表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪 談   作者: 冬月 真人
21/103

【峠】



小学六年生の透は寝込んでいた。

妹から染った水疱瘡だ。

見事に完璧に感染していた。

当然だ。

妹の残した天ぷらうどんのエビ天を食べたのだ。

笑える程にアホだが小学生だから仕方が無い。


「子供の発疹としては異常なんですよ」

診察した医師が母親に説明していた。

その話を聞きながら(だって直に感染したし……)と口には出せずに落ち込む透だった。

身体中、無数に出来た発疹。

まるでエアークッションのプチプチで梱包された壊れ物の宅急便のようだ。

ただ、当時を思い返すと痒かった記憶が無い。

だから水疱を潰すことも無く、そんな悲惨な状況の中、現在ひとつの痕も残っていないのは不幸中の幸いだった。


話を当時に戻そう。


感染して数日後、熱が上がり始めた。

それまでも38度あたりだったのだが、39度を越えて40度に迫る勢いだった。


その夜、透は不思議な感覚に目を覚ました。

布団が硬い。

敷布団も掛け布団も硬い。

それも足元だけ。

まるでゴツゴツとした岩に挟まれているような感覚。

気持ちが悪くて膝を曲げて足を縮めるとそれも合わせて上がってくる。

ワケも分からず恐怖に耐えていると、やがて睡魔に支配されて気が付けば朝だった。


熱は相変わらず39度後半。


透は夕べの出来事を母親に話そうかと思案していたが、結局話すのをやめた。

何故か話す気になれなかった。


そしてまた夜が来た。

透は布団の感触を何度も確かめた。

柔らかい。

間違いなく布団だ。

安心して眠った。

再び足が挟まれるまで。


(またか!)

目を覚まして総毛立った。

もう膝上まで挟まれている。

ワケが分からない。

が、恐怖に耐えるのは今夜はやめた。

透は太もも付近の布団を拳で殴り、ジワジワと上がってくる感触を止めた。

そして上がってくる何かを蹴るように足をバタつかせた。

地団駄を踏む姿に似ていたかもしれない。

そんな抵抗の甲斐あってか岩のようなゴツゴツは次第に消えていった。


翌朝、何故か熱は下がって平熱になっていた。

それに伴い、身体中の発疹も波が引くように消えていった。


数日後、母親にゴツゴツの話をした。

助し驚いた表情をみせた母親は透が幼児の頃の話を始めた。


「ある日ウチに来た占い師がね、【透】って字を変えないと中学までに病気で死ぬって言ってたのよ」

衝撃の告白をサラッと言われた。

「胡散臭く何かを買えって占い師じゃなくて、旧字体に変えれば問題無いって言っていたのよね」


占い師はそれだけ言うと見料も取らずに帰ったそうだ。

タロットカードの占い。

そう言えば母はカード占いにハマっていた時期があった。

きっとその占い師の影響なのだろう。

が、影響を受けた割には透の名前は旧字体ではない。


「透は自分で掴んだのよ」

そう言う母の言葉に当時は納得したが、思い返すと(そりゃあないでしょ)という気持ちになる透だった。


以来、41度に達してもゴツゴツはやって来ない。

あれは所謂いわゆる『峠』ってやつだったのだろうか?






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ