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後宮の縁切り女官 ~悪縁を断つ救国の巫女は皇弟に溺愛される~  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!


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え……食事も出るの?

 

 赤面する雪華を、朱翠影はしばらくのあいだ物柔らかな瞳で眺めていた。

 やがて彼が、


「後宮でどんな話を仕入れたかはあとで伺いますので、その前にあなたの家に向かいましょう」


 と丁寧に促す。


「どこかに官吏かんり用の宿舎でもあるのですか?」


 すると――。


「ありえません。官吏かんり用の宿舎はありますが、雪華殿が寝泊まりするには、安全上問題があります」

 安全上の問題? だけど安宿より、よほど安全じゃないかしら?


「行きましょうか」


 再度促され、向かう前にあれこれ訊いても悪いかと、雪華は質問はやめて頷いた。


 * * *


 広安こうあんの街区をふたり並んで歩いた。

 庶民が使う市場の『西市』付近とは、雰囲気がまるで違う。あちらは雑多で人が多かったが、こちらは整っていて閑静かんせいである。方角的にも逆で、東に向かっているようだ。

 そう歩くこともなく、目的地に着いた。


「――ここです」


 朱翠影にそう言われ、雪華は真顔で彼を見返した。


「あの……ものすごく大きなお屋敷なのですが」


「私の家です」


 ん? いえあの、朱翠影の家に案内してほしいわけじゃなくて、私が住む家に連れて行っていただきたいのです……。

 彼が続ける。


「警備は厳重ですし、あなたが住むには最適なところだと思います」


「ええと……私は朱殿の家に同居するのですか?」


 どうか否定してくれ、の気持ちで問うと、


「お好きな部屋をお選びいただけますよ」


 想定よりおそれ多い答えが返ってきた。皇帝の弟の屋敷に、団子屋の娘が同居?

 おかしい……朱翠影の過保護が怖い。


「それならせめて一番小さな部屋で」


「却下です」


 お好きな部屋をお選びいただける、あなたそう言いませんでした?

 話が噛み合わないせいか、彼がため息を吐く。


「私としては、主屋おもやの一番良い部屋をお使いいただきたいのですが……無理強むりじいはいけませんね。離れもありますよ」


「では離れで」


 答えながら、雪華は変な会話だと考えていた。

 反対のほうがしっくりくる――図々しい居候が「もっと良い部屋を」をねだり、泊めるほうが「一番狭い部屋だ」と断るほうが。


「寝泊まりするのは離れで良いですが、食事は主屋おもやでおとりになってください」


 え……食事も出るの?

 ぎょっとしたけれど、土地勘がないから食事処も知らないし、甘えるしかないか。


「ありがとうございます」


 結局、礼を言って受け入れた。



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