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怪 談   作者: 冬月 真人
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【花火見物】


花火は見たいが人混みと渋滞は大嫌い。

ワガママ体質の沢木家が花火見物の穴場を発見して幾度目かの夏。

それは高台にある墓地。

そこは和恵の母親の眠る墓地でもある。

別段悪さをする訳でも騒ぐ訳でもないのだから良いだろうと恐れを知らない沢木家の面々。

あれだけ不可思議なことが起こる家。

墓地で『出る』方が納得出来るというもの。

今年もコンビニでオヤツもジュースも買い込んで、夜の墓場へやって来た。


「あら」

和恵が何かに気付いて声を上げた。

皆が一斉に和恵の視線の先を追う。

「あら」

「ああ」

「あらら」

落胆の声が次々に上がる。

残念な事に今年は先客が居た。

墓地の入り口から右に行った奥。

乗用車のヘッドライトが光っていた。

沢木家はそのまま出入口付近に車を停めて右奥の先客と距離を置いた。


花火大会の会場の目印は大きな吊橋。

そのすぐ脇からオープニングの花火が数発夜空に咲いた。

僅かに遅れて音が響く。

ナイアガラのような仕掛け花火は望めないが、打ち上げるものなら全て楽しむ事が出来た。


小一時間ほどしておかしなことに気付いた。

先客がいなくなっていた。

出入口は一箇所。

沢木達はその出入口に居る。

誰も通っていない。

徒歩ならどうとでも出て行けるが、車は出入口以外は通ることが出来ない。


「出たね」

「出たな」

「だよね」

「だよな」


それぞれに口にした言葉。

そうしてすべきことはひとつだった。


「そろそろ帰るか」

沢木家一行は早々に帰路についた。









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