34話
黄巾の乱、終結。
一ヵ月後、黄巾党の首魁が討ち取られたという報が広まり黄巾の乱は一先ず鎮定した。
官軍の大将を任された何進大将軍は、異母妹の何氏が霊帝の宮中に入り皇后に立てられた事で現在の地位まで成り上がった武将である。何進自身の能力は決して優れているとは言えず、分不相応の立場と揶揄する宦官も多かった。そんな陰口を払拭出来るはずの今回は、なぜか近衛兵を率いて首都である洛陽の守備に徹していた。せっかくの機会にも関わらず自身は積極的に黄巾賊を攻めることはせず、その役目を皇甫嵩、朱儁、盧植、董卓らに命じたのである。しかし、指示した方針や作戦および準備がかなりお粗末だったせいで、数で劣る官軍は幾度と無く圧される形になっていた。
その劣勢を覆したのが各地の群雄や発起した義勇軍だった。中でも一際目覚しい活躍を見せたのは、陳留を拠点として兗州を治める曹操が率いる軍である。いくつもの砦を落とし、名のある将を下し、ついに張角らを討伐するに至ったのだ。また、攻め落とした砦を次々と焼き払うことでも曹操軍はその名を轟かせた。その過激さが災いしてせっかくの首魁の首級まで焼け焦げてしまったとの噂だが――真相は曹操軍のみぞ知る。
黄巾の乱の平定後も各地では混乱が収まらず大小様々な反乱は続いた。そこで霊帝による軍制改革が行わた。皇帝直属の部隊である西園軍を創設し、その軍を率いる者として西園八校尉が任命された。黄巾の乱で活躍した曹操や名家の袁紹などが選出されたが、その筆頭は霊帝に寵愛された十常侍の一人である蹇碩(けんせき)だった。宦官の身で軍部の最高峰である近衛軍を統括することなったのだが、朝廷からの勅命とあっては異を唱える者は存在しなかった。しかし、かつて曹操が洛陽の北部尉をしていた頃、蹇碩の叔父が禁令を犯した為、曹操に捕らえて棒で殴り殺された事があった。そんな経緯があった為に、曹操と蹇碩の因縁再発を懸念する者は少なくなかった。
不穏な様相を呈したまま、激動の乱世に突入していくのであった。
――公孫賛の居城――
黄巾党鎮圧での功績で公孫賛は幽州牧に、学友の劉備は平原の相に任命された。
趙雲は先の遠征を最後に客将を辞し、単身で劉備の下へ。逆に、李鳳と李典は遠征前に食客から正式に仕官していた。そんな経緯もあり、李鳳は自らの計画の為に精力的に働くようになっていた。
李典は趙雲の後釜として一軍の将に推薦されており、錬兵だけでなく武官として朝議への参加も仕事の一環となり多忙な日々を余儀なくされていた。唯一の救いは李鳳が自重しなくなったおかげで、軍師として常に補佐してくれることである。
そして現在、文官だけでなく、太守もとい州牧、武官も同席した久々の報告会が開かれていた。その中で、州牧である公孫賛は額に手を当て険しい表情をしていた。
「――です。以上が公孫賛様の遠征中に露呈した資金難の現状と、それを打開する経費削減案の概要となりまする」
中年文官から報告される内容に頭を抱える公孫賛。せっかく黄巾の乱を平定し終えたにも関わらず、領内での問題点が次々に浮上したせいである。
提出された資料に目を通しながら、頭の中で整理していくにつれ現状の厳しさが如実に見えてきたのだ。
「予想していた以上に財政は火の車になってるな……。州牧になって領地も増え、棒給も上がったが……このままじゃやっていけないのは確かだ。しかしな、軍事予算を先月の半分にまで削るなんて、いくらなんでも無茶苦茶だ。黄巾党が壊滅しても反乱の火種はまだまだ残っているんだ、それに烏桓に対する警戒を緩めることなんて絶対出来ないぞ」
草案の最重要項目である軍事予算の削減に対して、納得できるわけがないと激しく反論する公孫賛。
「フォッフォッフォ、ご心配には及びませんぞ。ただ、それに関して報告する前に、まず驚くべき事実をお知らせせねばならんのですじゃ」
「驚くべき事実? 留守中に何かあったのか?」
「この件に関しては李鳳めに報告されまする。事態にいち早く気付いた上に率先して調査を行ってくれましたのじゃ」
そう言って説明を李鳳に丸投げし、白湯を啜り始める翁。
突然のことに驚いたのは李鳳本人ではなく、隣に座っていた李典だった。「あっちゃ~、大変なことになっとるで」と文官らの報告を聞いていた彼女の耳に飛び込んできた李鳳という相方の名前。
【李典】
めっちゃ嫌な予感がするで……。伯雷が率先してっちゅうんが、怪しゅうて怪しゅうて。……何やろ、うわっ、アカン、ちょっと口角上がってるやん……。
「それでは私の方から調査結果と起こり得た最悪の事態について説明させて頂きます。まず、こちらの資料をご覧下さい。これは半年前から現在に至るまでの軍部に関する出費の推移を記載した帳簿です。そして、もう一つ、こちらも同様に軍部予算に関する帳簿です」
「どうして二つもあるんだ? ……あれ、こっちの数字はおかしくないか?」
頭にハテナマークを浮かべていた公孫賛が異変に気付き問い返した。
「ええ。これは二重帳簿です。一方は事実通りに記載してあり公には公開しないもの、もう一方は不利益な点や不自然な点を隠して公開するものとなっています。公孫賛様が毎月目にされていたのは後者になります」
「なっ!? 不正を働いていた者が居たということか、そいつは今どこに?」
「残念ながら公孫賛様達が遠征から戻られた翌日には姿を消しておりました。その者の部屋にもう一つの帳簿が隠してあり、他にも今日まで行方が分からない者が数名おります」
「・・・不正が行われていたのは間違いないのか?」
とても悔しいといった表情で公孫賛ではあるが、わずかな可能性に縋るような想いで問う。
「ワシや他の文官はもとより複数の武官にも確認を取りましたが、帳簿の記録が正しいことは明白ですじゃ」
筆頭文官の翁が白湯を啜りながら帳簿の是を証言した。
許せんな、民の血税を平然と横領して私腹を肥やすような輩はウチの螺旋をお見舞いしてやりたかったで。夜遅うまで調べもんや書きもんしとったんは、この為やったんやな。偉いで、伯雷。見直したわ。
「ただの横領で終わっていればまだ良かったのですが……、今回最大の問題点はそうではないところなんですよ」
へっ? どういうこっちゃ?
横領はアカンで。ええわけあれへんやん。もっと問題があるって何や?
李鳳は公孫賛だけでなく、同席している文官、武官の全ての顔を見回した。そして、皆が自分に注目していることを確認すると一瞬だけほくそ笑み、衝撃の発言を行ったのだった。
「今回の一件の首謀者が趙雲殿であり、彼女による政権簒奪が画策されていた可能性が非常に高いのです」
…………はぁぁぁぁぁぁ!?
「な、何を言ってるんだ。星が、趙雲がそんな事をするはずないだろ」
大まかな概要を知っていた文官達は平然としているが、公孫賛や李典などの武官達は驚愕の表情だ。誰もが信じられないといった感じで、何かの間違いだろうと思っていた。
「そうやで、伯雷。星姐さんがそないな事考えるわけあれへんやん、寝不足でボケたんとちゃうか?」
「クックック、順を追って説明しましょう。まず最初に横領された金銭ですが、これは8割以上軍事に流用されています。つまり個人の懐に納まるのではなく、軍事力の強化に使われていたということです。不正は問題ですが、これ自体は悪いことばかりではありません。問題なのは出所不明金が流されているのが、特定の部隊に限るということです。分かりますか?」
「……それが星姐さんのとこっちゅうことか」
「ええ、彼女や彼女と関りの深い部隊にだけ集中していました。最初は微々たる金額でしたが、黄巾の乱が起こってからは混乱に乗じてかなり大胆になっていましたよ。遡って調査した結果、横領の始まった時期は丁度趙雲殿が客将となった時期と一致します。公孫賛様、彼女はどういった経緯で客将となられたのでしょう?」
心痛な表情で話を聞いていた公孫賛に李鳳が質問した。彼女自身まだ趙雲のことを信じており、これは何かの間違いだと思っている。だからこそ、誤解を招くような事は言えないと慎重に返答した。
「趙雲は武芸の腕を磨く為に全国を旅している途中、旅費が尽きたということで路銀を稼ぐ為に雇って欲しいと言ってきたんだよ。腕が立つのは確認したし、用兵術にも長けてたから喜んで雇ったさ。でもな、仕官に値する人物を探しているって言ってて……、その……、わ、私は駄目だと言われたんだぞ。それに劉備の下に行ったあいつにそんな企みがあったわけないだろ。だいたい、簒奪を企てるなら食客じゃなく仕官して側近になった方が狙い易いじゃないか」
そうやそうや。よう言うたで、州牧はん。アホ伯雷も早う間違いに気付かんかい!
内心でプリプリ怒る李典の隣で一切表情を変えることなく公孫賛の言を聞いていた李鳳。
「ククク、客将という立場であるからこそ発覚するのがここまで遅れたとは考えられませんか。内部の繋がりであれば派閥然りである程度の予測は可能ですが、今回は何の接点も見えない新参古参を問わない複数名が共謀した可能性があります。周辺人物に聞き込み調査を行ったところ、趙雲殿が今回失踪した人物らと個別に酒の席で話しているのを見たという目撃証言を得ています」
「星姐さんは無類の酒とメンマ好きなんや。ウチかて何回も付き合わされとるし、そないおかしい事とちゃうやろ」
「その酒代ですが、勿論折半だったんですよね?」
「……いんや、……奢ってもろてたで。姐さんはえらい豪快な御人で羽振りが良かったんや、給金のほぼ全額が酒とメンマで消えよるさかい」
「おやおや、路銀を稼ぐのではなかったんですかね? 他にも大勢の方と呑んでいたという証言もありますが、とても豪快な高給取りの猛将を雇われていたんですね、クックック。確認できた出費だけでも太守様と遜色ない位貰っていたことになりますよ、羨ましい限りです」
「そうじゃのぅ。ワシも長年仕えておるが、そんなに貰ってみたいもんじゃわい。フォッフォッフォ」
意地の悪い笑みを浮かべて公孫賛を見る李鳳。
白湯を啜りながら便乗して皮肉る翁。日頃、公孫賛や武官との関係が良好と言えない文官達も苦笑していた。そんなに貰っていない事はこの場の皆が分かっており、武官は終始押し黙っていた。
そない言うたら……、なんでそないに羽振りええんか聞いたことあったな。なんや臨時収入や言うてたけど、州牧はんが何も言わんっちゅうことは恩賞や手当ての類いやないっちゅうことか……。アカン、ちょっと不安になってきたで。なんやろ、この展開に既視感を覚えるんやけど……。
「申し訳ありませんが、その収入源を特定するには至りませんでした。ですから、不正金と断言は出来ません。賭博なり何なりで儲けたのかもしれません、それは一旦置きましょう。疑問視するのはやはり貯蓄せずに全額使っていた事実です。いづれ出て行くつもりという意志に沿わない行動だと思いませんか? むしろ、出て行くつもりなど皆無であったとすれば……その方が納得がいきませんか。地盤を固める為に、あまり目立たない要人と懇意になる投資に当てたとも考えられる。いずれにせよ、不正金を流用して趙雲所縁の部隊だけが徐々に強化され、優遇されていたことは偽りなき事実です」
強固な姿勢で反論していた公孫賛と李典が黙したことで、朝議は李鳳の独白場となっていた。
「それだけではありません。一番槍が重要で消耗も激しい事は承知していますが、武具や装備品も良質な物は趙雲の部隊に仕分けられていました。そして、在ろうことか、劣化品を近衛兵や文官各位の護衛兵に回していた事実も露見しました。当事者は戦時中で止むを得ないという理由で丸め込んでいたようです。更に、先の遠征に対する彼女の執着振りは明らかに不自然ではなかったでしょうか。軍資金に余裕の無い状況下で、領外への遠征を熱心に訴えていた態度に怪訝なモノを感じました」
確かに姐さん最後の砦落とす為の最終決戦えらい張り切っとったな。首領の首級取るんもそうやけど、各地の猛将にも会うてみたい言うてたし……。いやいや、それだけやで。……純粋にそんだけの想いやったはずや。
「これは私の推測に過ぎませんが、趙雲殿はあの遠征中に公孫賛様を亡き者にしようと考えていたのではないでしょうか」
「馬鹿なっ!?」
「そんなわけあれへんやろ! ウチはずっと州牧はんと一緒におったけど、姐さんがそないな態度見せることは無かったで!!」
李鳳の暴論に声を荒げる公孫賛と李典。武官らもざわつき始めた。
「そうならないようにマンセーにお願いしていたのですよ、ククク」
「……ウチに食客辞めて正式に仕官さして、遠征中は州牧はんの側から離れんな言うてたんはその為かいな?」
「ええ、最悪の事態を避ける為ですよ。流石のマンセーも趙雲殿が本気を出せば太刀打ち出来ないでしょうが、近衛兵と共闘して時間を稼げれば他の兵が駆け付けるでしょうからね」
ウチはまんまと伯雷に踊らされたっちゅうわけかいな……。姐さんが本気でそないな事するはずないやろうけど、州牧はんが無事なんは良かったちゅうことで納得しといたるか。
「趙雲殿が公孫賛様および近衛兵殺害した後、近衛兵に謀反者がいた、公孫賛様を良く思わない文官らが裏で糸を引いていたと証言すれば武官や兵士達はどう思ったでしょうか。無理な遠征を強行する為に軍資金を捻出したことで残された者の生活は切迫し、護衛の兵力が弱っているところを襲撃して一網打尽にする計画だったのではないか、と邪推します。しかし、李典将軍の働きでその目論見は潰えました。帰還後、不穏な空気を察した趙雲殿はその翌日に去って行きました。非常に急だと思いませんか? 更に、行方不明者の部屋は荒らされた形跡がありました。もしかすると、口封じと証拠隠滅を図った可能性も――」
再び沈黙する室内。
生唾を飲み込む音でも聞こえそうなくらいに静まり返っている。
「……状況的に怪しさは否定出来ないけど、趙雲が首謀者だっていう証拠は……無いんだよな?」
信じてはいるが全く疑っていないわけでもない、疑心暗鬼な状態の公孫賛が恐る恐る確認する。
「はい。軍備補強の為とは言え不正に資金を使用していた事は事実ですが、先程の話はあくまでも私の推測であり決定的な物証はありません。本来であれば、趙雲殿をこの場に召喚して各嫌疑の真偽を問いたかったのですが……」
最後までは告げずに言葉を濁す李鳳。
それに対して公孫賛は些か納得のいってない様子である。
……ふむ、結局のところは伯雷は何が言いたいんや? 星姐さんが怪しいけど今となっては分かりませーんっちゅうことしか伝わってこんのやけど……。
「李鳳の言い分は分かった。不正を暴いてくれた事は本当に感謝する。……それで、お前の報告したい事っていうのは何だ、翁?」
結局のところ、李鳳の言っている事は大半が推論であり、事実として残るは内政で不正があったという事だけだった。
公孫賛は不正解決の事実のみを評価し、当初の翁の言葉を思い出したのだ。『経費削減案に関する報告』の前に伝えたかった事はかなりの重量で正直お腹いっぱいといった感じだが、それは前菜でしかないのだ。メインディッシュとなる報告が如何なるモノかと公孫賛をはじめ、李典も気が気でない様子だ。
……すっかり忘れとったわ。州牧はんはよう覚えてたなぁ、伯雷の話は衝撃が強過ぎて爺さんが何言うたかなんてどっか行ってたわ。
指名の入った翁は空になった湯呑をゆっくり置いて立ち上がった。
文官達はこれから翁が何を言うか知っているらしく落ち着き払っているが、武官らは固唾を飲んで見守っている。それほど時間は経っていないが、武官達は非常に長く感じていた。
爺さん、勿体ぶらんと早う言わんかい! 茶飲み過ぎて厠行きたいとかぬかしたらシバキ倒したるで。
非常に緩慢とした動きで公孫賛と向き合った翁がようやく口を開いた。
「李鳳めの報告で、これまで軍部は不正に水増しされた予算で何不自由なく運営されておったのは理解して頂けたじゃろぅ。今後はそれが少々窮屈になるだけじゃて、フォッフォッフォ」
愉快愉快といった風に笑う翁だが、武官は誰一人として笑っていなかった。
中年文官達は嘲笑しながらヒソヒソ話で皮肉をこぼしている。
「この草案を見る限り……、調練や武具に関して自己負担分がかなり増えてるじゃないか」
提出された資料を改めて確認する公孫賛。
「仕方ありますまい。これまで文官よりも優遇されてきた部分が多過ぎたんじゃ、ワシらはこの草案に関して何の文句も無いぞい。――なぁ、皆の衆?」
「勿論ですぞ」
「武官方には是非我等を見習って頂きたいものですな、ハッハッハ」
翁に賛同を示す文官一同。
釈然としていない武官に李鳳が情報を捕捉する。
「今回の遠征で公孫賛様の軍の象徴とも言える白馬隊の軍馬の数が激減しました。今後はその補充を最優先としますので、当面実践用、訓練用関係なく武具の新調は出来ません。破損しても補修して遣い回して頂きます。倉庫にこれまで破棄された武具が置いてありますので、必要であればそちらをお使い下さい。また、行軍訓練以外での配給を打ち切ります。私達文官や警備隊は毎食自腹なんですから、文句は言わせませんよ」
苦虫を噛み潰した表情をする武官一同。モチベーションが一気に下がるのも当然だろう。
その様子を見て胸のすく思いに浸っているのは中年文官達だ。してやったという感じで気分も最高潮だ。
「うむ、宜しく頼むわい。しかしのぅ、それだけでは足りんのじゃよ。追加の提案を聞いてもらえるかのぅ」
なんやねん、まだあるっちゅうんかい……。 まぁ、飯は伯雷に奢ってもらうからええか、ニシシシシ。
今度は何だとゲンナリする武官達。
しかし、打って変わってこれまで落ち着き払っていた中年文官一同から余裕の表情が失われた。
「今回の件でワシは痛感した。ワシら文官と州牧様や武官のご一同がもっと密な連携を取っておれば、このような事態にはならんかったと思うんじゃ。更に言えば、此度の不祥事は文官の落ち度でもあるじゃろぅ。そこで今回不正に関わったと思われる者の上役の文官にはその責任と取ってもらうつもりじゃ」
「なっ!?」
「お、翁殿。何を言われるのです?」
「き、聞いてませんぞ」
思ってもみなかった展開に中年文官達が激しく騒ぎ出した。
「黙らんか! そもそもお前達がしっかりと管理しておればもっと早く気付けた事であろう、職務怠慢甚だしいわい! ワシを含め文官一同減給の上、関係各位は降格あるいは解雇処分が妥当ではないかのぅ。それによって発生した余剰分を国境に派遣する部隊に当てるのじゃ。その上で改めて人事を見直し、文武のより良い構造改革を図りたいのじゃが如何かのぅ?」
まさかの提案に絶句する文官一同。
李典や武官も心底驚いたという表情だ。
判断を問われた公孫賛は目を閉じて考えていた。
おもろいことになってきたなぁ。調子に乗っとった文官共のビックリした顔は傑作やで、ウシシシシ。
腕を組んで思案する公孫賛。
ニヤケ顔で観察する李典。
切れ者好々爺の一面を見せた翁。
祈りながら審判の時を待つ文官。
展開に付いていけてない感のある武官。
特に表情の変わらない李鳳。
……あれ? 文官全員が減給になってもたら伯雷に奢ってもらえんくなる……?
最後まで読んでくれて、ありがとうございます。




