違反。
正直、有難い。
ずぶ濡れのチャリダーとすれ違う時『頑張れよ』と激励の意を込めて視線を遣ると目が合った。
チャリダーとではなく、荷台に乗った何かと。
顔だけが妙に大きいソレは、チャリダーの腰に短い腕を回して背中に左頬を付けてこちらを見ていた。
……ソレと目が合った。
そしてソレは気持ちの悪い笑顔を透に向けるとチャリダーとともに去っていった。
彼は何処で乗せて来てしまったのだろうか。




