【高校時代の思ひ出・前編】
懐中電灯の明かりに白く浮かぶ花。
1―Bの机。
きのう迄そこに居た少女は再びこの席に着く事は無い。
21時を回った頃、透は校内の巡回をしていた。
学祭を控えてのこの時期、生徒会役員としての仕事だ。
正直言えば、今日はここの見回りはしたくなかった。
見事ジャンケンに負けたのだから仕方が無かった…
訃報は登校してから知った。
昨夜20時過ぎに一年生の女子生徒が事故で亡くなった事を。
面識の無い下級生ではあったが、初めての学祭を楽しみにしていたという彼女を思うとやりきれなかった。
良くない予感はあった。
今回の学祭は何かが起こるような気はしていた。
反面、迷信だとも思っていた。
その理由は四ッ谷怪談。
各学年事に演劇を披露するのだが、今回の一年生の演劇の題目が四ッ谷怪談だった。
上演にあっては御祓いが必要だと言うのは有名な話だ。
もちろん公立の学祭の演劇にそんな予算など無く、当然ながら御祓いはしていなかった。
偶然だろう。
一年生の演劇が四ッ谷怪談で、一年の生徒が事故死したのは偶然なのだろう。
そして、その生徒の担任が演劇の担当だったことも…
気もそぞろ。
そんなことを思いながら、ひと通りの見回りを終えた透は生徒会室に戻った。
おかしな事に誰も戻っていない。
一番遠くのフロアを見回りした透が一番早いのだ。
【何かあった!】
そう思った。
透が部屋を出ると先生と先輩方が緊迫した様子でやって来た。
「どうしたんですか?」
透が尋ねると先輩のひとりが答えた。
「電気が点かないんだ」
「何処のですか?」
「体育館だよ」
透も先輩達に合流すると体育館へと向かった。




