蜂蜜採集
ラストのドロップした爪によって、賢さがケンチャンの五倍にもなったマリリン。これでスキルを使いたい放題だ。
ラストの一件以来、ケンチャンとマリリンはパーティーを組み、行動を共にすることが多くなった。
しかし、折角の鬼裏。初めて出会う敵モンスターは自力で倒してみたい。結果として最初は一人で挑み、次からパーティーを組んで挑む、というのが定着してきた。
今日も朝早くからケンチャンが、一人で街道へ出ていく。
ファイヤービーが襲ってくる。針の部分が炎になっているモンスターだ。ファイヤービーのいるところには、決まってファイヤービーの巣が近くにある。あ、見つけた。ファイヤービーの巣だ。
素早さ45もある俺には、ファイヤービーの動きも余裕でついていける。スパッっと一撃で切ると1Gと火種を落としてくれる。
そのままファイヤービーの巣の近くまで行くと
「一閃」
で、巣を落とす。
そして巣を輪切りにしたのだった。当然ファイヤービーの逆襲に合い千匹程のファイヤービーを相手にすることになるのだが、手こずりながら全部倒しても、ドロップ品は100Gにも満たない。ファイヤービー、一匹ずつを相手にした方が収入の面では効率が良いのだ。
だが少々炎に焼かれても、貰える金額が減っても巣を回収することに意味があるのだ。その蜂蜜が美味しいからだ。
ということで蜂の巣を回収することに成功した。蜂蜜の味は露店商から買ったので、よく覚えている。濃厚でいて、かつスウィートな味がするのだ。
この後四つの蜂の巣の採集に成功した。当然ながら、ドロップ品としてゴールドも貯まっていく。
街中の蜂蜜製造機のところへやって来た。輪切りにした蜂の巣をセットする。ハンドルをくるくると回すと、中の蜂の巣もくるくると回っていく。遠心分離機で蜂蜜が出てくる。
「おお、綺麗な色だな」
濃厚な色をした蜂蜜を小瓶に入れていく。
調べた結果、蜂蜜には自然回復効果とスタミナ回復の効果があった。取れるだけとって、小瓶をアイテム欄に収納した。
ところで、スタミナについてだが、スタミナはスキルを連発する時の他に、走ることなどでも減っていく。だからこそ、スタミナ管理は重要なのだ。
「これだけ蜂蜜があれば十分だろ」
これから第二のボスに挑みたいが、その前に防具を一新させておきたい。ファイヤービーのおかげで、今の革装備には穴が空いているのだ。
一度アリアへ戻る。
「こんにちは、何か良い装備はありますか?」
そう言って、来たのはイツキのお店だった。
「こんにちは、ケンチャン、さん?」
「あ、そこは普通にケンチャンで大丈夫だから」
「えー、それではケンチャン。今日はどんな装備をお探しで?おや?装備に穴が空いていますね」
「そうなんだよ。ファイヤービーにやられてな」
「それではスチールの防具なんかはいかがでしょう?打撃には弱いですが、軽くて熱にも強いですよ」
「お、それは良いな」
打撃など、はなからもらうつもりのないケンチャンにはぴったりの防具だ。
「じゃあスチールの防具を一式貰おうかな?」
「はい、ありがとうございます!革装備の方はお引き取りしますよ。それと相談なのですが、この革装備を手直しして、誰かに格安で売っても宜しいでしょうか?」
「ええ、問題ありませんよ。木の剣で頑張っている人を応援したいですもんね」
「は、はい、ありがとうございます」
スチールの防具は1000Gと値が張った。しかしそれだけの性能があった。軽くて動きやすく熱にも強い。現状言うこと無しだ。
「あ、あのご迷惑でなければエンチャント師を紹介したいのですが、いかがですか?」
「是非お願いします」
エンチャント師とは武器や防具に効果を付与するスペシャリストだ。
「この裏路地を抜けて表通りの二軒目にあります。店主の名前はアルルです」