決闘
アリアに戻ると、砥石を買った。このカノアゲーム、武器の耐久度は設定されていないが、切れ味が落ちることはあるのだ。
砥石で双剣を磨いていると、色々な人にパーティーに誘われた。攻略組から、木の剣しか持っていない、おそらく寄生プレイをしようとする奴。全て丁重にお断りした。
だが寄生プレイをしようとする奴は、諦めが悪かった。
「どうせ双剣を使いこなす自信がないんだろう?」
だの
「木の剣同士で戦ったら絶対俺が勝つだの」
とよく喋る。
「そんなに強いなら、なんで木の剣なんだよ」
と回りに聞こえるように、大きい声を出したら、失笑をくらっていた。
「俺はチーミングで失格になっただけだ。この男には負けない」
と強気な発言。
「じゃあ、お互い2000Gを賭けて、木の剣でPvPをしよう。それなら文句はないだろ?」
と言う。
「良いのか?全財産賭けちゃって?アリアで路頭に迷うことになっちまうぞ」
「別に構わない。勝てば良いだけだからな。俺にはメリットしかない」
と煽る。
「トンズラなんて出来ないからな。きっちり2000G払えよ」
「だから2000G払うのはお前で決定なんだってば笑」
更に煽る。
「じゃあ今すぐ決闘だ」
そう言ってPvPの誘いを送ってくる。負けたものは勝ったものに2000G払う。この条件を見てから、同意ボタンを押す。
直径六メートルの不可侵領域ができ、お互い木の剣一本で対峙する。
ケンチャンは開始と共に、器械体操部の床の如く技を繰り出していった。男は初見では対応できずに負けた。勝負は一瞬で決まったのである。
「じゃあ約束どおり2000Gは頂いていくぜ」
と声をかけたが、男は放心状態だった。
この戦いを見ていた者達は俺に対してPvPを仕掛けて来なくなった。
「なんなんだよ!さっきの動きはよー。さては適応率100%を越えているな」
さっきの男が放心状態から戻って文句を言いに来た。
「あんたの言うとおり適応率100%だよ」
「適応率100%ってことは実力どおりってことじゃないか。あんな動きが出来るのか!?」
「ああ、若いときに器械体操部に所属していたからね。久しぶりに体を動かすと気持ちいいもんだ」
「知っていたら、喧嘩を売らなかったのに・・・残念だ」
そういうとそそくさと男はこの場を後にした。
再び双剣を砥石で研ぐ。ピッカピカになった双剣を見て満足するケンチャン。
「今、手持ちが4000Gだから装備でもかっちゃおうかな?」
ということで、裏路地のプレイヤーメイドのお店にやって来た。
「こんにちは。どんなものを売っていますか?」
すると店長と思わしき女性は
「は、はい。革装備が一式と鉄装備がいくつかあります」
そう言って商品を見せてくれた。
「じゃあ、革装備一式と急所ようの鉄装備を頂こうかな?」
「はい、ありがとうございます!値段はこちらになります」
と言って見せられたのは80G。
「これじゃあほとんど利益は出ないんじゃないか?」
「良いんです。より多くの方に装備して頂きたいですから」
「俺の名はケンチャン。そっちは?」
「イ、イツキです」
「良ければフレンド交換しないか?」
「はい、ケンチャンさん」
「そこはケンチャンで大丈夫だぜ!」
無事ケンチャンはフレンド一人目をゲットしたのだった。