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JKだけど異世界で真の漢に俺はなる  作者: 相川ミサヲ
第4章
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◇亜空間◇



 商人さんが俺にくれると言った亜空間は不思議な空間だった。

 暖かくも寒くもなく風もなく音もなかった。

 埃に汚れたレオの顔を拭こうとして、ここに水道があったらなと思ったら、水道が出来た。

 床らしきところからにょっきり突き出た水道管。

 調子に乗って洗面ボールとタオルがあったらなと思ったら、それも現れた。


 俺は、ウィルの家を思い浮かべた。

 1階に食堂と居間、来客用の応接室に立派な台所、そしてお風呂。

 2階にはウィルの私室と俺に与えられた部屋、レオの部屋、書斎、あと何があったっけ?

 幻のウィルの家は細部は本物と違っているかもしれないが、俺の記憶の中のウィルの家だ。


 特に俺がいた部屋は細部まで再現された。

 俺の部屋の中央にレオとレオの入った繭がある。


 土埃を濡れタオルで綺麗に拭いて、上着を脱がせ、薄い掛布団をレオにかけた。

 レオはまるで眠っているように見えた。

 魔力を吸い取られ続けているため身体がだるい。

 レオの姿がよく見える位置にベットをおいて、俺も横になった。


 「ウィルの家に帰りたい」

 こっちの世界に来てはじめて、俺は声をあげて泣いた。




 浅い眠りが続いた後、汗まみれで俺は目を覚ました。

 俺が寝たあと、商人さんが来たみたいだったが出入口の扉はどこを見てもなかった。


 テーブルの上に食糧が置いてあった。


 俺は起きだし、顔を洗うとモソモソと一人で食事をとった。

 俺そっくりのミニチュア人形は俺が寝る前と一緒の姿勢で真剣な表情でレオの手を両手で握っていた。

 客観的に見ると俺ってあんなんなんだ。

 気の強そうな目つきに色気も可愛げもない姿。胸はつるぺただし。

 よくウィルは俺のこと…抱きたいって思ったなぁ…そう考えると顔が自然と赤くなるのを感じる。


 ウィルのことを考えると胸が暖かくなる。

 ふと二の腕に残っているはずのキスの痕を探す。

 もう薄くなってきていた。


 寂しい。

 寂しいよ。ウィル。

 抱きしめて欲しい。大丈夫だよって言って欲しい。

 何も心配はないと。


 一旦寄り掛かる先を知ってしまった俺の精神ココロは悲鳴をあげる。

 ぬくもりが欲しいと、甘やかして欲しいと、駄々っ子のように主張して騒ぐ。


 俺は両腕を自分の腕で抱えこむようにして、ベットに座った。


 逃げたい・・・……どこへ?

 隠れたい…………何から?


 すべてを放棄してしまいたい。…………そうしてどうするの?


 自問自答を繰り返す。いい考えなんて浮かばない。誰も答えを教えてくれない。

 自分で決めなきゃ。自分で・・・。


 あとは覚悟だけなんだ。


 絶対レオを取り戻して、帰るんだ。ウィルのところに。






 俺は、繭の中のレオを覗き込んだ。


 まるで眠っているみたい。


 きれいな顔をしているもの、長めのカツラでもつけたら、まるで「眠り姫」だね。

 怒ったような表情をしていなきゃもっと親しみもわくのに。

 損だよ。眉間に眉よせちゃってさ。

 君はハンサムなんだから。


 髪に指をつっこみ感触を楽しむ。

 こんな時じゃなきゃ、きっとこんな風に触らせてもらえない。

 君のためにひと肌脱ぐんだから、これくらいのご褒美いいよね?

 何回も、何回も手で髪を梳きつつ心の中で話しかける。


 俺は王子様じゃないからキスしても目を開けてはくれないよね。

 だから、君が目を覚ますまで俺が君を守るよ。



 だから、レオ。絶対だよ。


 絶対にこちら側に戻ってくるんだ。


 そしたら俺に、ちょっとでいいから笑いかけてくれる?

 それと出会った頃のように仲良くしてほしいんだ。



 そうすることによって、レオにはこの埋め合わせをしてもらう。


 そう考えた俺は、少し元気になった。


 商人さんのことを考える。

 元俺のいた世界の人で同じ日本人。

 某国民的漫画のアニメのことを知っていたから、おそらく同じ年代の人。

 転生したと言っていた。と言う事は、生まれはこっちだ。

 年齢は30位。でも、こっちでの年齢と元の世界での年齢がイコールってことはないだろう。


 どういういきさつがあったのだろうか、

 治療師のクリスの言葉を借りると、不本意ながら「完全奴隷」となったらしい。 本人もそう言っていたしな。

 しかも拒否権はなかったらしい。

 「隷属の誓い」で縛られていて、「主人」には逆らえないらしい。


 砦で一緒に活動した時の印象だと、商人さん自身は悪い人とは思えない。

 子どもの頃に売られたのか、それとも何か子細でもあるのか。


 クリスが話ししてくれたところによると、商人さんの「ご主人」は、今度のア ジャール砦襲撃事件の犯人らしい。

 人為的に攫った若者を使って「トレイン」を引き起こしてまで事件を起こしている。

 そしてアジャールの町での魔石略取、リスボレイから出発した隊商にも襲いかかっている。


 相当悪どい。


 悪党だ。


 商人さんも騙されて、奴隷にされたのではないだろうか?


 襲撃を繰り返す目的は・・・魔石収集のため?


 何のために?


 魔石の収集はそんなにお金になる、魅力のあるものなのだろうか。

 こんなに大勢の人の命を奪ってまで。


 それと、俺は隣国の「ダークジール」とかいう国に連れていかれるらしい。


 商人さんが、「お奨めするのは、ここは一旦身を落としても機会を待つこと」

だった。

 ということは、這い上がる機会があるということだ。


 それに、俺と再会する前に、すでにレオを助けるつもりだったと思う。

 でなければ注射など取りに戻っていなかっただろうし。


 しかし、商人さんはすごい力を持っているんだな。


 「生命の蛾の女王用のゆりかご」ね。


 これがあればどんな酷い怪我や状態でも、「死が確定」してしまう前なら生き返る事のできるアイテムってことだよね。


 商人さんのスキルなのか、それともそういった技術なのか、もしかしたら、このせいで能力を狙われて「完全奴隷」にされたのかもしれないな。



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