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第4話

「お前達が討伐隊ではない、というのは分かっている」

部屋の中に沈黙が流れる。

「バリー達が何のために村を出たのか、当然俺は知っているからな」

そのバリー達が帰ってこず、してはいない依頼を受けたと言って現れたギル達を見て、マシューが警戒するのは当然のことであった。

ギルはどこから話し始めるべきか迷っていた。

そんなギルと隣に座るロザーナを、マシューは睨みつけている。

このまま黙っていても話は進まない、とギルは思い切って口を開いた。

「ええ、私達が討伐隊というのは嘘です。私達はバリーさんに出会い、何かが起きていると感じてこの村を探していました」

この村長は間違いなく全てを知っている。

しかし話の持っていき方次第では家を追い出され、2度と会ってはもらえないだろう。

ギルは言葉を選びながら、ここに来る途中たまたまフランクに出会い、村まで案内してもらったのだと伝えた。

その道中聞いた猿の件、それがこの村の問題なのかとマシューに問うと、マシューは顔を歪めて笑った。

「お前達は他に何を知っている?」

バリー達の行方は?何を聞かされた?どうしてバリー達は帰ってこない?と少し錯乱しているのか、マシューは同じような質問を早口で繰り返している。

その様子には鬼気迫るものがあった。

「バリーさん達は、私が殺しました」

それが正当防衛だった、とここで主張するつもりはない。

しかしそうする他なかった以上、ギルは臆することなくそう答えた。

「バリーさん達は、逃げた女性を探しているうちに私達に出会い、時間が残されていないからと彼女を攫おうとした為、仕方なく4人とも殺しました」

ギルはゆっくりと、言葉の一つ一つを慎重に選んだ。

それを聞いたマシューは「なんということだ」と呟いて天井を見上げ、両手で目を覆った。

「それでは次の満月までに女を用意できないではないか」

口の端から小さく言葉が漏れる。

「バリーさんはこの村で何が起きているのか、詳しく教えてはくれませんでした。しかしあの様子から、なにか重大な事件が起きているのではと思ったのですが」

しかし今のところ猿の件しか話はなく、その猿も聞く限りではそれほどの脅威になっているとも思えない。

教えてくれませんか、というギルの言葉にマシューは「どうしてそこまで」と訝しんだ。

報酬があるわけでもないのにこんな辺鄙な場所まで来た2人組。

その動機は自分達を襲ってきた男から聞いた断片的な話のみ。

たったそれだけの為になぜこの村まで来たのか、とマシューが疑問に思うのは当然のことだろう。

「詳しい話はできませんが、初めはこの女性、ロザーナがバリーさん達の人攫いに関係しているのではないか、と思ったんです」

詳細を話す必要はないと判断し、それ以上の情報は伏せておいた。

だがマシューは「そんな娘には、手は出さんよ」と吐き捨てるように言う。

それがどういう意味なのか、とギルが疑問に思ったのを読み取ったのか、マシューは「目立ちすぎる」と短く付け加えた。

マシューはずっと目を覆っていた手を離し、身を乗り出すと机の上で手を組んだ。

「お前達が、解決してくれるというのか?」

しかしその表情に何かを期待している様子はない。

「あのおぞましいケダモノを、お前達が殺してくれるのか?」

投げやりな言い方だった。

「何の関係もないお前達が、あの狒々を殺してくれるというのか?」

そんなわけがないだろう、とマシューは大きく息を吐いた。

しかしギルは言う。

その為にここに来ました、と。

だから話を聞かせてください、と。

マシューは理解ができない顔をし、信じられないものを見るような目をしている。

ロザーナについては空振りに終わったが、しかしギルはだからといって見て見ぬふりをするつもりはなかった。

疑念に溢れた表情が少しずつ変化し、もとの生気のない顔に戻るとマシューはようやく口を開いた。

「あいつは、満月になると山から這い出てくるのだ」

あいつ、と呼ばれたのは件の猿のことである。

その猿を、村長は狒々と呼んだ。

「ある日、突然のことだった。村の娘が一人消えたのだ」

マシューは視線を斜め下へと落とす。

それはまるで記憶の中の狒々から目を背けているようだった。

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