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あとがき

最後まで読んで頂いて、ありがとうございます。

本作品は「小説家になろう」サイトに登録して、初めての完全書き下ろしとなります。


プロットは2003年、前作「勇者物語」と同じ14年前です。

元々10000文字弱だったので短いストーリーだと記憶していたのですが、年月を経て清書してみたら20000文字を越えました。6話構成だったものが、全10話に。


先日このサイトで、初めてのコメントを頂きました。

勝手気ままに好きな作品を書いてるだけの私にも「読者」が居ると知り、それがきっかけで、もっと丁寧に文章を書こうと思うようになりました。

言葉に含みを入れるのは良いとして、私が知ってるだけでは駄目なのだと。

当たり前の事ですが、勢い良く書いてる時は意外と気付かないものです。

14年前のプロット段階で6話構成が、清書して8話構成に、そして丁寧に書き加える作業を経て、最終的に全10話になりました。



不思議と、台詞は同じなんです。

校正を何度繰り返しても、書き加えても、特に主人公ウィルの台詞は初期のまま。

私が文字にしていなかっただけで、彼は常に同じストーリーを私に伝えています。

苦しくて切ない、だけどとても大事なメッセージのように、14年以上前から。


このストーリーは、ある意味私にとって鬼門みたいなもので、どんなに作者の私が足掻いても、ひとつも何も変わってくれません。これしか無いのだと。

まるで記憶を辿るように、同じ筋道しかなく、いつも作る普通の物語のようにエピソードを追加する事も出来ない。ハッピーエンドにしたくても出来ない。


書いている間、物凄い集中力で外出先でも続きを書くわ、ずっとトランス状態っぽいわ。

14年前のプロットを書いた時もそうでした。

あまりの危険度に今迄手をつけずにいたのですが、前作「勇者物語」終了後、どうしても続いてこの作品を発表したくて。このタイミングしか有り得ないのです。

着手したら危惧していた通り、14年前と同じ状態に陥ったという訳です。

鬼門とは、色んな意味がありますが、「始まり」の方なのかも知れません。




私にはよく、自分で書いたのに「こんな事書いたっけ?」と思ったり、何故か判らないけどこの台詞を入れなければいけない、とかよくあります。


ウィルの

「ごめんね…もう、無理なんだ…。」

辺りが特にそうです。


書いた時は何故か判らなかったけど、 最後まで書き切ってみたら、理由が判りました。


「その呼び名の判らない僕と、今迄の僕がひとつになってない感じで…。」


これが答えです。



そういうつもりで書いてた訳じゃなかったけれど、ストーリーを書き切ってみたら、ウィルがどんどん「人」ではなくなっていく。

音痴でも下手でも、好きな歌を謡っていたのは「人」のウィルで…。

変わっていく自分に戸惑いながら、「その呼び名の判らない僕」を必要とされて必要として、なったらなったで畏れられて。

それでも、それらも総て受け入れて、連日「精霊の竪琴」を奏で、命が尽きるその日まで、ずっと護ろうとした。



リクオーネが言う「訳の判らない歌」である最初に謡っていた歌詞

「おお~精霊よ~、美しき調べ~我が愛しの~者達よ~。」


出だしに適当に書いたつもりだったのですが、総てを物語っている気がしてきました。

サクリノの

「何故、ばかり疑問だらけだ。」

の答えになりませんか?





ウィルじゃなくても封印は不可能だった。

例え「勇者」になったのが大魔導士であっても、名を轟かせた英雄であっても、誰がやっても同じで、「闇の石」はそれ程強大で手に負えない代物だという事を「人」は誰も知らない。

洗礼で得られたのは、封印「出来る」力なだけで、何も今すぐ簡単に出来るとは言っていない。でも「人」は安直に、出来るのが当たり前と思ってしまった。

繰り返される歴史の中で、ようやく封印出来たのが、前作「勇者物語」…。

という訳です。


前作「勇者物語」を思い出して貰えると嬉しいかも。

伝記にない真実を語った勇者の台詞とか、魔王の台詞とか、血筋の話とか。

…生まれ変わりのタイミングとか。

このストーリーに答えを入れました。


世界でたったひとりしかいない理由。

私の作る…いいえ、もしかすると私が書いてるだけの何処か別世界の記憶。なんて。

ストーリーを書く時って、そんな気持ちになりませんか?




ウィルが一番辛かったかも…。

ルナシーンやレンは、生まれた「最初から」勇者でしたから。

人と少し位違っていても、伝説の「勇者」だから、で済みましたし。

でも彼らはみんな「辛い」より「護りたい」が強すぎて…。


このシリーズの歴史としては

ウィル(勇者誕生)→(謎の空白期間)→ルナシーン→(300年)→レン(封印)です。「封印」を果たす迄、どれだけの年月を掛けたのか判りません。

この物語の「勇者」とは、世界を救う事が出来る者を指し示すものであり、勇ましき者、果敢なる者の事ではありません。又、世界を救うには、魔王や何かを倒して達成出来るものではないのです。



それにしてもサクリノは、この時から気になっていたんですねぇ…。

武闘家が紹介でしか出て来ないで不憫です。

本文中にはない何処かで、きっと活躍していたんだと思います(暴挙)。


魔王がサックリ負けてて弱く感じますが、本当は人間なんか太刀打ち出来ないのです。

そもそも魔の山だって、普通の人間には登頂不可能ですし。

精霊達だって魔王に屈服したのですから…。


勇者の「精霊の曲」が強力過ぎなのです。

演奏さえ始まれば、相手の強弱、数お構いなしで一撃必殺ですしね。殆どチートです。

「チート」ってキーワード入れても良いですかね?



最後の下りは、プロット時代からありました。

本文中、どこにも「光の」なんて付けていませんが(光の精霊とか、光の勇者とか)、全編を通して見ると、このありきたりな詞で合っているのです。

「勇者」には常に”光”が共に在り、「人」には「光の勇者」に見えた…という。

伝説ですから、「人」から見たもの…ですね。




もう一度お礼を。最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

もし機会があれば、また会える事を祈って。



2017.06.05 野川真実

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