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34 派閥が異なる知人を招いて



「ようこそ、ナルミネ様。移動で疲れたでしょう? この山荘ではぜひ、ゆっくりなさって?」

「疲れなどありません。エカテリーナ様のお招きですもの。とても楽しみにしておりました」


 今日はサンハイムの山荘でのお茶会です!

 招待したのはナルミネ・モザンビーク子爵令嬢で、私とケイトの二人でもてなしますわ!


「うふふ、元気なようで嬉しいですわ。でも、無理はなさいませんように……ケイト。こちらはナルミネ・モザンビーク嬢よ。このサンハイムの山荘からはそう遠くないモザンビーク子爵家の領地にいるとお手紙を頂いたので、お招きしてみたの」


 ケイトにモザンビーク嬢を紹介してから、今度はモザンビーク嬢の方を向く。


「ナルミネ様。彼女はサラスケイト・ロマネスク嬢です。私の義理の弟の婚約者なのです」


 義理の弟の婚約者、というところでモザンビーク嬢は少し頬を引きつらせた。

 それはつまり、ウェリントン侯爵家の嫁となる令嬢だということだから。


 私だけでなく、ケイトにも気を遣わなければならないのは大変でしょうね……。


 ケイトはまだデビュタント前ですから、派閥が異なるモザンビーク嬢には普通なら会う機会はないでしょうし。

 動揺するのは当たり前です。


 それでも、モザンビーク嬢はすぐに一礼しました。襟に付けた三つの羽がふわりと揺れます。

 三つ羽扇のドレスです。


 ケイトや侍女たちも含めて、ここには三つ羽扇のドレスがたくさんありますわ。

 すっかり派閥内では流行してしまい、王妃陛下の動きで派閥に関係なく広まっております。デザインにもし権利があったのなら、たくさんお金が入ったことでしょう。

 まだそこまで社会は成熟しておりませんから仕方がないことですけれど……。


「お初にお目にかかります。モザンビーク子爵家長女、ナルミネと申します。女神テレイラーのお導きに感謝を捧げ、この出会いを私の宝とさせて頂きます」

「サラスケイト・ロマネスクです。女神テレイラーのお導きに感謝を。貴女と出会えて嬉しいわ」


 年下で、かつ、デビュタント前であったとしても、ケイトは伯爵令嬢です。本当の意味で子爵令嬢であるモザンビーク嬢の方が丁寧な言葉遣いになります。


 ……私は子爵夫人ですけれど、同時に次期侯爵夫人でもあるので、『子爵』といっても色々とあるものなのです。単純に爵位だけでは判断できない難しい部分は、しっかりと学ばなければなりません。


 別にモザンビーク嬢にいじわるをしている訳ではなく……手紙でモザンビーク嬢を誘った時にはまだケイトがサンハイムの山荘に来ていなかっただけなのです。

 一緒にここですごしているケイトをこのお茶会に参加させないのも……変ですからね。


「この温室のガラスはモザンビーク子爵領で準備したとお義姉さまから聞きました。モザンビーク子爵家はガラスが特産品なのかしら?」


 ケイトには事前にそういう知識を叩きこんでおきました。

 デビュタント前の令嬢が、興味津々で話しかけていくのはとても自然ですから、ケイトならそのあたりはうまくできるはず。


 モザンビーク嬢には……普通のお茶会だと思ってもらわなければなりません。


「はい。エカテリーナ様から格別のご配慮を頂いて、ガラスの生産に力を入れております」

「まあ! リーナお義姉さまの?」

「ええ、とてもありがたいことです」


 格別の、配慮。

 言ってしまえば、それはモザンビーク子爵家へのちょっとした財政支援です。


 以前、モザンビーク子爵と話し合ったことがあります。その時、ガラス職人の引き抜きに快く応じて頂けたので、この温室のための板ガラスを購入しました。

 工房から直接買うこともできるのですけれど、あえて、モザンビーク子爵家を通して少し価格を上乗せして購入したという訳です。


 その上乗せ分が支援金になります。

 職人を引き抜いた対価としては格安ですわ。そもそも引き抜きの対価は別の物を用意しましたし。


 王都からサンハイムの山荘までのルート上に、モザンビーク子爵家はありますから。

 温泉行きの大事な道を守るためですわ。


 今、私たちがいるのは、サンハイムの山荘の新館となる別館の南側にある小さな温室です。基本的には花を植えていますけれど、いくらかは種苗の育成にもあてています。実験ですわね。

 地下に温泉水の配管が通っているので、この温室内は地中から温められています。だから冬でも快適なのです。


 急いで建てたこの新館ではサンルームっぽい小さな温室ですけれど、さらに南側の土地ではもっと大きな温室を三棟ほど建設する予定になっています。

 そちらはハウス栽培の実験場になる予定ですわ。例えば、イチゴとかの。


 とても楽しみですわ! イチゴ!


 それらの温室が完成するまでは、少しずつモザンビーク子爵家へと支援金が流れる予定です。

 最終的な支援金の合計金額は、モザンビーク子爵家が寄親であるリバープール侯爵家に借りている借金の金額に届くようになっています。


 ウェリントンが返済のサポートをしていると気づかれないように、ということです。


 温室が完成した後は、細々とした瓶のような物を発注したいと考えております。ホットスポット商会の設立後の話になりますけれど。

 温泉水を使った美容品のようなものを容れるために。


 ……モザンビーク子爵領のガラス工房から引き抜いた職人たちは、ウェリントン侯爵領の方で工房を開く予定なのです。


 サンハイムの山荘からは遠いので、ここの温室のためのガラスを作らせても運ぶのが大変になります。あちらはいずれ、ワインのボトルなんかを作ってもらおうと考えておりますわ。


 ……ああ、ケイトの課題の関係でウイスキーを作るようになれば、ついでにそのボトルも作ってもらいましょうか。


「とりあえず、座りましょう」

「そうですね」

「はい」


 私がそう声をかけて席につくと、ケイトがそれに続き、最後にモザンビーク嬢が座りました。


 今日のお茶はタバサが淹れます。私がウェリントンに嫁いでからはタバサもいろいろと鍛えられているので、美味しいお茶を淹れてくれると思います。


 まずはおもてなしですわ!

 お茶はもちろん、お菓子でもしっかり心をほぐして差し上げましょう!






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