【お札・中編】
翌朝、二日酔いで頭のガンガンしている由佳を連れて食堂へ行くと、明らかに具合の悪い顔をした美香と沙月がお粥を食べていた。
バイキングのトレーに梅干しの乗ったお粥のみが鎮座している。
「どうしたの?」
同じメニューをチョイスした由佳が頭痛の合間を縫うように声を出して尋ねた。
「寝不足……」と言う美香の後に沙月が続ける。
「金縛りよ、金縛り。あと、ヘンな夢も!」
「ふたり揃って?」
「夢は私だけなんだけどさ、ふたり揃って金縛りって絶対におかしいよね」
沙月はまるで由佳に文句を言うように口を尖らせている。
美香もうんうんと頷き、涼子はただ黙々と朝食を取る。
「うっ、涼子先輩。私、今朝は玉子の匂いムリです」
鼻腔をかすめた香りに由佳がへこたれた。
「あんなに飲むからよ」
呆れ顔の涼子を想像した由佳だったが、意外にも涼子は笑っていた。
「アンタは涼子さんと酒盛り?」
「涼子さんは飲めない人だから、ひとり酒盛りよ」
沙月が本気で呆れ顔だ。
「ああ、引っ掛ったダメ男の愚痴で一晩中クダ巻いてたのね」
具合が悪くてもこういったイジリは元気が出る。
そんな美香の揶揄に由佳は思わず言ってしまった。
「だってお札が!」
(しまった!)と思った時にはもう遅い。
『詳しく聞きましょうか』と完全に取り調べモード。
逃げ場は無かった。
「額縁の裏板!?」
「声が大きい!」
由佳は昨夜の部屋での出来事を全て話した。
すると沙月は「だからかぁ」と言って夕べ見た夢の話を始めた。
それは自分が寝ている部屋の夢。
黒い霧のような影が壁から染み出るように現れて、そのまま部屋を彷徨うでも無く真っ直ぐに反対の壁に進んで行く夢。
そのまま壁の向こうに行くのかと思って眺めていたら何故か壁で止まり下に下りる。
するとまた新たな影が現れて同様に下へ。
何度も何度も同じことを繰り返すうちに黒い影が床の上に溜まってうず高くなる。
そうしているうちに寝苦しさに目を覚ました。
夢に見た壁を見ようとしたが身体が動かなかった。




