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1章 7話 自由。

「これはなんだ...?」


一面に広がるガラスの部屋。

部屋は何十、いや何百と広がって終わりが見えない。


「ここで羽の元になる人間を飼育しているのですよ」


飼育...

赤ん坊がひしめく部屋。

私たちと同世代であろう人の部屋。


こちらを物珍しそうに見てくる。

その目に活力はない。


いきなり一点に集まる。

そこには餌と水の出る管。


手の甲には番号。


床は黒い水が溜まり、虫が蠢いている。


人としての自由

人としての権利

人としての食事

人としての心


私たちが当たり前に持っているものを、


彼らは___持っていなかった。


ただ愕然と立ち尽くすしかなかった。


「どうですか?これが農園の本来の部分」

「圧巻でしょう?」


この人間は正気なのか?

いや私の頭がおかしいのかもしれない。


「ええ、そうですね」


ルシウス殿下?...


「ただまだまだ農園はこれからですよ」


これ以上のものがこの世にあるのか?

喉の奥が焼けるように痛い。

進むにつれ空気が重く暗くなる。


「ここが収穫所です」


大きな魔法陣

その下の部屋に人が押し込まれていく。


扉を閉め。

ラートンが呪文を唱える。

「時間操作魔法ーー時間加速(クロノリープ)


時間...操作?


次の瞬間

頭を壊すほどの悲鳴。

それが振動となり建物を揺らす。

部屋の中が羽へ変わる。


胃の中がひっくり返る。


これはーー現実なのか?


「この爆音!最高でしょう!」


ルシウス殿下は何も返さずただ羽を見つめ淡々と、

「どうやって羽に変えた?」


ラートンは待ってましたと言わんばかりに話し始めた。


「時間加速を使って人体の形を保てなくするほどの生え替わりを起こすんですよ!」


「抜け羽を培養するというのは?」


「あれは庶民へのガセです」


「なんでこの方法を?」


「抜け羽にはほとんど魔法因子が残っていませんから燃やしてもエネルギーにはならないんですよ」


「見させてくれてありがとう、すまないが少しエリオットと周りを見てきても良いか?」


「ええ、もちろんですとも」


私は殿下に連れられラートンから遠ざかっていく。


「ルシウス殿下!あまり遠くへ行っては」

「ラートンはもう見えないな...

空間操作魔法ーー空間隔離(スペースアイソレート)


周りが見えない壁に包まれる。


「ルシウス殿下?これは...」


「エリオット...あれを許せるか?」


「それは...」


「エリオットは国のため、あれを許せるか?」


「私は...できません...」


「よかった、エリオット。私もーー無理だ」

殿下がいつもの調子に戻っている。


「それにしても、あの時間加速魔法は...」


「王族家しか使えない2大魔法の一つ、時間操作魔法」


「でもそれは」


「今この国では兄様しか使えない」


「ということはカシウス殿下もこれを知って...」


「おそらくそうだろうな...その上で来させた」


ため息を吐き天を仰ぐ。


「これがこの国の真実ですか」


「ああそしておそらくこれも一面に過ぎない」


「一面?」


「7層でこれなんだ5層以下がどんな扱いを受けてるのか...」


想像するだけで恐ろしい。


「エリオット、俺は決めたぞ」


「ここを解放する」


「待ってください、そんなことをしたら!」


「分かってる、だから今じゃない」


「力をつけ、この国で反乱を起こす」


殿下の指が掌に食い込んでいる。


「その時は私も一緒に」


「心強いよエリオット」

少し笑っているのを見て安心した。

ただすぐに硬くなった


「エリオット、反乱のために目を背けるな。細部までこの施設を見ろ」


「承知いたしました」


「あと最後に」


「どうかしましたか?」


「もう私に自由はいらない」


「それはどういう意味ですか、殿下...?」


その表情は、いつもの殿下ではなかった。


隔離していた壁が消える。

ここからはもう何も話せない。


反乱

殿下の最後の言葉

自由はいらない

頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。


急いでラートンの元へと戻った。


「ずいぶんと長かったですね」


「すまない、想像以上に大きくて見回ってしまった」


「いえいえ、謝るほどのことではないですよ!」


「ありがとう」


「さあさあ、先へ進みましょう」


まだ終わらないのか...


変えられた羽とは真逆へと進んでいく。


少しずつ汚れが減っていく

そして現れたのはおかしなほど真っ白な通路。


「どこへ向かってるんだ?」

情報を引き出す。

冷静に淡々と。


「研究棟です」


「何を研究してるんだ?」


「基本的には動力炉の魔法陣研究とエネルギー兵器開発です!」


兵器?


「魔法陣はわかるが、エネルギー兵器?とはなんでしょうか?」


「それは今までとは革新的に異なるもので、魔法エネルギーを兵器に集約し発散させる事が出来るんです」


「それは今までの固有魔法とは何が違うんだ?」


「これをご覧ください」

ラートンは腰につけていた筒のようなものを取り出した。

そして前へかざした瞬間


地を揺らすほどの衝撃

空を切り裂く轟音


あまりに大きな力に唖然とする。


「これ一本で大体500人分ですかね」


さらっと発したその一言。

見本の1発。

その一言で、衝撃が吹き飛んだ。

それと同時に、別の恐怖が襲った。


殿下の拳に爪がめり込み血が出ていた。


「これじゃあ、1発打つのにあまりにも消費が多すぎるんですよ、それにエネルギーが大きすぎるのか途中で霧散してしまう」


「まあ、実験段階のポンコツですね」

笑っている...


「ああ……そうだな……」

声が震えている。


「ということもあって、今はこれを利用した移動手段というものを最近は研究しています」


「移動手段?」


「この力を推進力にし20層から数十分で9層に到達出来るようなものを作っております」


「10層と15層の減速区域を高速で突破できるという事か」


10層と15層には結界とは別に飛行妨害魔法が施されている。

下降、上昇ともに飛行速度が20分の1まで落とされている。


「まあ空間魔法なら関係ないでしょうね」


殿下の魔法。

王家のみ使える2大魔法の一つ。


空間操作魔法。


あらゆる空間を隔離し操作する。

魔法攻撃、魔法妨害を一切受け付けない。

時間操作魔法と並び最強の魔法。


「いや、移動面では重力魔法での加速の方が大きいかな」


「減速区域では無意味ですが」


そう話している間に一つの大きな扉が現れた。


「ここから研究棟です」


ラートンは壁に手をやった。

扉の一部が光る。

そこに手をかざした。


勝手に扉が開いていく。


見たことのない技術。

王宮にすら、こんなものはない。


本能が関わるなと告げてくる。


扉の向こうがうっすら見え始める。

大量の白衣を着た者たち。

その視線の先には一つのガラスの部屋。


ただ先ほどとは違う。


そこには羽のない小さな少女が座っていた。

ーーそして、ただじっと殿下を見つめていた。

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