【サンタの鈴】
少年時代。
イブの楽しいパーティーも終わり、子供にとってのクリスマス最大のイベントである就寝の時間。
なんせ寝なければ来てくれないサンタクロース。
透は涼子と枕を並べて床についた。
眠れない。
楽しみにし過ぎて眠れない。
目を強く瞑ってみる。
そんなことをすれば余計に眠れないのだがそこは子供。
プレゼント欲しさに必死だった。
もっとも昭和時代の子供。
必死な努力をせずともそんなに遅くまでは起きていられない。
8時や9時には寝るように躾けられている世代だ。
いつの間にか眠っていた。
プレゼントを見つけたのは涼子が先。
突然明るくなった部屋と涼子の嬌声に透は起きた。
既に包装紙を開けてプレゼントの中身を見ている。
透が枕元を見ると靴下の上にプレゼントが乗っていた。
跳ね起きてプレゼントを手にしたその時、外から不思議な物音がした。
シャンシャンシャンシャン。
「サンタクロース!」
涼子が声を上げた。
確かにサンタが乗るトナカイのソリのあの鈴の音に似ている。
透は窓を開けた。
市営住宅の2階の窓から顔を出すと、螺旋を描くように雪が舞い落ちて来る。
その先は漆黒の闇。
シャンシャンシャンシャン。
鈴の音だけがずっと鳴り響いていた。
あれから数十年。
涼子はあの日のメルヘンな不思議を楽しげに話す。
透はあの鈴の音の正体を知っている。
大人になってようやく気付いたメルヘンの正体。
涼子にはナイショだ。
もちろん読者のみんなにもね。
でもひとつだけ。
あの音はサンタと同じ。
みんなの幸せの為に鳴り響く音。




