第35話 愚民都市オホロシュタット
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北部地方東外れの城塞都市オホロシュタット。
別名・“愚民の町”
形式上はハイン王国の傘下にあるこの町はしかし、複数の有力商人が合議制で都市運営を行う特殊な自治都市であり、治安維持なども王国直属の騎士団の駐留を容認しない姿勢をとるため、自前の傭兵部隊が治安維持に当たっている。
北部地方の中でもなぜか魔王軍の襲撃を受けていないため、裏では魔王軍との取引でもしているのではないかと王国首都の城下町住民の間でも疑われているが、王国内の都市の中で城下町を除けば王国への年間納税額が1位という巨大な経済力を背景にしてか、中央も表面上問題視していない。
自治権を担保する経済力の源泉はこの都市の管轄領域内の山々でとれる豊富な鉱物の存在。
しかし、その鉱物が何であるかは極秘とされており、ベルリオーネも現在に至るまで把握できていない。
何でも受け入れる寛容な風土を持つ表面上の雰囲気とは裏腹に、この都市の経済を支える富の源泉に関すること、合議制でこの都市を支配する大商人に関することについては住民の口は一様に固い。
質の良し悪しを別にすればどのようなアイテム、武器、防具、果ては禁制品から裏社会の情報まで何でも手に入るとされるこの町はまた、人間種に友好的という条件さえ満たせば比較的モンスターにも寛大なハイン王国の中でも他の種族に特に寛容である。
そのため、人間種、モンスター、エルフなどの中でも脛に傷を持ったならず者も多く流入することで知られる。
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「ワシは何日も食っていねえ、何か金を恵んでくれよお嬢ちゃん」
オホロシュタット駅馬車中央駅ターミナル。
長距離馬車から降りてくる乗客へどこからか物乞いが殺到する。
物乞いは人間種のみならず、年老いたゴブリンやオーク、さらには本来凶暴なはずのオーガの年老いた者さえいる。
すかさず小さな詰所の中で紙たばこを吸っていた警備役の戦士が鉄の槍で下車する乗客をガードし、物乞いが乗客に近づくのを阻止した。
戦士が飛び出した後、詰所から2名の下級役人の姿の男たちもぞろぞろ現れ、貨物室から乗客の荷物を手際よく降ろし、各人へ渡す。
戦士のガードをかいくぐった物乞いが乗客に近づいた。
乗客の荷物に触れようとした物乞いの腕を下級役人が腰に携帯していた棘付きの金属でできた鞭で思い切り叩き、物乞いは悲鳴を上げて逃げ出した。
仲間がやられたのを見て他の物乞いも一斉に逃げ出す。
珍しそうな眼をしてみていたベルリオーネに警備役の戦士が話しかける。
「この町は初めてかいお嬢ちゃん」
「この町は結構物乞いが多いですね」
「この町はビジネスで成功すりゃ誰でも大金持ちになれる。半面バクチや売春宿などの欲望をたきつけるところもハイン王国内で一番のとこだ。失敗して夢破れれば大抵賭博と女三昧でああいう人生の落伍者へ一直線になるってわけよ」
「お嬢ちゃんも見たところ行商人みたいだが、この町は基本何でもありだ。外国からのモンスターや難民の流入も城下町より多い。気をつけな。」
土煙の多い町だ。
おまけに臭い・・・・。
首都である城下町より経済的に豊かであるにもかかわらず、インフラ整備が遅れているオホロシュタットの衛生は地区によってばらばらである。
富裕層の住む地区や官庁街は城下町より美しく上下水道が整っているが、庶民から下層民の居住区、さらに繁華街や商店が立ち並ぶ地域の半分、そして、公共交通機関の集中する場所の衛生状態は悪い。
さて、情報屋の住処はと・・。
ベルリオーネは薄緑色のキャンヴァス製ケースを背負い、目的地へとメモを頼りに市街地を歩き始めた。




