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後宮の縁切り女官 ~悪縁を断つ救国の巫女は皇弟に溺愛される~  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!


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都に着いたら慶昭帝がじゃれついてきた

 

 ――そして色々あって現在。

 雪華は無事都に辿り着き、宮城で堅苦しい礼をとっている。

 たった今皇帝から「飛頭蛮ひとうばん退治」を命じられたところだ。後宮の安寧を保つため、それが必要らしい。

 慶昭帝は雪華に『救国の巫女みこ』としての役割を期待している。そんな事実はないと雪華が否定しても無駄だ。慶昭帝が「お前は救国の巫女である」と決めてしまったのだから、あとは事実のほうを捻じ曲げて、雪華がその役割を果たすしかない。

 幸いにもと言うべきか、あるいは不幸にもと言うべきか、雪華は姐姐ジェジェから託された摩訶不思議なはさみを持っている。

 これは『縁』に働きかける不思議な代物なので、雪華としてはこの品を有効活用して、慶昭帝が望むとおりの結果を出す必要がある。

 つまり後宮に絡みついている、『災』という『悪縁』を断つわけだ。


 雪華は頭の中で状況を整理した。


 ――私はこれから宮城で働く。宮城には外朝と内朝がある。外朝はまつりごとが行われる公的なところで、内朝は皇帝の私的な空間だ。内朝には男子禁制の『後宮』も含まれ、ここでは皇帝の妃たちが多数暮らす。

 ――私は外朝と後宮、そのどちらにも行ったり来たりできる、特別な身分を皇帝から賜った。

 ――後宮は閉ざされた場所で、入ったが最後、以降は外に出られなくなるのが普通だが、私は自分の意思で好きに出入りすることができる。

 ――外朝での私の役職は『書令司しょれいし』となるらしい。そして外朝では部下十名も賜った。その中には皇帝の弟である朱翠影も含まれている。

 ――後宮で活動する際は、『宝林ほうりん』という位を賜った。

 ――これから私は飛頭蛮ひとうばん退治をする。

 ――人食いあやかしの飛頭蛮を目撃したのは、後宮の妃の中でも大物である、おう賢妃けんぴ、とのこと。まずは目撃者の話を聞くため、後宮に行き、おう賢妃けんぴに会う必要がある。


 これからすべきことを考えていると、


「――ところで、雪華」


 玉座に着く慶昭帝から、声をかけられた。


「都までの旅はどうだった?」


 問われた雪華は慎重に慶昭帝を見上げた。

 凭几ひょうきに片肘を置き、頬杖を突く慶昭帝は、口元に悪戯な笑みを浮かべている。本人は気安いつもりかもしれないが、雪華からすると、尾を揺らす虎にしか見えない。隙を見せれば喉笛を食いちぎられそうで、危険極まりない。


「おかげさまで快適に過ごすことができました。ありがとう存じます」


 答えながら旅先で見た、ほむらのように咲き乱れる羊躑躅レンゲツツジが頭の中に浮かんだ。

 それをきっかけにして、たくさんの色あざやかな光景が浮かんでは消えていく――……こんなふうに思い出がとめどないのは、旅路の一瞬、一瞬、すべての時間が、雪華にとって特別だったからだろうか。

 雪華の礼を聞き、慶昭帝が煙たげに手のひらを振る。


「つまらん社交辞令は不要だ。私はもっと面白い話が聞きたい」


「面白い話――でございますか」


「翠影との距離は縮まったか?」


 うん……どういう意味だ?

 訝しげに見返せば、慶昭帝のにやにや笑いがひどくなる。


「初夜はどうだった?」


 初夜? 故郷を出て、初めに宿泊した場所での思い出を問うているのだろうか?

 旅の初っ端から振り返って語らせる気か? 正気か慶昭帝――雪華は呆気に取られる。

 一から詳細に語っていては、日が暮れるぞ……。



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