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「射線に入るな!死にたいのか!?」
ラリー・ゴークという名の上級陸曹が大声で怒鳴った。
黒の国、前哨防衛基地エイドスローン周辺ではつい2日前に待望の雨が降り始めてその名残は消えていない。それは数か月に一度の好機であり、晴れ男のラリー・ゴークはこの防衛作戦において完全に機を逸したことを悟った。
(俺たちがここに派遣されたのが5か月前、以後この規模の降雨は見られず、観測兵によれば雨が降ること自体11か月ぶりだいう。どうしようもなかったと言えばそこまでだが……)
ラリーは苦々しく臍を噛んだが、すぐに持ち直して自分の銃を両手で掴んだ。
湿り気を含んだ沼地のような荒野に全長3キロメートルにも渡って張り巡らされた塹壕ウェルフェンズリークは数か月前の堅くアルカリ性の地層が掘削作業の工程に3か月もの期間が費やされたために、戦闘状態にある現在において重大な障害をきたすこととなった。
本来、自分たちの生命を預けるに足る壕は一番深いところで4メートルは深く掘られていなければならないのに、現状は2メートル半。
膝射用で1メートル半、伏射用で80センチメートル。
どう考えても、頼りない防御壁といえるものしかなっていない。
にも拘らず、兵士たちは自身の身長と同程度の分厚い壁と自分たちを指揮するラリー・ゴーグという名の下士官に命運の全てを預けるほかなくなった。
それだけではない。土壌があまりに堅かったため、掘り進めるための銑鉄製のシャベルの半分が使い物にならなくなった。途中から先時代の遺物である騎士の両手半剣やハルバードで地表を解してから、仕上げにシャベルを使うという方法を思いついたが、犠牲者の数が減ることはなかった。
「塹壕から頭を出すんじゃない!」
中腰で待機する200人の部下たちの頭は地面に向かって50センチメートルも接近し、狙撃兵はさらに50cm深く伏射の構えを取った。




