【都市伝説】
「信号待ちをしていたら、道路向こうの女と目が合ったんだよ。で、青になって道を渡り始めたら、女が真っ直ぐこっちに来て、すれ違い様に『見えるのか』って。振り向いたけど女の姿はもうどこにも無かったんだ」
夏の夜、仲間が集まっての恒例の怪談話。
ありきたりの話が語られる。
それでも楽しいのは仲間と一緒だからか、怪談が好きだからか。
「山小屋で部屋の四隅にそれぞれが立って、最初の1人が壁に沿って真っ直ぐ隅に向かって歩くんだ……」
全国的に有名な山小屋の話の後、地元では有名な怪談話が始まった。
それは北海道でも最恐かつ最狂の部類に入る心霊スポットを訪れた若者達の話。
あまりに有名過ぎて胡散臭い、都市伝説的な怪談だった。
「で、そいつらはナンパした姉ちゃんをそこに放置して車で逃げたんだよ。悪いイタズラだよな。翌朝になってやっぱりマズイって話になって姉ちゃんを迎えに行ったら座り込んでいたんだ。何かとんでもないものを見たらしくて、髪の毛は真っ白になっちまって、頭もおか○くなって精○病院に入れられて、治らないまま死んじまったんだってよ」
後味の悪さも天下一品な話。
どうせ作り話。
そうは思ってもこの話の下衆さ具合に透はどうしても訪れる気になれないでいた。
「……てるよ」
小さな声で仲間の女の子が何かを言った。
皆の視線が彼女に集まる。
「生きてるよ」
今度は大きな声でハッキリと言った。
「私の従姉妹なの。まだ生きてるよ」
「マジか」
「嘘だろ」
周囲がざわつく。
「お見舞いに行ったのはずっと昔だけど、病室の隙間という隙間を全部塞いでいたのを覚えてる」
あまりの衝撃に彼女の語りを覚えていない。
ただ、あの場で明かされた彼女の話にもう誰も何も言えなくなっていた。




