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怪 談   作者: 冬月 真人
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【若気の至り・後編】


嫌々ながらも同行せざる理由は足がない。

終電もとっくに行ってしまった丑三つ時。

タクシーなんて拾おうものなら肝試しよりも寒気がする位の金額は必至だ。

否応なくホラーツアーは続く。


そしてそれは赤坂のあの場所で起きた。

「これだけ周っても何も見ないな」

「俺たち霊感ゼロかもな」

「ハタチ越えても見ない奴は見ないらしいぞ」

「っつーか眠いな。そろそろかえっか?」

皆、あれこれ言いながら車に乗り込む。

運転手の眠気がツアーの終わりを決めた。

(ようやく帰れる)

透は安堵した。

何事も無かったことと、連中が廃墟に侵入するような肝試しをしなかったこと。

そして帰って眠れること。

ホッとすると急に身体が重たい。

後部シートに沈むようにもたれながら眠気を感じていた。

心地よい眠りが意識を支配し始めた頃、急ブレーキの衝撃に透は意識を引き戻された。

「何、何、事故?」

状況がよく飲み込めない透に隣に座っている同僚が「則行のりゆきが居ないんだよ!」と助手席を指差した。

確かに助手席は空いていた。

「でも乗ってたじゃん」

透は言っても詮無いことを思わず言った。

しかし、あの時は皆がそれぞれ話しながら間違いなく車に乗り込んだはずだった。

観光バスのツアー客じゃない。

たった4人。

しかも助手席の人間が乗っていない事に気付かない訳が無い。

だが、助手席はもぬけの殻だ。


車は引き返すと最後の場所、赤坂に向かった。

時間はまだ10分も経っていない。

置き去りにしてしまった則行のもとに急ぐ。

少しして煤けた建物が周囲の明かりに浮かび上がって見えてきた。

「もう少し」

誰かが言った直後、対向車線の歩道を歩く人影が見えた。

「居た!」

車はUターンをすると歩道を歩く則行の横へ停まった。

全員が飛び降りると口々に謝った。

則行はそんな透達に「大丈夫だったか?」と言った。

「大丈夫だったかはお前だろ。本当に済まなかった」

同僚がそう言うと「4人居たんだよ、車に」と則行が言った。


どうやら乗り込んだ誰かを則行と思い込んで出発していたらしい。

則行は何故か4人乗っている車を呆気に取られて見送った。

これが山奥ならパニックにもなった話だが、大きな通りに面した廃墟。

則行はヤバイと思いつつも冷静で、とりあえず車が向かった方へと歩いたそうだ。


それにしても助手席には誰が乗っていたのだろうか。




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