第34話 ベルリオーネの思惑
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ハイン王国駅馬車発着所。
北部地方攻略前に付与された2週間の休みの期間初日。
その日の午後、この馬車発着所内の長距離旅客馬車停留所に須藤と別れて別行動をとる第一級魔導士ベルリオーネの姿があった。
しかし、その姿や服装は彼女のそれではない。
地味な女性向けの旅人の服装をした銀髪のセミロングの美少女。
いつものベルリオーネも美少女であるが、普段の黒髪のロングヘアとはあきらか外見も服装も違っており、まるで別人である。
彼女の乗り込む予定の長距離旅客用馬車の行先には“オホロシュタット”と書かれたプレートがつけられていた。
停留所に並んでいると、6頭立ての大型馬車が到着した。
ホロ布の屋根ではない豪華な造りの馬車はドアを開けると貴賓室のような内装が見えた。
神妙な表情の中、ベルリオーネは乗り込む。
マブクロはあえて身につけない。
本来マブクロは町の住人でも自由に所持できるものだったが、少し前から一般人は許可された者しかマブクロを持てなくなった。
理由はテロリストや人間種に危害を加える出没が相次いでいるため、武器等の外部からの持ち込みに規制をかけるからというのが国内治安騎士団の説明である。
冒険者として戦地へ出陣するギルド所属の冒険者が身につけていれば怪しまれることはないが、今日の私は“行商人”だ。
どうしても持ち歩かねばならぬ金属製の杖は薄緑色のキャンヴァス製ケースに覆って携行することで外部からそれが何かは分からないようにした。
本来乗車するとき、長物の荷物は貨物室に預けなければならないが、ベルリオーネが係員の目を見ると係員は顔パスで黙認した。
認識改変の魔法を使ったのだ。
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馬車の中でベルリオーネは地図などを収めるための革製のカバンである図のうから地図と、メモ書きを1枚取り出した。
メモには“シュヴィム”という名と、その住所らしきものが書かれている。
「ようやく見つけた・・・・・。伝説の情報屋・・・・・・」
北部地方攻略の際に途中で立ち寄る地方都市でわずかな暇があったら必ず情報を持っていそうな奴を片っ端から聞き込みした。
そして、ようやく得た情報。
大抵は金をちらつかせれば何でも話すやつが多かったけど、体で払えとか変なことを言ってくる奴、触ろうとしてくるゲスは例外なく火炎魔法で火だるまにしてやった。
こんな時のために変化魔法を習得しておいて正解だった。
第一級魔導士が堂々と聞き込みしていたら間違いなくバレるからこの特殊魔法はこの世界に赴任してきてすぐに猛練習して修得したのは正解だった。
高度な修行を必要とする変化系の魔法はほぼ完ぺきに別人に変身できるから大抵は見破られることはない。
でも過信はできない。
同じ第一級魔導士ランクの者だったら魔力の周波数を感知できるから化けていても感づかれる危険がある。
パートナーがいない故に独立した行動を女王から許されず、赴任後しばらくは城下町の外へはほとんど合法的に行くことができなかった。
まるで行動を規制される全体主義国家そのものだ。
最も、向こうの世界も中身は大して変わらないが・・・・。
やむなく転生者を召喚するという奴らのやっていることに加担させられる始末。
しかも、あの変質狂シュヴァルツが事あるごとにからかい半分に私に絡んできた。
けれどこれも我慢しないといけない・・・。
奴らのしっぽをつかむために・・・・。
漸くスドウさんと出会えてからクソシュヴァルツが絡んでくる機会が減って、城下町以外へ討伐の際に堂々と怪しまれずに行けるようになった。
だけど、城下町からなるべく離れた地方都市なら治安騎士団の警戒も首都である城下町ほどではないと思ったけど、この世界の警戒態勢は私が思っていたほど甘くはなかった。
都市によっては第一級魔導士かそれに準ずる連中が頻繁に出没するところもあり、警戒が薄い場所を見つけて聞き込みをするのはいたく苦労した。
この世界に赴任してから情報収集の開始まで時間はかかったけど少しは光が見えてきた・・・・。
頑固で他人を簡単には信用しないというが、私の知りたいことを聞きだせる奴はこいつしかいない・・・・。
ベルリオーネは走る馬車の窓から大平原のかなたへ憂鬱な視線を向けた。




