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【書籍化決定】後宮の縁切り女官  作者: 山田露子 ☆ヴェール小説4巻発売中!


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団子屋の娘、なぜか出世する

 

 その鋏《はさみ》は土より生まれ、水を通り、現世《うつしよ》に現れた。

 名を、水月剪《すいげつせん》。

 目に見えぬ因果を断ち、理《ことわり》を違《たが》えるものなり。

 鋏を振るいし者は、等しくその報いを受ける。


 * * *


 大銅鑼《おおどら》を叩く音が宮城全体に響き渡った。

 ハッとして気持ちを引き締める。

 十六歳の雪華は、どういう訳か今、国の中心である広安《こうあん》城にいた。

 宮殿の玉座には杜陽《とよう》国を統《す》べる若き皇帝――朱《しゅ》喜皓《きこう》が鎮座《ちんざ》し、十一名の臣下を見おろしている。

 礼をとる臣下たちの一番前にいるのが、辺鄙《へんぴ》な山奥から都に出て来たばかりの雪華なのだった。

 ひと月前まで「団子屋の娘」と呼ばれていた自分が、一体なぜこんなことに――……。

 慶昭帝が気まぐれに唇の端を上げる。皇帝は明らかにこの状況を楽しんでいた。


「烏解《うかい》出身の団子屋の娘、向《こう》雪華《せつか》――そなたの功績を評価し、部下十名を与える。それに伴い、そなたの外朝《がいちょう》での役職は『書令司《しょれいし》』とする」


 役職……やだ、嘘でしょう?

 頭《こうべ》を垂れ慶昭帝の話に耳を傾けていた雪華は、背筋が凍る思いをした。

 こんな話、きっと誰も信じないわ……山村育ちの団子屋の娘が、突然部下十名を束ねる官吏になるなんて!

 雪華は自分の右斜め後ろにいる、端正な青年の存在を強く意識した――先に賜《たまわ》った部下十名の中には高貴な『彼』も含まれているのだ。

 ああ、なんてこと……眩暈《めまい》がする。



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