第0話:さよなら
平成後期から令和にかけて、とあるゲームが流行っていた。
それは、王道のRPGである。
主人公を操作し、仲間を増やし、世界をめぐって魔王を倒すといった、よくある内容だ。
だが、他のゲームとは少し違っていた。
魔族や亜人を眷属にすることができ、魔王を倒してもゲームクリアとはならず、国を造り、他国を侵略、経済発展といったゲームクリアがないゲームがこのゲームの面白い所だった。
だが、それも1分前までの話であった。
そのゲームは数年で飽きられ、遊ぶ人間が減少したため、1分前に終了してしまったのだ。
武塚京平、通称『恐王』とゲーム内では呼ばれていた。
彼は、ソロプレーヤーでありながら、7体の大罪と10体の十戒を眷属とし、魔王を攻略、他国を侵略し世界征服を成し遂げた男であった。
だが所詮はゲーム内の出来事。
それしか能がない京平は、起動していないパソコンを空虚な眼で見つめていた。
「そろそろ俺も・・・」
と、彼は今にも消えそうな声で呟くと、手に持っていたカプセルを口に運び、それを飲み込んだ。
「さよなら。僕の愛しい眷属たち」
そう言い残し、彼は眠るときのようにベッドへと倒れていった。