46回目 第二次世界大戦 4
インドを越えてイラン、そして内陸アジア。
この地域を制圧した事で、日本側は後背をあまり気にする必要がなくなった。
中華民国は残ってるが、援助経路を潰された事で、抵抗は弱まっている。
また、漢民国によって対立してるので、それほど大きな脅威ではなくなった。
それよりも問題なのは、制圧したインドやイランなどの地域である。
もともとイギリスなどが支配していた場所だ。
良くも悪くもそれで治まっていた。
しかしそれが消えた事でまとまりがなくなっている。
治安を維持する者が消えたので、騒動が起こったりもする。
また、独立を目指す勢力が乱立した事で分裂状態にもなる。
また、イギリスなどに支配されていて利益を得ていた者達もいる。
支配層などはこれにあたる。
それからすれば、それらを追い出した日本は敵でしかない。
これらが日本への抵抗を始めたりもする。
この状況を解決するのに、まだ時間がかかりそうだった。
それでも、イギリスなどの敵勢力が消えた。
全体的な流れは悪いものではない。
名目上だけでも独立を果たしもした。
その意義は解放された各国で大きく宣伝されていく事になる。
政治工作と言ってしまえばそれまでだが。
それでも、やらないよりは良い。
一人一人の国民レベルでは大きな変化は無いにしてもだ。
取り巻く環境が変わった事は伝えておく必要がある。
そして、日本側が支持する勢力の指定。
こうして、とりあえずの交渉相手や国の代表者を決める。
可能な限り、現地の内情にあった者を選びはした。
日本に都合が良いだけの者達を選んでも、それではまとまりに欠ける。
それはそれで問題もあるが、現地の事情を優先した。
そうして選んだ者達に、現地の治安回復を求めていく。
最低でもこれくらいはしてもらわないとどうしようもない。
その為に植民地として支配していた者達の装備なども渡していく。
必要な道具がなければ、動こうにも動けない。
また、そんな状況なので、参戦までは求めなかった。
無理のない範囲ではお願いする事にしたが。
国がまとまってないのに対外的な活動など出来るわけがない。
そもそもとして、軍備がほとんどない状態なのだ。
イラン方面に上陸したイギリス・イタリア軍に対処するために、仕方なく動員はしたが。
それもかなり限界ギリギリだった。
その動員もとりあえず解除して。
軍勢はひとまず解散。
あらためて各国に再編成していってもらう。
そして、まずは内政・国内基盤の整備をしていってもらう。
当面の治安や産業に必要な知識や技術を渡して。
初期投資として、ある程度の資金や資源も。
それを元に国内の安定と発展を促していってもらう。
こんな調子なので、いつもと同じ事になる。
勢力下に置いたはいいが、当面は使い物にならない。
しかし、いずれ力になってくれる。
それまでの時間を稼がねばならない。
まず、敵を退けていく事で。
ユーラシアからヨーロッパの影響の多くを取り除いた。
しかし、まだ敵は残ってる。
このまま放置するわけにもいかない。
今は何とか撃退したが、いずれまた巻き返しをはかってくる。
なので、どうにかしてこれを粉砕。
敵に大きな損害と消耗を強いねばならない。
何より、敵はヨーロッパだけではない。
アメリカという巨大な敵も存在している。
これを無視するわけにはいかなかった。
現在、大西洋は安全な回廊になっている。
ここを通ってイギリス・ヨーロッパにアメリカから物資が投入される。
まだその動きは出て無いが。
いずれそうなる可能性はあった。
そうなれば、アメリカは安全な生産地帯になる。
もとより巨大な生産力を持つ国だ。
本気を出したらかなり危険な事になる。
できればこれを叩きつぶしたい。
とはいっても、それも手間で面倒が大きい。
アメリカまで攻略してる余裕が無い。
また、先にヨーロッパを潰すにしても、そこに投入できる兵力の確保が難しい。
後背を気にする必要がなくなったとはいえだ。
ユーラシア東部からトルコ地域の兵力を、ヨーロッパ方面に向かわせる事は出来る。
だが、それらの軍勢をまとめるだけの体制作りが大変だ。
各国軍の戦力もまだ十分ではない。
幾ら軽武装地帯になったとはいえ、ヨーロッパに放り込むのも難しい。
戦えばそれなりの損害を覚悟する必要がある。
それでも、急いで展開すれば何とかなるかもしれないが。
ヨーロッパ全土を制圧するのは難しいだろう。
「やっぱり、一部に絞るか」
状況を考え、ススムはそうしていく事にする。
まずは手を出せる所まで。
そこで手を止めておく事にする。
何でもかんでも一気にやろうとするのは無理がある。
その為の標的を絞る。
今現在攻め込める場所。
確実に制圧して、拠点としていける場所。
「まずはロシアと北アフリカかな」
侵攻場所は決まった。
西暦1942年。
日本勢力圏、内陸アジア地域まで掌握。
次の目標としてロシア・北アフリカを制圧目標とする。
軍勢の集結を始めた。