66回目 夢の中で作り出した過去、そして今と未来
快適な生活はその後も続いた。
常に刷新される新発見や新技術。
それらがもたらしてくれる新しいもの。
それらは生活を常に変えていく。
日進月歩。
まさにそんな状態だ。
今日の発見が明日には廃れていく。
それほどに加速をつけて発展発達していく。
完全一体都市の中身も変わっていく。
外見上の大きな変化は無いが。
内装されてる様々な機器が変わっていっている。
それにより中身は大きく変化していっている。
それどころか、建物そのものも変化していっている。
常に整備のために様々なロボットが完全一体都市の中で動いている。
それらが建物を次々に新素材に交換していっている。
見た目はなにも変わってない。
だが全てが知らないうちに変わっている。
それが現実に今そこで起こってるのだ。
そもそも、ロボットがナノマシンだったりする。
目に見えないほどの小さな世界で起こってる事だ。
人間が感知する事などできやしない。
また、そのナノマシンが人間の体内に入って、体の問題を解決していっている。
本人が知らないうちにだ。
おかげで人々は、無病息災を達成していっている。
無意識に、無条件で。
労働そのものも変わってきている。
新たな世界で目覚めた時も、労働時間と労働量の少なさに驚いたが。
それが更に減っていっている。
それでいて、給料の金額は変わらない。
むしろ、少しずつ増えていっている。
労働を機械がかわって行うが、その成果は人に振り込まれる。
そういう形になっていっている。
極論すれば、働かなくても生きていける。
そういう世界になっていっている。
「これが2010年代かよ……」
ブラック企業の社畜社員。
そんな身分だった記憶からは想像も出来ない世界だった。
仕事のあり方そのものがここまで変わるとは思わなかった。
だが、それもまた良い傾向なのだろう。
働かなくても済む。
それは人類が求めた理想ではあるのだから。
その分、やりたい事をやれるようになってきた。
それこそ趣味に没頭していても問題はない。
ススムにとってもありがたい世界だ。
もともと4時間だった労働時間。
それも更に短くなっている。
今や1日4時間ではなく。
2~3日に4時間くらい。
それもまたどんどん減っていく気がする。
このままあらゆる物事が発展していったなら。
「怖いくらいだ」
この先どうなっていくのか。
それが分からない事に人は恐怖をおぼえるという。
馴染みがないからだろう。
例えそれが良いものであってもだ。
見慣れないものや手にした事がないものにはどうしても警戒する。
それが人間の性質というものだ。
だが、分かってしまえばどうという事もなくなる。
だから、今は新たにやってくる何かを静かに待ってれば良い。
そう思えるようにもなった。
「楽になるのは良い事だ」
そして。
もしかしたら、そんな状態を作ったのは自分である。
そう思うとそれなりに誇らしいものもある。
単なる気のせいかもしれないが。
夢でみたゲームの事。
そこで選択してきた結果。
それは、この現実の歴史そのものだった。
もしかしたら、夢でやってきた事が、今現実になってるのかもしれない。
そう思う事もある。
確証など何もないが。
だが、もしそうだったなら。
こんな状態を作った自分を褒めたかった。
誰にも言えない事ではあるが。
言ったところで誰も信じないし、頭がおかしいと思われるのがオチだ。
だが、こうも考える。
もともとこういう世界に生きていて。
それが何かの拍子に悲惨な現実を夢でみた。
ブラック企業の社畜社員という夢を。
それが強烈に頭に残り、現実と勘違いしていたのではないかと。
社会風刺や悲劇を扱った話なら出て来そうな設定だ。
となれば、妄想と現実の区別がつかなくなっていた事になる。
それはそれで問題だ。
(もしかしたら、精神的にまずい状態なのか?)
そう思って病院にかかりにもいった。
幸い、健康と診断されたが。
ただ、何が本当なのかは分からない。
それだけは揺るがない事実だ。
何にせよ確かめようのない事だ。
真実が何であるかというのは。
分かってるのは目の前の現実のみ。
ならば、その中で生きていくしかない。
幸い、生きていくのに苦労する要素はない。
それだけで十分だった。
「これで独り身でなけりゃあなあ……」
そこだけが残念なところだ。
相手あっての事だからどうしようもない。
好みの人と出会えれば良いのだろうが。
幸か不幸か、それを確かめる事も出来る。
自分に見合うような相手がいるかどうか。
普段の行動や言動、測定される脳波などから判明する思考。
そして顔かたちや体型などという情報。
そこから判明する、自分が好む相手や、自分を好む人物など。
そういった条件が合致するかどうか。
それをコンピューターが調べてくれる。
残念ながら、結果は最悪。
適合する人はいないという結論が出た。
あくまでコンピューターが検出できる範囲での話だが。
まだそこまでコンピューターが行き渡ってない国や地域もある。
そこには、ススムに適した人がいる可能性はある。
だが、それを探しにいくのも手間だった。
そんなススムにコンピューターがすすめてくる。
どうしてもというなら、細胞単位で合成して好みの相手を合成する事も出来ると。
そういった手段で相手を見つける者もいる。
ススムが望むなら手配すると言ってきている。
さすがにそれは、と尻込みはしているが。
しかし、最悪それも良いかとも思ってきていた。
一人寂しく生きていくよりは良いだろうと思えるのだ。
そんな調子で戸惑いや迷いもある。
だが、全体的に見れば幸せな世界だ。
そうなったのは、ススムの知る史実とは違った道を歩んだから。
その過去の延長に今がある。
もしかしたら、変えたかもしれない過去。
もしかしたら、自分が手を加えたかもしれない歴史。
そうして手に入れた現在と未来。
それを見て思う。
幸せなそんな時が、この先もずっと続くようにと。
その幸せをもう少し増やすために、声を出していく。
「なあ、コンピューター」
「はい、なんでしょう」
呼びかけに、室内に設置してあるスピーカーから返事がくる。
「前に言っていた、俺の相手。
あれ、手配しておいてくれないか」
「分かりました」
これにて終了
手短にまとめようと思ってこうなった
まさかここまで早く終わらせることが出来るとは思っていなかった
まとめたものをブースでダウンロード販売開始
目に付いた部分の手直しはした
ブログを経由する事になるけど、よろしく↓
https://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/482421785.html
この下のランキングタグにもリンクを掲載してある↓




