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怪 談   作者: 冬月 真人
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【世間話・前編】


御堂聡志みどうさとしは和恵の義兄。

姉の夫で美容院を営んでいた。

仕事熱心な上に多趣味。

人生の楽しみ方をよく知っている。

成功者の見本のような人だ。


その日は釣り仲間との遠出。

仕事終わりの夜から道東へ出発。

待ちに待ったヤマメの解禁日。

今年は上手い具合に定休日の火曜だ。

自慢のシルバーのパジェロには釣り道具の他、アマチュア無線や携帯コンロ、その他様々なアウトドアグッズが積まれている。

そして夏でも夕刻からは一気に冷える北海道。

防寒具の用意もぬかりはない。

聡志は店のシャッターを閉めて従業員への終礼を済ますと一目散、パジェロで駆け出した。

妻の悦子と娘の万理江、従業員一同はそんな聡志を笑って見送る。


客商売は趣味すらも仕事のツールだったりもする。

それ故に多趣味な聡志だが、釣りは本当にプライベートな部分の趣味。

美容院に来る奥様で釣り好きな奥様は稀だ。

「今回はやっと自分の為の趣味ですね」

「先生のホントの休みね」

気付いてないのは本人だけ。

聡志には本当の息抜きが必要なのだ。

だから誰も呆れたりせずに見送ってくれた。


約18時間後。

そんな温かい見送りの甲斐も無く、クーラーボックスにはヤマメの姿は無い。

形の良いニジマスは釣れたが本命には出会えずに帰路についた。

カーブの連なる峠に入ると太陽が空を真っ赤に染めて輝いている。

眩しい西日から目を路肩に逸らす。

するとその先、ガードレールの下の斜面を降りた所に親子が立っていた。

こちらを見上げているようにも見える。

聡志は同乗している釣り仲間たちに「あれは何をしてるのかな?」と正解の分からない質問をした。

仲間たちは「さあ?」とか「山菜採り?」とか「迷った?」とか半疑問形の返事。

「それにしても軽装だよな。北海道を舐めてる本州からの旅行者かな」

半袖姿だった彼等の格好は道民ならあり得ない服装だ。

現にパジェロはヒーターを入れて走っている。

「日が傾くと一気に冷えるのを知らないんだろうなぁ」

車内では同情混じりの冷やかしが行き交っていた。

その夜遅くに無事に帰宅した聡志は戦利品のニジマスを捌いて燻製の下準備をして寝た。

いつも通りの休日。

当然こんな日の出来事なんてものは日々の暮らしの中に埋れてしまう。

何かのきっかけがなければ……



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