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怪 談   作者: 冬月 真人
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【高校時代の思ひ出・後編】

体育館の電気は独立している。

校舎本館とはまったくリンクしていなかった。

その為ブレーカーも電気メーターも別に備え付けてあった。


「うわ…」

透は思わず言った。

想像していたよりも深い闇がそこにはあった。

非常口の緑の光も消火栓の赤いランプも消えていた。

新築して3年目。

管内最新鋭の設備を誇る校舎も電気があってこそだった。

懐中電灯の一条の光を頼りに歩く。

まるでそこに細い道があるかのようにピッタリと身を寄せあって皆で歩いた。

一歩でも横に広がれば奈落にでも墜ちるような錯覚があった。

 

ブレーカーを見つけた。

先輩が脚立を組むと先生が上に登った。

下から照らした明かりで何となく分かっていたが、ブレーカーは落ちてはいなかった。

次に体育館外壁にある電気メーターを見る。

とりあえず非常であるから上履きのまま外に出た。

次の瞬間、皆言葉を呑んだ。

メーター下の銀色の回転盤がクルクルと勢いよく回っていた。

体育館の照明の全てをつけてもこんなに速く回るのだろうかと思うほどの勢いだった。

「…戻るぞ。」

先生の短い一言に皆無言で従った。


生徒会室には重たい空気が流れていた。

皆あの子の事を思っているのだろう。

部屋の窓からは1―Bの行燈行列の山車が見えた。

街燈の下、オレンジ色に浮かぶ山車。

「きっと…」

書記長の愛さんが呟いた。

「あそこで作ってたんだよね」

「俺さ、現場に花を手向けて来たんだ」

そう言ったのは生徒会長。

「手押しの信号でさ、横断歩道は書いてあるんだけどさ信号にはカバーが掛かってたんだ」

「来週だよ、来週から使えるんだ、その信号」

家が近所だと言う小島先輩が答えた。

「80km/hだってさ。一般道だぜ!普通は60だろ」

「あそこは40なんだ。住宅街で、A高校の通学路だし…」

皆、口々に話し始めた。

高校生の乏しい交通法規の知識ながら熱くなった。

「アレ、点いた」

由美子先輩が外を指す。

その先には煌々と電気を灯した体育館があった。


職員室へ内線を入れた。

「直したんですか?」

『何が?』

「いや、体育館の電気…」

『直ったのか?』

「みたいですけど…」

『誰も直していないが…今行く』


廊下で先生を待って体育館へ再び向かった。

明るい。

眩しいくらいに明るい。

「いやぁ、良かった」

異口同音に喜んだ。

廊下を歩きながら安堵からか話し始める。

「でも、不思議ね。どうして直ったのかしら?」

「接触とかでないの?」

「どの道明日には業者を呼んで点検させるから、お前達も今日は帰れな。疲れただろう」

そんな会話の中、透はある事に気付いた。

それは言ってはイケナイ事だったのかもしれない。


「…でも、誰が照明のスイッチを入れたんですか?」



その夜から暫くの間、役員全員が先生達の車に分乗して自宅へ送ってもらう事になった。


【交通安全宣言モデル校】

その後、この名を掲げて取り組む事を緊急生徒会総会で可決した。

以来、在校生の重大事故は幸いにして無い。




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